“Made In U.S.A.”のこだわり──ニューバランスの生産現場を取材

ライフスタイル

110年歴史のもつ「ニューバランス」は、大手のスポーツブランドとして、唯一アメリカでフットウエアの生産工場を営んでいる企業である。GQはニューバランスのアメリカ工場へたどり着き、“Made in U.S.A.”の現状を取材した。

Photographs by Kobayashi Takashi (ITARU Studio) Words by Winsome Li(GQ)

 

ニューバランスは、年間400万足のスポーツシューズを本国アメリカで生産している。米・マサチューセッツ州のローレンスと、メイン州のスコベーゲンにある2つの工場では、それぞれ「パフォーマンス」と「ライフスタイル」という2つのコレクションを主に手掛けている。

 

 

■効率的な生産システム

 

米・マサチューセッツ州のローレンスに位置し、ボストンの都心から車で約1時間の距離とするニューバランスのローレンス工場。約81メートルの高さをもつ時計塔が聳えるこの工場では、ブランドのパフォーマンスシューズをはじめ、カスタムシューズも生産している。

 

ローレンス工場の内観

パフォーマンスシューズは、スポーツ性能を重視し、履く人のポテンシャルを最大限に発揮できるようデザインされている。ランニングからサッカー、テニスまで、スポーツ競技に特化したモデルが展開されている。

 

工場に訪れた時は、ランニングシューズであり、ライフスタイルシューズとしても愛用されている990シリーズのが製造ラインに並んでいた。シューズに使う生地の裁断から、パーツの縫い合わせ、箱入れまで、各工程はどれもスタッフによる手作業。約22秒で1工程を完成するべく、所要時間、数量がきちんと計画され、効率的なシステムで運営されている。

 

 

工場で配置されている掲示板。各生産過程の目標値、達成値、偏差値をリアルタイムで確認できる

 

■最先端の3Dプリンティング技術

 

ローレンス工場では3Dプリンターが配置されていた。ニューバランスは2016年4月、3Dプリンターを採用したランニングシューズを限定で販売している。3Dプリンターが生産に活用されたのは、ランニングシューズのミッドソール部分。足底に伝わる圧力分布のデータに基づき開発され、より高い安定性と軽量性を実現している。現時点では、1日3~4足のミッドソールしか生産できないため、3Dプリンターを使ったモデルの発売数はまだ少ない。

 

同社では、将来、世界各国の店舗に3Dプリンターを配置し、顧客がそのまま模型を作れるようにしたいと、普及化に向けたビジョンを描いている。

 

3Dプリンターでミッドソールを製作したランニングシューズ「ZANTE GENERATE」

 

またアメリカ限定のカスタムシューズも、このローレンス工場で生産されている。日本ではまだ導入されていないが、本国ニューバランスのホームページ「NB1 CUSTOMIZE」にて、好みの形、色、素材から選び、自分だけの一足が作られるサービスだ。オンラインでオーダーを受け次第、シューズの製造に入り、驚くべきことに当日に出荷することも可能(!)という迅速な生産システムが構築されている。

 

カスタムシューズ用のレース

 

カスタムシューズ用の“N”マーク

 

■祖国を愛する気持ち

 

ローレンス工場の工場長ブレンドンさん

ローレンス工場の工場長を務めるブレンドンさんへ話を伺った。彼は米陸軍から退役し、ニューバランスに入社した。彼がニューバランスを選んだ理由は、アメリカの労働問題をサポートする企業で働きたいという気持ちからだ。

 

ニューバランスが営むアメリカ国内の5つの工場では、およそ1300人のスタッフが雇われている。スポーツやファッションブランドに限らず、多くの製造企業がコストの削減のため、生産工場を海外に移す。そんな現状の中、ニューバランスはアメリカで自社工場を残し、地元の労働問題への支援を続けている。

 

ニューバランスがアメリカ人に愛され続ける一つの理由は、地元の社会貢献に対する強い使命感を持っているからだろう。

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