プロストとセナが闘う「フォーミュラE」って知ってますか?

フォーミュラEという電気自動車によるレースの2シーズン目が終了したのだが、ご存じだろうか。2シーズン目の最終戦はロンドンのテムズ川沿いにあるバタシーパークで開催され、S・ブエミがL・ディ・グラッシの獲得ポイントを上回り、逆転で2代目チャンピオンに輝いた。知らない?

 

フォーミュラEは電気自動車限定のレース。日本での知名度は低いが、FIAが統括する国際レースのひとつ

 

フォーミュラEは 2014年に始まった。統括しているのはFIA(国際自動車連盟)である。F1やWEC(世界耐久選手権。ル・マン24時間をシリーズの一戦に含む)、WRC(世界ラリー選手権)、WTCC(世界ツーリングカー選手権)と同じだ。つまり、由緒ある組織がきちんと統括している。

 

開催規模はワールドワイドで、2015-16年のシーズン2は2015年10月の北京で始まり、11月はマレーシアのプトラジャヤで開催して、12月はウルグアイのリゾートビーチ、プンタ・デル・エステに行き、年が明けて2016年の2月はアルゼンチンのブエノスアイレス、3月はメキシコシティで開催された。

 

中南米でのレースを終えたフォーミュラE一行は、4月にアメリカ・ロングビーチ戦を終えると、本拠地であるヨーロッパに戻り、4月はフランス・パリ、5月にドイツ・ベルリンでレースを行い、最終ラウンドのイギリス・ロンドン戦を迎えたのである。

 

5月のドイツ・ベルリン。市街地でレースを行うのもフォーミュラEの特徴のひとつ。騒音の少ない電気自動車レースならではだ

 

常設サーキットで行うメキシコシティを除いて、コースは基本的に市街地の公道を閉鎖して行う。レーシングカーに爆音はつきものだったが、フォーミュラEはモーターで走るので、エンジンで走る車両に比べて格段に静かだ。だから、市街地で開催しても周辺の住民や施設に騒音面で迷惑を掛ける心配はない。

 

排ガスも出さない。車両に搭載するバッテリーに充電する電力は基本的に、バイオ燃料を用いて現地で発電する。その車両だが、10チーム20名が参戦した2014-15年のシーズン1は、レースをスムーズに成立させることを重視して共通マシンで行った。モーターの出力は200kW(約272馬力)で、最高速はゆうに200km/hを超える。

 

フォーミュラEが積むリチウムイオンバッテリーの実質的な容量は28kWhである。高容量型の日産リーフが搭載するリチウムイオンバッテリーの容量が30kWhだ。1周2?3kmのコースで行うレースはおよそ1時間で80?90kmの距離を走るが、ほぼ全開で走り続けるので、28kWhの電気エネルギーでは足りず、途中で充電済みのマシンに乗り換える。フォーミュラEならではの光景で、将来的にはバッテリー容量を増やし、乗り換えなしを目指している。

 

 


■プロストとセナがワンツーフィニッシュ!

 

新しいモータースポーツの姿を模索するアイデアを積極的に取り入れているのもフォーミュラEの特徴で、その1つがファンブーストだ。SNSや公式サイトを通じたファン投票によって人気を集めた上位3名のドライバーに、レース中の追加エネルギーを与えるシステムである。ファンブースト(プラス41馬力/3.3秒間相当)はここぞという場面での追い越しに使うのが有効で、だからドライバーはレースが近づくとTwitterやFacebookで「投票お願い」メッセージを熱心に発信する。

 

ファン投票の上位3名に“追加エネルギー”が付与される「ファンブースト」。レース前にはドライバーがSNSで投票を呼び掛ける

 

ドライバーは経験者ぞろいだ。シーズン2のチャンピオンを獲得したブエミは元F1ドライバーで、現在はトヨタの一員としてWECに参戦している。そのブエミと最終戦までタイトルを争ったディ・グラッシは、アウディの一員としてWECに参戦。両ドライバーは、世界耐久選手権でもバトルを繰り広げているわけだ。

 

最終戦ロンドンラウンドはダブルヘッダーで行われたが、第1レースを制したのはニコラ・プロスト(アラン・プロストの息子)。2位にはブルーノ・セナ(アイルトン・セナの甥)が入った。ファミリーネームだけで表現すれば、「プロストとセナがワンツー」である。80~90年代のF1を知るファンにとっては、懐かしい名前だろう。ちなみに、シーズン1のチャンピオンはネルソン・ピケの息子(ネルソン・ピケJr.)である。

 

N・ハイドフェルトやJ-E・ベルニュ、L・デュバルにM・コンウェイなど、元F1ドライバーや現役WECドライバーが多数参戦しているのもフォーミュラEの特徴だ。レベルの高い腕自慢が多いせいで、レースは毎回荒れに荒れ(やり過ぎの感がなくもないが……)、最後まで行方がわからないのも魅力だ。

 

シーズン1は共通マシンで争ったが、2015-16年のシーズン2はモーターとインバーター、ギヤボックスの独自開発が認められ、技術競争が始まった。フォーミュラEは段階的に技術開発の領域を広げていくプランを掲げており、市販車の電動化に積極的に取り組む自動車メーカーやサプライヤーを引き付けている。

 

自動車メーカーではルノーとシトロエンの高級車ブランドであるDS、ピニンファリーナを傘下に収めるインドのマヒンドラが実質的にチームを運営。アウディ・スポーツもチーム名に名前を連ねるが、パワートレーンの開発はドイツのシェフラーが行っている。チームへの関与ではないが、BMWはセーフティカーとメディカルカーに電動車両のi8とi3を提供している。

 

元F1ドライバーの鈴木亜久里の名を冠したチーム・アグリはシーズン1から参戦していたが、シーズン2を最後にフォーミュラEから撤退。日本企業の関与を期待しての参戦だったが、残念な幕切れとなった。一方、イギリスの名門ジャガーは2016-17年のシーズン3から、自社チームを率いて参戦する。ジャガーにとって久々のモータースポーツ復帰だが、F1でもル・マン24時間でもなくフォーミュラEを選んだのは、「参戦を通じて培った電動化技術を、将来の量産車にフィードバックできるから」と説明している。

 

メーカーの関与も含め、新しいモータースポーツに対する日欧の温度差を感じずにはいられない。
 

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