会社のブランドが傷つくこともある「サイレントお祈り」

 

企業が採用選考を行う際に、不採用となった人に送る書面やメールの最後は、「◯◯様のご活躍をお祈り申し上げます」などと締めくくられていることから、不採用通知メールのことを「お祈りメール」と呼ぶようになっていますが、数年前から、この不採用の連絡すらしないことを「サイレントお祈り」と言うようになりました。

 

新卒採用で良く見受けられますが、当然のごとく学生からの評判は悪いです。しかし、強く非難されているものの、あまり改善される様子は見られません。

 

ある記事によると、毎年の新卒採用で、大企業の40%近くは、採用面接終了後に学生を落とす際、メールや電話等の通知をしないといいます。また、別の記事では、アメリカでも約75%の求職者は、求職活動中に「サイレントお祈り」を経験しているとの情報がありました。洋の東西を問わず、同じようなことが行われているようです。

 

その理由として挙げられているのは、「忙しいから」「面倒くさい」など、単に作業を省略したいというものとともに、採用人数を確保する上での「補欠調整」ということがありました。採否の返答をしないことで、その人たちをキープしている状態にして、選考状況や辞退者の動向に合わせて人数調整に使おうということです。いずれにしても、ほぼ100%が会社側の自分勝手な理由です。

 

私が採用関連のコンサルティングをさせて頂く際は、この「サイレントお祈り」は厳禁にしています。その理由は、応募者は過去、現在、未来を問わず、お客様かもしれないからです。「サイレントお祈り」を喜ぶ応募者は絶対にいませんから、企業としての行動として考えると、それは企業ブランドを毀損する恐れがあります。

 

仮に補欠調整のようなことをしなければならないことがあっても、それは返事をすると約束をした期日までの間の話です。場合によってはそのことを正直に伝えて、待ってもらえるかどうかを聞くこともあります。不採用にする人にはもう二度と会わないかもしれないので、そういう人ほど誠意を尽くす必要があると思います。

 

「サイレントお祈り」というのは決して最近に始まったことではなく、実際にはずいぶん昔から行われてきたことです。ただその当時は、どの会社がどんな採用方法をとっているかなどという情報を得る手段はほとんどなく、雑な扱いをしたとしてもそれが表に出ることはなく、それで叩かれるようなことはほぼありませんでした。

 

しかし、今のようにネットを中心とした口コミ情報が大量に流通している中では、ほとんど誰も見ていないと思えるような些細なことが命取りになります。実際に「サイレントお祈り」をされ、その後別の会社に就職した人の声では、「その会社の仕打ちは一生忘れない」「会社のファンだったが、それ以降関連するお店では絶対に買い物をしない」など、ある種のトラウマのように恨んでいる話を耳にします。環境が厳しかった時期の就職活動で、ギリギリの心情で真剣に取り組んでいたとしたら、そんな気持ちになってしまうことも理解はできます。少なくともその会社が、何人かのお客様を失ったことだけは確かです。

 

「サイレントお祈り」は大企業の方が多いようですが、たぶんその程度のことで傷つくようなブランドではないと思っているのかもしれません。大企業に多いと感じる最近の不祥事も、そんな感覚で共通しているのかもしれません。

 

ただ、「サイレントお祈り」のような小さなことをきっかけに、いつか痛い目を見ることは、私は間違いないと思っています。些細なことでも甘く見てはいけないと思います。

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