“ピンク=女子”はフランスが発祥だった!? その裏に秘められた歴史と社会的背景とは?

ライフスタイル

『女の子は本当にピンクが好きなのか』(堀越英美/Pヴァイン)

 

友人に赤ちゃんが生まれたのでお祝いの品を選びに行く。何をあげるかはすぐに選べなくてもプレゼントする物の色は決まっている。

 

“女の子だから、ピンク”

 

女性にとっていちばん身近な色のひとつであり、特別な存在であるピンク。そもそも“ピンク=女の子”」の図式は、いつ、どこからやって来たものなのだろう? そんな疑問を解決してくれる本に出会った。

 

「よもや自分の娘がピンク星人になってしまうとは」

 

ふたりの女の子の母親である著者のこんな言葉で始まる『』(堀越英美/Pヴァイン)では、ピンクと女の子が結びついた歴史的背景からグローバリゼーション、それに至るまでの過程と攻防が掘り下げられている。

 

ある一定の年齢の女の子に見られるピンクに対する熱狂的な嗜好、玩具業界の色の使い方に対して批判したピンクスティンクス(ピンク色の悪臭)という名前の保護者団体の活動、ダサピンクと呼ばれるピンク色の残念な商品、そしてピンクに魅せられた男子にいたるまで、ピンクをキーワードとして世の中にもたらされた様々な現象、ムーブメントを多角的な切り口で分析している。

 

“ピンク=女子”は、フランス発祥であるとされる。ベルサイユ宮殿から始まったピンクブームは18世紀後半にはヨーロッパ全域に広がっていった。一方アメリカにおいてピンクが女性の色として定着したのは第二次世界大戦後だ。アメリカの女性たちは男性の寵愛を得ることにより豊かさや幸福を手に入れることをたくらんだ。ピンクという武器を身につけ、優美さや癒し、そして適度な愚鈍さを匂わせつつ、欲しいものを手に入れようとしたのである。

 

“ピンク=女の子”が日本に定着するまでには欧米諸国よりももう少し時間がかかった。それは、“ピンク=エロの象徴”とされていた日本特有の文化的背景に理由がある。テレビの戦隊ヒーロー番組の走りである『秘密戦隊ゴレンジャー』の紅一点の「モモレンジャー」誕生に際しても、子ども番組にいかがわしいイメージのあるピンクを使うことについて侃々諤々の議論があった。結果的に、男性隊員と互角に任務をこなす「モモレンジャー」は大いに話題になり、以降戦隊ヒーローにピンクの女性隊員は欠かせないものとなった。

 

ピンクは女性の社会進出にも影響を及ぼす。日本は欧米に比べるとSTEM系高等教育(STEMは、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字で科学、技術、工学、数学といったいわゆる理系領域の総称)が遅れており、公的支出の割合もOECD諸国の中で最下位。しかし国内ではとりたてて問題視もされていない。日本の女性は子どものころからリカちゃん人形のお友達が選ぶキラキラ職業、つまり人文系やサービス業を選ぶことにしか考えが至らず、低賃金に甘んじることとなる。ピンクのイメージとして、女性、献身、家庭を挙げる人が多い日本は、女性が技術を持って働くことよりも母性的なものが求められる。こうした価値観の中でピンクのゲットーに閉じ込められているのだ。

 

それでも希望はある。近年大ヒットした『アナと雪の女王』や『妖怪ウォッチ』に見られるような、他者を肯定したうえで自己主張するアサーティブな生き方を見て著者はそう信じる。長い歴史の中で構築された古典的な男女像はいきなり変わることはないだろうが、男女が互いを認めながら少しずつ変わっていける可能性を感じるという。

 

パステルピンクの自転車に乗る若い男性を見て、“かわいい”と感じるか“キモチ悪い”と眉をひそめるか、人それぞれのピンクとの関わり方によって変わるだろう。ピンクは今や女性だけのものではなく男性にとっても特別な色となったのかもしれない。明日からまた、新しいピンクの歴史が刻まれていく。

 

文=銀 璃子

関連記事