「仕事の話をいっさいしない接待も、粋なもの」元京都花街の芸舞妓さんが見た「一流のひとたち」の考え方

人間関係

『京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』(竹由喜美子/すばる舎リンケージ)

チャンスは突然やってくる。自分の都合のいいときとは限らないし、それと分かるように現れるとも限らない。だから、ほとんどのひとが、「チャンス」だと分からないうちに逃してしまったり、気づいてもうまく掴めなかったり…。
そうならないためには、「準備運動」が必要になる。普段の「心がけ」が、「いざ」というとき、チャンスを掴めるひとに、あなたを変えていくのだ。
『京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』(竹由喜美子/すばる舎リンケージ)は、京都で芸舞妓をしていた著者が、お客様である「一流のひとたち」と接し、彼らの話を聞いたことで分かった「掴むひと」の行動や考え方を、芸舞妓さんらしい細やかな視点と鋭い観察眼に基づいてまとめたビジネス書である。

 

考えてみると、芸舞妓さんほど、エグゼクティブたちと多く接する職業もないのではないだろうか。「一見さんお断り」の花街のお座敷に上がれるのは、ただお金を持っているだけではなく、社会的な地位もある「選ばれたひと」のみ。お座敷は接待で使われる場合もあれば、個人的な娯楽としても使用されるので、芸舞妓さんはビジネスの場だけではなく、「素の」エグゼクティブたちの様子を見聞きできる。だからこそ、芸舞妓さんしか知り得ない「チャンスの掴み方」があるのだ。

 

著者の竹由喜美子さん曰く、「一見さんお断り」の考え方は、ビジネスと通ずるものがあるという。
京都花街が「一見さんお断り」をしているのは、「長きにわたる信頼関係を結びたいから」。お客様を大切にし、「長いお付き合い」をしてもらうためにも、お座敷で使われた費用はすべて「後払い」となっている。こういった「長期掛け払い」という慣行もあるので、身元の分からない方はお断りしているのだ。

 

会社を経営しているお客様から聞いた話にも、信頼関係を大切にする「掴むひと」の考え方があった。

 

そのお客様は、「信頼関係第一」&「長いお付き合い」をモットーにしていた。その方がとある取引先との商談で、先方が「値引き」を口にしたとき、「叱った」という。本来なら、購入したい商品の値段が下がったのなら喜ぶものだが、そのお客様は違った。
先方も、損が出るような商売はしないはず。見積書の金額は、利益が織り込まれていて当然だが、「もっと値引きしましょう」というのは、「適正な利益以上に儲かる見積りを相手が提示してきたということ」。適正ではない金額を最初に提示して、それを下げることで商談を成立させようというやり方も含め「信頼関係を崩すようなことだ」と叱ったのだとか。
「掴むひと」の条件の一つは、「信頼される」ことだ。言うは易しだが、ではどうすれば「信頼されるひと」になれるのかというと、「その場その場で言動を変えることをせず、一本筋を通していくことだ」と、竹由さんは話す。

 

また、接待で「仕事の話をいっさいしないのも、粋なもの」という。大切な取引先との会食。つい仕事の話をしてしまいがちだが、竹由さんの出会ったお客様の中に、ビジネスの話をほとんど持ち出さない方がいたとか。
「うちの会社はどういう会社か、相手の会社はどういう会社なのか、おたがいに理解を深め合うために接待の場にきているのだから。この取引をどうするこうするという話は、商談のテーブルですべき」と話したそうだ。

 

本書は「女性目線」で一流のビジネスパーソンを見て、知り得たことや感じ取ったことをまとめているので、ビジネスで成功した男性が著した同じようなテーマの書籍とは、少し趣が異なっている。しかも、多くのエグゼクティブたちと接してきた芸舞妓さんの視点には、思いも寄らない「成功の秘訣」や「情報」が詰まっていた。男女問わず、悩めるビジネスパーソンには、自分の思考に新しい風を吹かせるべく読んでほしい。もちろん、上昇志向が強い方にも、著者が見聞きしてきた京都花街の世界は大いに参考になるだろう。

 

文=雨野裾

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