女性の活躍のために「パート社員・130万円の壁」を撤廃すべき

話題

後藤百合子

アベノミクス政策がめざす「女性が活躍」する社会で、注目されているのが配偶者控除の撤廃です。

 

前哨戦として、すでに、1年後の来年10月からは、従業員501人以上の企業で週20時間以上働くパート社員は厚生年金加入が義務づけられます。それに対応して、大量にパートを雇用している大手小売業などでは、パート社員に労働時間の短縮を求めるケースも出てきているようです。また、安倍首相の指示で年収130万円未満の配偶者がいる公務員の配偶者手当の撤廃も検討されていましたが、こちらはひとまず、見送りとなりました。

 

■女性全体の時給を引き下げるパート社員の時給
日本の女性の賃金平均は、男性の約7割程度といわれますが、によるとパート・アルバイト社員に限っていえば、男女の時間給の差はわずか10%程度で、男性1120円、女性1012円です。

 

いっぽう、によると、正社員の男女の平均賃金はそれぞれ、33万1000円と23万4400円。これを年52週、週40時間換算にすると、男性正社員の時給平均は1913円、女性は1355円となり、女性社員の時給は男性の約7割となります。

 

。男性労働者のパートは約14%にすぎませんから、いかにその割合が多いかがわかります。

 

そしてこの時給と正社員・パート比率をもとに計算すると、男性の時給平均は1802円、女性は1197円となり、女性の時給は男性の約66%と、さらに下がることになるのです(派遣や契約等の非正規社員については計算に入れていません)。

 

 

■パート社員の時給や賞与を上げられない経営者のジレンマ
私の経営する会社にも、パート社員が多くいます。ほとんどが勤続数年が10年近くになる人たちで、仕事は確実、安心してまかせられ、入社まもない正社員よりずっと頼りになります。多くの日本企業がこのようなパート社員たちに支えられているといっても過言ではないでしょう。経営者としてはぜひ彼女たちに正社員になってもらい、もっともっと活躍してもらいたいと思うのですが、子育てや介護など、それぞれの事情があり、なかなかフルタイムの正社員になることは難しいようです。

 

それならせめて、昇給や賞与で報いたいと思うのですが、そこに立ちはだかってくるのが130万円の壁です。

 

以前、わが社では非常に利益が出た年があり、正社員ともどもパート社員にも相当額の夏のボーナスを支給しました。「これでみんなの努力に報いられた」と喜んだのも束の間、年末が近づくにつれ、ベテランのパート社員たちが次々と欠勤し始めたのです。理由は「このまま働いていると年収が130万円を超えてしまい、扶養の枠からはずれてしまうから」でした。年末の繁忙期に重なり、会社はパニック。結局、パート社員の仕事を正社員が肩代わりしなければならなくなり、正社員にも大きな不満がたまりました。

 

この経験から、現在では、パート社員の昇給やボーナス支給額には非常に慎重になっており、正社員とパート社員の時給にも大きな開きがあります。先日、ちょっと計算してみたのですが、入社2年目でそれなりの仕事しかできない女子正社員の賞与も含めた時給と比べ、入社5年程度で技術も責任感もあるパート社員の時給が65%程度にとどまり、保険や年金など法定福利厚生費まで計算すると実に半分程度になってしまうことがわかりました。

 

会社の業績に貢献してくれているパート社員の待遇を上げられず、正社員というだけでパート社員分まで正社員が利益配分を受けることに経営者として大きな矛盾を感じますが、これが現実ですので受け止めざるをえません。

 

 

■パート社員の待遇改善にはまず130万円の壁の撤廃を
「同一労働同一賃金」が叫ばれてますが、経営者としては、同じ仕事をしているから同じ時給という考え方には抵抗があります。同じ仕事をしても、効率よく多くの成果を上げられる人もいれば、そこそこの仕事しかできない人もいます。会社の収入は社員の仕事の成果からしかもたらされませんから、ある程度までは、成果が時給に反映されるべきだと思います。

 

また、仕事量にはどうしても波がありますので、残業や休日出勤をして仕事をしなければならないときもあります。家庭の事情で残業や休日出勤がまったくできないパート社員と、命じられたら行う正社員との間に、相応の賃金格差があってもしかるべきだと思います。

 

このようないろいろな条件を勘案したうえで、やはり、私は日本のパート社員の賃金水準は低すぎると思いますし、さらにいえば企業の内部留保が増えている原因の一つには、このパート社員の賃金の問題もあるのではないかと思うのです。

 

多くの会社で、優秀で勤勉なパート社員たちに日々の業務が支えられています。現在、負担を増やさずに130万円の壁を撤廃する夫婦控除などの案が検討されているようですが、真に「女性が輝く」社会にするためには、まず、日本の経済に貢献し続けてきたパート社員の待遇改善こそ、まっさきに着手されるべきではないでしょうか。

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