「WEC富士6時間」最大の功績は“サーキットサファリ”の認知拡大にあったかも!?

 

富士スピードウェイ(静岡県)で開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)第7戦富士6時間耐久レース(10月13日~15日)の、決勝レース日の入場者数は3万2000人だった。2016年より700人少なく、2015年と同数だった。


フリー走行が行われた金曜日の入場者数は5500人で、2015年と2016年より500人少なかった。予選が行われた土曜日の入場者数は1万3500人だった。2016年より1000人少なく、2015年より500人少ない。3日間の総入場者数は5万1000人で、2016年より2200人少なく、2015年より1000人少なかった。3日間で13万7000人の観客を集めたF1日本グランプリ(鈴鹿サーキット)の37%の集客規模だ。


3日間とも雨と霧と寒さの三重苦に祟られたことを考えると、前年比-2200人の数字は大健闘と言っていいのではないだろうか。コレを言っては元も子もないのだが、山間にある富士スピードウェイは、レースイベントを開催するには適した立地ではない。3日間とも雨と霧と寒さに祟られることは稀だとしても、“富士”に悪天候はつきものだ。気の毒ですらある。


「週間予報で雨、雨、雨と出たことが、客足を遠のけた」と、関係者のひとりは愚痴った。WEC富士6時間ほどのビッグイベントになると、ずいぶん以前から「行く」予定を立てるものだが、ディープな層はともかくライトな層は雨の予報を前に「やーめた」となるのかもしれない。

 

開催期間中はずっと雨と霧と寒さの三重苦に悩まされた

 

■天候だけでなく日程も悪かった…


レースイベントそれ自体の魅力の観点から言えば、2016年限りで最上位カテゴリーのLMP1からアウディが撤退したのが痛かった。トヨタがシリーズのハイライトであるル・マン24時間で優勝していたなら、WEC富士6時間は凱旋レースになり、伝統のレースを制したマシンの走りをひと目見ようと、一定の集客効果は期待できたはずだ。一方で、今シーズン限りで撤退するポルシェの姿を目に焼き付けようと、観戦を決意したファンもいたに違いない。


鈴鹿サーキットで行われるF1グランプリにも言えることだが、コース上で行われるサポートイベントが貧弱な点が、イベント全体の印象を寂しくしている。例えば、F1オーストラリアGPでは、日本で言えばSUPER GTに相当するスーパーカー・チャレンジが行われ、ポルシェ・カレラ・カップ・オーストラリアが行われ、ランボルギーニ・ウラカンやアウディR8、アストンマーティン・ヴァンテージにマクラーレン650S、メルセデスAMG GT-Sなど30台のFIA GT3車両が走るオーストラリアンGTが開催される。ヒストリックカーのデモンストレーション走行もある。朝から夕方までにぎやかで、コースからエキゾーストノートが絶えることがない。


一方、F1日本GPではポルシェ・カレラ・カップ・ジャパンが併催され、スーパーFJドリームカップ・レースが行われた。WEC富士6時間耐久レースの場合、サポートレースはゼロだった。F1日本GPにもWEC富士6時間にも言えることだが、国内トップクラスのレースを併催するくらいの「盛り上げ」に向けた意気込みが欲しい。ポルシェの関係者は「カレラ・カップをやりたいところだけど、さすがに2週連続は無理」と、F1日本GPとWEC富士6時間が2週連続で組まれているスケジュールを嘆いた。


もっと嘆きたいのは、F1日本GPと同じ週末に、タイでSUPER GTを開催していることだ。WEC富士6時間の週末は、ツインリンクもてぎでMoto GP戦が行われていた。こうもビッグイベントが重なっては、ファンの分散は避けられないだろう。

 

 

■WEC史上初開催の「サーキットサファリ」

 

WEC初の「サーキットサファリ」。大型バスに乗って、コースを走り回る参戦車両を眺める趣向

富士スピードウェイでWECの走行イベントの合間にコースを埋めたのは、K4-GPのパレードランのみだった。K4-GPは軽自動車の車体やエンジンを改造したレース車両であり、富士には往年のレーシングカーをコピーした車両が多数集まった。軽自動車サイズのポルシェ935や956があり、フォードGT40があり、トヨタ7があり、といった具合だ。なんとも日本らしく、かわいらしいレーシングカーの登場に、WEC参戦チームの外国人メカニックやエンジニアには大ウケの様子だった。お客さんを楽しませるに十分だったし、筆者も大いに楽しんだ。


楽しんだと言えば、WEC史上初めての開催となったサーキットサファリもそうだ。SUPER GTで実績のある催しで、大型バスに乗ってコースを周回しながら、コースを走り回る参戦車両を眺める趣向だ(公式サイトでの前売り抽選販売のみ。乗車券はペアで6480円)。


手を伸ばせば触れるくらいの至近距離を、背の低いレーシングカーが猛スピードで近づいてきて、レーシングサウンドを残しながらあっという間に走り去っていく。並走しているからこそ味わえる大迫力の体験で、実際に体験したお客さんや外国人ジャーナリストのみならず、チーム関係者からも「いい取り組みだ。他のサーキットでもやってほしい」という声が挙がった。WEC富士6時間での開催をきっかけに、世界に広まるかもしれない。


入場者数が減ったのは事実だし、課題はある。でも、楽しいイベントだったのは事実だったし、たとえ雨が降ろうと霧が出ようと、その時期、その場所でしか味わえない感動があった。
 

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