米国製ダウニーはなぜ売れたのか? 柔軟剤とトイレットペーパーの例にみる「日本製こそ最強」を疑うべきとき

 

■日本製を爆買いする現象

 

私は外資系企業で33年ほど、商品開発に携わってきました。多くの場合、競合となるのは日本企業のブランドです。日用品や化粧品の場合、その多くは日本製(Made In Japan)となります。

 

確かに日本製の品質・性能レベルは総じて高く、他のマーケットと比較すると、海外ブランドが日本のマーケットで成功することは今なお高いハードル。同時に日本のマーケットで成功することは、グローバル市場、特にアジア市場での成功につながる要素も大きいので、労力はかかりますが戦略的な価値がある場合が多いのです。また、中国人を中心とした多くのアジア諸国からの観光客が日本製を爆買いする現象も、日本製の“強さ”から来るものといえるでしょう。

 

 

■日本のトイレットペーパーは最強か?

 

最近、『世界が驚いたニッポン! スゴ~イデスネ!!視察団』『メイドインジャパン』など“日本すごい系”のテレビ番組が幅を利かせています。“なるほど”と思える内容もありますが、場合によっては「礼賛しすぎ」と感じてしまうこともあります。以前、某人気バラエティ番組のトイレットペーパー特集で「日本のトイレットペーパーは世界トップレベル」と言っていましたが、一時期トイレットペーパー市場について調査していた私にとっては少なからず違和感がありました。日本のトイレットペーパーは価格も安く、品質は平均すると高い方ですが、世界一とは言い難いのが実情なのです。

 

例えば、P&Gが米国で製造販売する「シャーミン(Charmin)」。紙の柔らかさと程よい厚み、そして吸収性という観点から、シャーミンに匹敵する日本製のブランドはありません。病みつきになる人もいるほどの紙質ですが、その決め手となるのは抄紙機(紙を抄く機械)の能力。日本のトイレットペーパーの多くはシリンダー型の抄紙機で製造されていますが、最上級の米国の抄紙機と比べると限界があり、同じレベルのフワフワ感が出せないのです。

 

商品ラインナップの中でお勧めは、「Charmin Ultra Soft」。かさばる輸入品なので価格は高めとなりますが、Amazonなどの通販で買うこともできます。同じく先進の抄紙技術で作られたペーパータオル「バウンティ(Bounty)」やティッシュペーパー「パフス(Puffs)」も、日本製とは差別化された品質になっています。

 

 

■米国製の柔軟剤は日本人向きではないのか?

 

日用品においてもう一つ面白い事例は、同じくP&Gのダウニー(Downy)です。米国で1960年に誕生した柔軟剤ブランドで、米国以外でも東南アジア、中南米を中心に販売され、欧州、中国、ロシアでは、レノア(Lenor)というブランド名が使われています。90年代、P&Gは日本市場で米国の乾燥機用柔軟剤ブランドからその名前をとったバウンス(Bounce)という柔軟剤を発売していましたが、花王がハミングで牙城を築いた日本市場で苦戦を強いられていました。

 

そこで2004年に新たに投入した柔軟剤ブランドがレノアです。レノアは柔らかさ中心に競っていた市場の中で、ニオイを防ぐという新しいニーズを掘り起こし、市場変革を起こしトップブランドとなりました。クレイトン・クリステンセンが著書『イノベーションへの解』で言うところの新しい「Jobs To Be Done(片付けたい仕事)」を作り出したのです。

 

日用品の世界では通常、市場で受けいれられるために、現地の顧客や市場の特性に合わせて最適化を行います。特に香りというのは国によって好まれる香りのタイプ・強さが違い、日本人は世界の中でも微香性を好む傾向が高いといわれます。よってレノアも、日本人向けに香りの最適化が行われていますが、2000年代後半に大きなサプライズが起こります。

 

輸入雑貨店やネット通販や一部のチャネルでしか買えなかった米国製のダウニーが売れ始めたのです。今でも日本人の平均値を取れば微香性が好まれるでしょうが、ダウニーのような強い香りを好むセグメントが若い層を中心に現れます。テレビCMなどの大規模なマーケティングもない中、ダウニーは販路を拡大し、日本の柔軟剤市場での一大勢力となったのです。ダウニーはその香り、そしてアメリカからやってきたという文化的要素を武器にして、ブランドのファンを獲得したとも言えます。これらの現象から学び、レノアは香りのラインアップを拡張したり、ボールドやファブリーズは、ダウニーのブランド・エクイティ(ブランドの資産価値)を生かしてコラボを行い、日本での香りの嗜好変化を巧みに生かした商品開発を行なっています。

 

以上、私にとって比較的身近な二つの事例を取り上げましたが、他にもよく似た事例は存在します。世界は広く、日本人も一律ではなく、環境は知らないうちに変化しています。商品開発をしていく上で、「なんとなく正しそうなこと」を鵜呑みにするのではなく、まだ多くの人に知られていないリアルな情報(1次情報)を獲得していくことが重要です。「日本製は最強!」「日本人は特別!」などという固定観念を疑ってみることも、時には必要でしょう。

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