中目黒の高級家具店がニトリに……“おしゃれ”な住人たちに受け入れられるのか?

 

ニトリが今秋に東京・中目黒に出店する。場所は、フランフランを運営するバルス社の高級業態「バルストウキョウ」の跡地だ。都会的な街並みに巨大なニトリ……この出店はアリなのか? 商売の原理原則とマーケット環境から読み解いてみることとする。

 

 

■中目黒の住人にはニトリで十分だった?

 

まず、出店成否の第一条件が「商圏人口は相応か」だ。「商圏人口」とは、商業地や店に通う客の住む範囲である「商圏」内に住む人口のことである。この商圏人口により、できる商売がほぼ決まる。

 

生活商業の商圏は、以下のように大別できる。

・コンビニエンスストアなどの最寄り業態(毎日生まれるニーズに対応する店)が成り立つ小商圏(商圏人口1万人~18万人未満ぐらい)

 

・百貨店など買い回り業態(1ヶ月~3ヶ月に生まれるニーズに対応する店)が成り立つ大商圏(商圏人口50万人以上)

 

・その間に位置する中商圏

 

これらは独立して成立している場合もあるが、東京都市圏では、重複して成り立っている。例えば「渋谷商圏」という巨大商圏の中に、中商圏、小商圏がある。今回出店している中目黒は、渋谷商圏の下位商圏だ。中目黒では百貨店などは成立できない。中商圏商業地として判断するのが妥当だろう。

 

中目黒をよく知っている方は、もしかしたら反論があるかもしれない。それは、洒落たファッションや雑貨などの店があり、成り立っているように見えるからだ。実はそれらの店は、生活商業による商圏の客ではなく、観光商業による商圏の客たちに支えられている。

 

観光商業の商圏は、1度来たらしばらく来ない低頻度の客たちに支えられている。ディズニーランドのようなテーマパークや有名観光地、大型アウトレットモール、そして、青山や表参道、大阪・南堀江、神戸・旧居留地などの都市観光エリアなどがそれにあたる。中目黒は、足元にある中商圏と観光商業による希薄大商圏(商圏人口2000万人のような巨大な商圏だが低頻度来街客が多い商圏)が複合する商業地だ。

 

希薄大商圏で成立している店は脆い。天候や経済的な原因などで、商業地の来街が少しでも落ちたら立ち行かなくなるし、買い上げ客の多くは低頻度来街客であるため、自力で顧客をリピートさせることが難しいからだ。そのため、希薄大商圏にいても、中商圏、小商圏的な商売をすることが必要となる。

 

今回ニトリに取って代わられる「バルストウキョウ」は、まさしく大商圏対応型業態だ。また、当該物件は、中目黒の観光商業エリアから外れている。中目黒の観光商業エリアは、東急線より北の目黒川沿いから代官山方面に向かうエリアだ。そのため、希薄大商圏が抱える客も取り込むことができなかった商圏不相応な業態だった。

 

ニトリのような郊外ロードサイドで成長した業態は、中商圏で成立する業態である。そのため、中目黒の持つ商圏で十分に成り立つ。第一条件はクリアできる。

 

 

■「ロードサイドの便利で安い家具屋」から生まれ変わるのか

 

続いての条件が「客層と商品構成の適合性」。中商圏や小商圏の業態が、大商圏や希薄大商圏に出店する場合、2つのパターンがある。ひとつは、これまでと大きく変えることなく出店する「生活密着型」だ。ダイソーやしまむら、ドンキホーテなどがそうだ。もうひとつは、大商圏に出ることで商品のイメージや価格を上げていく「アップスケール型」で、ユニクロや無印良品などが典型だ。

 

ニトリはどちらのパターンで行くのであろうか。近年に出店している都市部の店を見ると、先にあげた2つのパターンに対応して店を構えているようだ。横浜のみなとみらい店は生活密着型で、プランタン銀座店はアップスケール型だ。生活密着型業態であれば特に大きく失敗することはないだろう。

 

アップスケール型で出店した場合は、課題がある。ブランドイメージだ。プランタン銀座では、ニトリの高価格帯品を販売しているが、大商圏立地では決して高いものではない。また、今秋からは中価格帯も投入し、強化するとされている。価格の高いものばかり見ている都心客からしたら手頃な店に見えるため、商機は多いにある。しかし、これまでのニトリで買っていた客と異なる層を取り込めなければならない。プランタン銀座では、ニトリのイメージより高い商業施設に入ることで、イメージアップを図れたし、同館の客を誘導できたが、中目黒のような路面店では自ら新たな層を集客しながら、イメージを上げることが必要だろう。

 

ユニクロが「地方ロードサイドの安物カジュアル店」から、「グローバルなカジュアルブランド」へと脱皮できたのは、原宿店出店によりイメージアップし、新たな客を取り込めたことがきっかけだ。ユニクロがかつて原宿に出店した時は、都心客でユニクロを知るものが少なかった。そのため、ユニクロを知らない都心の若者から火を付けることができた。

 

ニトリも、アップスケール型出店の場合、「ロードサイドの便利で安い家具屋」のイメージをどれだけ払拭することができるだろうか。生活密着型出店であれば「アリ」、アップスケール型出店であれば「条件つきでアリ」といえそうだ。

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