【ターニャの映画愛でロードSHOW!!】自由を拒む者たちへの反逆! 美しきトランスジェンダー女優が語るファイティングスピリット

 

■自分らしく生きたいと願うすべての女性へ……

 

こんにちはー、「金曜ロードSHOW!」プロデューサーのターニャです☆


今回は、極めて個人的なお話です。でも、どうしても、お伝えしたい作品についてご紹介します。それが、南米チリから届いた映画「ナチュラルウーマン」です。

 

主人公は、突然愛する人を失ったトランスジェンダー女性・マリーナ。悲しみに暮れる暇もなく、容赦ない世間の差別や偏見、暴力にさらされていきます。それでも、愛を貫き通し、前向きに生きていく強い女性を描いた物語です。難しい主役を演じたのは、自身もトランスジェンダーであるダニエラ・ヴェガさん。

 

この作品、まだ3月になったばかりですが、私にとって2018年ナンバー1作品に決定しました。そう断言できるほど、心の琴線に触れた映画なのです。私自身もトランスジェンダー女性だから、ということがそれほど強く感じ入った大きな理由かもしれません。ただ、この作品が放つメッセージは、自分らしく生きたいと願うすべての女性に届く普遍性とエネルギー、そしてパワーを持っていると確信しています。

 

だからこそ、ベルリン映画祭で複数賞を受賞したほか、アカデミー賞外国語映画部門のチリ代表に選ばれるなど、世界中で絶賛されているのだと思います。
 

 

©2017 ASESORIAS Y PRODUCCIONES FABULA LIMITADA; PARTICIPANT PANAMERICA, LCC; KOMPLIZEN FILM GMBH; SETEMBRO CINE, SLU; AND LELIO Y MAZA LIMITADA

■主人公マリーナ、そして演じたダニエラ・ヴェガという女性

 

「私の人生で一番大切なものは、反逆性と抵抗と愛です。この3つさえあれば、人生はよくなるし、みんながそれらを意識すれば、社会はよくなっていくと思います」……私の目をじっと見つめながら、ダニエラ・ヴェガさんは確信に満ちた声で語りました。スペイン語の通訳を通して意味は理解したのですが、彼女の強い意志を備えた性格、自分の信じる人生を迷うことなく生きている姿勢は、はっきりと伝わってきました。

 

今回、マリーナを演じたダニエラ・ヴェガさんを直接取材することができました。その場で、彼女自身の人生のポリシーを訊ねた私に対する答えがこの言葉でした。何に対して反逆、抵抗しているのか、と質問を重ねると、彼女は次のように続けました。

 

「人生に対してです。つまり、政治権力に対して、差別や偏見に対して、自分たちが自由に生きることを拒む者たちに対して、ということです。そうした存在に対して反抗・反逆するのです」

この言葉を聞いて私は、「自分が自分らしく生きていくために闘ってきた」と感じている彼女の強い信念と、それを達成してきたことへの強烈な自信を感じました。

 

それは、私自身にも重なる思いでもあります。トランス(性別移行)の開始時期や見た目の個人差にもよるところが大きいのですが、私たちトランスジェンダー女性は、自分らしく生きる、ということが必ずしも簡単ではなく、少なくとも一定期間、外科的あるいは内科的な措置を受けないと、本来の性、望む性で生きることはもちろん、他者からそのように認識されることもできません。

 

その過程において、この世界は常に温かく見守ってくれる存在ではないことを、私自身も感じてきたように、ダニエラさんも強く感じてきたに違いないのです。

 

 

この言葉を聞いて、私は凛とした美しさを備えた、とても魅力的な女性であると思いました。彼女の人間性が、この映画には色濃く投影されているため、主人公のマリーナもまた、強く凛とした女性なのです。それは、本作の原題「Una mujer fantástica」、ファンタスティック・ウーマン、「素晴らしき女性」そのものです。

 

 

■ひたすら前向きな主人公がもたらすエネルギー


本作はチリの首都・サンティアゴが舞台。ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌っているトランスジェンダー女性のマリーナは、年の離れた恋人・オルランドと幸せに暮らしていましたが、ある日彼は突然この世を去ってしまいます。

 

最愛の人を失った悲しみの中に放り出されたマリーナは、嘆き悲しむ暇も与えられることなく、世間の容赦ない差別や偏見にさらされます。それでも、前を向いて、逆境に負けず力強く前に進んでいくのです。

 

愛する人に、さよならを伝えたいと願いながら──健気な「闘い」を続けるマリーナの姿に、観ている人は応援せずにはいられなくなると思います。


あまりにも心無い暴言や、文字通りの暴力にも直面しますが、決してマリーナはへこたれません。下を向かないのです。ひたすら前を見て歩く彼女の姿は清々しく、パワーとエネルギーをもらえること間違いなしです。

 

自分らしくあるため、そして自分の欲しいものを手に入れるため、立ち上がり続ける主人公を描く物語は、他人の目や評判などを気にして自分の生きたいように生きられていないと感じるすべての人の心に刺さると思います。

 

 

■詩的な映像と音楽……ラテンアメリカから届いた珠玉の映像世界


もちろん、本作の見どころは物語だけではありません。マリーナが人生の「向かい風」を象徴する嵐の中を歩いていくシーンなど、詩的で美しい映像、作品世界を色彩豊かに彩る音楽もこの映画の大きな魅力です。


アレサ・フランクリンの名曲「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman」もマリーナの心情を伝える場面で使用され、心を揺さぶられます。チリの映画を観たことがないという方も多いかと思いますが、これまで観たことのないようなラテンアメリカらしさも感じさせる本作は、忘れがたい初体験をもたらしてくれると思います!


本作のメガホンを取ったセバスティアン・レリオ監督は、描きたかったことについて、映画そのものをどのように考えているかを絡めて説明しています。


「映画は、他者の気持ちを追体験したり、普段とは違った感情を抱いたりする機会を与えてくれます。……映画は人生の教訓を教えてくれ、心を柔軟にしてくれます。

 

困難の多い旅に、両手を広げて人生を委ねてくれたらいいと思います。それと、何か美しいものに触れたと感じてくれたら嬉しいです」……そう、この作品は本当に美しいものに触れることができる映画だと思います。

 

 

■変化を起こすのは私たちの世代


ここで、ダニエラさんが語った「闘う理由」を紹介します。彼女は同じトランスジェンダーである私に次のように語りました。

 

「自分たちが生きている世界は、前の世代が築いてきた結果なのです。だから、次の世代に残すものは、私たちが作らなければいけないと思うのです。

 

変化は私たちが作らなければいけない、あなたや私のようなトランスジェンダーが、(差別や偏見に対して)新しい認識を作らなければ、次の世代は新しい道を通れないからです。

 

その道を作るために、私たち自身が変化を与える必要がある、そういったことを私は常に考えています。いつも自分たちの人生、自分たちが生きたい人生のために努力する。だから闘っているのです」

彼女は、自分が自分らしく生きるため、新しい道を作るため、つまりはこの世界をより良いものにするためにこそ、闘っているのです。美しきファイター、ダニエラ・ヴェガさんの今後の活躍にも大注目ですね!

 

 

さらに、この映画を通じて、日本の観客に何を伝えたいか聞きました。

 

「ぜひこの映画を観てもらって、自分に問いかけてほしいと思っています。自らの共感力の限界をどこまで超えられるか、拡大できるか、ということを。

 

アイデンティティーや身体性、愛情関係もそうですし、そうしたものの許容力の限界をどこまで広げられるか、ということを、です。

 

そして、誰の立場でこの映画を観ていたか、ということを自分に問いかけてほしいと思います」

……私は主人公マリーナの立場で観ました。でも、時として、それ以外の登場人物にもなりえる、ということも同時に感じました。現実世界のそんな複雑なところを描いているのも観てほしい、ということでしょうか。

 

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■ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」 美しすぎるラストシーンにただただ涙……


音楽も素晴らしい、と紹介しましたが、本作のラストシーンの素晴らしさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。ダニエラ演じるマリーナがヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」を熱唱するのです。

 

「こんな木陰は
今までなかった
とても優しくて 愛おしい
心地よく甘美な木陰……」

それはそれは美しく、積み上げてきた愛の物語をさらに別の次元のものに昇華させるような印象的なシーンに、私はただただ、涙するしかありませんでした。同時に、込められたメッセージが心に沁みていくように理解できたような気がしました。


「人は、本当の愛に包まれ、木陰のように守られたと感じたとき、その愛だけで強く生きていける力を得ることができるのだ」と。たとえ、その愛を与えてくれた存在がこの世を去ってしまったとしても。愛は、永遠に。


それでは皆さま、心に残る、忘れられない映画体験を☆

 

 

■映画情報


『ナチュラルウーマン』

シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開中

配給:アルバトロス・フィルム

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