「SHINGO★西成 × 西成(大阪府)」──ドヤ街のリアルをストレートにうたい続ける遅咲きラッパー

ライフスタイル

日本語ラップがいま盛り上がっている。「フリースタイルダンジョン」というテレビ朝日の番組で盛り上がっている。即興のラップによるバトルが人気を呼んでいる。でも、火曜日深夜1:26〜1:56、俺は寝ている。だから、知らないでいる。そんな俺とあなたのために、池上(川崎)、一宮(山梨)、西成(大阪)、3つの街をレペゼンするヒップホップ・アーティストを訪ねた。1970年代にニューヨークのブロンクスで生まれた黒人たちのカルチャー、ヒップホップは、辺境の国ジャパンでその土地に根ざした独自のスタイルを築きつつある。ニッポンはけっこう複雑でいろいろある。

 

 

 

いっちゃん好きやねん! この街が

でも いっちゃん憎いねん!

底なしや


by SHINGO★西成

「KILL西成BLUES」

というのも、俺にとってはラップなんです」

 

彼はこの日、裏で洗い場を担当しながら(だから、快晴で冬にしては暖かだったのに長靴履きだった)、よく通る声でそう公園に集まったひとたちに呼びかけていた。

 

SHINGO★西成 STYLE
ストリートブランド「ANDSUNS」のタイガーカモ柄セットアップに、RUN DMCのレザージャケット。炊き出しの帰りなので足元は「HUNTER」の長靴。

街の児童養護施設の子どもたちがクリスマスのホール・ケーキを食べたことがないと聞いて、それを送る活動を07年から続けてもいる。

 

「巷でいっとき、タイガーマスクのすったもんだがありました(児童養護施設にランドセルが匿名で送られた寄付行為)。クソくらえです。俺、そんなのいわれる前からやってるから。東京でも、日比谷公園の年越し派遣村(08年の年末)では炊き出しもやって、とテレビでやっていたけど、松居(一代)劇場ぐらい茶番劇や。俺は流行りでやってんじゃない。気持ちでやってる。情熱でやってる。この街からいっぱい愛もらったから自分のできるコトをやってるだけ。鶴の恩返しちゃう。シンゴの恩返しや。俺がライブでいないときも他の皆さんがやり続けてる。助け合いの街なんで」

 

三角公園で用意された炊き出し。味は、けんちん汁丼、という感じ。およそ600杯がふるまわれた。

助け合いの街。

 

「でも、助け合っている姿が偽善に見えるのはすごくよくないんで。ボランティアのひとたちも、そういうのを嫌う。いろんな思いの活動家がいるから。過去にもいろいろ経験がある。13〜14年一緒にやっていて、いきなり、『シンゴ君、これやっているの、売名行為ですよね』って、普通にいうたんですね。売名行為なワケがない。ボランティアの1時間前までライブでお客さん最高潮にまで盛り上げて、現実に戻ってこの活動を続けてきた。そんな俺の情熱の火を消すようなこと言うな! って切に思います。『言うよりまず行動』やと思って。『いまできるコトを……いまできるヒトが……』の精神で地元でやってる。『俺もできる……おまえもできる……俺らにもできる』というのを伝えていきたい。それが音楽であり、言葉であり、こういう、取材、声かけてもらったらちゃんとやる。かっこつけて『イェイ』だけじゃなくて、隠さず日常も見てもらおうと」

 

「伊吹」にて。右手のバンダナがトレードマーク。巻きタバコを吸う愛煙家だ。

 

■ルーツはスナックのカラオケ

 

キリスト教系の団体がやってるんですか?とたずねると、SHINGO★西成は意外な答えを返した。

 

「詳しいこと知らないです。世の中って、知らなくていいこと、多くないですか。その団体が嫌いやったらイヤですもん。たとえば、なんかの雑誌はどっかの宗教と関係あるとか聞いたら違和感残る、みたいなのがキショいですね。だから、あえて『炊き出しの会』で、それ以上は知らないままにしている」

 

なぜ、「炊き出しの会」を手伝おうと思ったのですか?

 

「育ちが長屋なんで。日本語には、『向こう三軒両隣』というすごくいい言葉がある。助け合いですやん。その助け合いの文化があるから、俺も家庭事情いろいろあって、親が家にいないときは近所のおっちゃん、おばちゃんが世話してくれたし、スナックに預けられましたし。ずっと、スナックの閉店までおってそこで寝る。あのタバコくさーい、ブランデーくさーい、よどんだ空気のなかで、小林幸子の『おもいで酒』を3回歌うおっちゃんの横で、算数のドリルやってました。だから、あの時代の歌謡曲、めっちゃ、よう知ってる。身に染み付くじゃないですか。BGMどころじゃないですもん」

 

難波屋にて。「この街のことは中学校、高校ぐらいから特殊やなって(思いはじめた)。『出身、西成』っていうたら、『西成に住んでいるの』という顔をされたときに、そう思う人もおるのやわと思った」

いまは、飛田新地内にある家に住んでいる。ユーチューブに「SHINGO★西成 PV 飛田新地」という傑作がアップされている。「ようこそここが飛田新地  小学校への通学路」からはじまって、お店の名前を淡々と読み上げる。

 

その飛田新地で撮影できるから、ということで彼に案内されて、アーケードのある商店街を歩く。西成は「あったかいとこ」と彼はいった。俳優の赤井英和の実家は1分以内にある。

 

SHINGO★西成を取材する記者の今尾直樹。飛田新地料理組合にて。

「すげえ可愛がってもらってます。赤井さんのお母さん健在で。一声目から、『今日、肉とイモ炊いたんや』いうてましたんや。だから、『ああ、炊いたん』って返すような会話をします。それが自然にポンと出てきて自然と会話になる街。玄関開けたらすぐフリースタイルな街。住民の目が行き届いてる街。気ぃ使いすぎず自然体でみんな『生きてる』のを確認しあってる。そういう価値観のある街は住みやすい。西成は過去を捨てても生きていける街やから。いろいろ過去があっても、街が、ヒトが受け入れてくれて第2の故郷として生きていける街やねん」

 

(文・今尾直樹  写真・鈴木拓也  コーディネート・富山英三郎)

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