北川景子が「連ドラ女王」松嶋菜々子に勝った理由

出典:ドラマ『家売るオンナ』公式サイト

 

“働く女”……これがこの夏、アラサーからアラフォーの女性に向けて、民放各局がオンエアしているドラマのキーワードだ。

 

中でも注目を集めたのが、ドラマ不振といわれるフジテレビが三顧の礼をもって迎えた松嶋菜々子主演の『営業部長 吉良奈津子』と、DAIGOとの結婚後、初の連ドラ主演を務める北川景子の『家売るオンナ』の2本。

 

初回オンエアでは、ともに二ケタ超えの視聴率だったのだが、回を重ねるごとに『吉良奈津子』は一ケタ台に数字を落とし、『家売る~』はリオ五輪の影響で、一度は一ケタ台に落ちたものの、翌週からはまた数字を二ケタに戻している。

 

これまで「連ドラ女王」の名を欲しいままにしてきた松嶋菜々子が、北川景子相手にかなり苦戦を強いられているのは間違いないのだが、その理由はどこにあるのだろう。

 

『吉良奈津子』の一番の敗因は「アラフォー女性の等身大」を謳いながら、実は主人公の造形がまったく“等身大”でないことにある。大手広告代理店で多数のヒットCMを作っていた吉良奈津子が、3年の育休を経て会社に復帰。復帰したのは営業開発部の部長職……そこに会社側の思惑があるとしても「いやいや、3年も育休が取れて部長として復帰できる会社って……」と、女性視聴者はこの設定にまず「ああ、遠い世界の物語」と距離を置いてしまうのだ。

 

更に、松嶋演じる吉良奈津子はいつも美しい。本来なら、保育園に子どもを預けて慣れない業務での社会復帰ということで、どこかに疲れややつれが生じる筈なのだが、家庭内で子どもに食事をさせ、洗い物をする姿も綺麗&ホームウェアも完璧すぎて“生活感”が全く感じられない。もっと言うと、夫役の原田泰造とどうも夫婦に見えず……うーん、モヤモヤ。

 

かわって、北川景子が『家売る~』で演じるのは都心の不動産会社に勤める“天才”営業ウーマンの三軒家万智。「家を売る」ことに異常なパッションと執念を見せ、目的を達成するためには手段を選ばない。家賃5万のかつて一家惨殺事件があった豪邸に住み、仕事帰りには小汚い中華料理店でソロ餃子。笑顔を一切見せず、仕事にしか興味がないのかと思いきや、婚活パーティーにも積極的に参加するというキャラの深さが心をくすぐる。

 

働く女性を主人公に置きながら「等身大を描こうとしてブレてしまった」『吉良奈津子』と、「漫画的なシチュエーションで展開し、リアリティを振り切った」『家売る~』では、観終った後のスカッと感がまったく違う。ただでさえ、外でも家でもストレスを抱えている視聴者は、ベビーシッターと夫とのプチ不倫だとか、どこかで見たようなオジサンたちの派閥争いより「ゴォーッ!」とすべての邪念を吹き飛ばし、気持ち良くガンガン家を売るサンチーこと三軒家チーフのぶっ飛んだ活躍を見て、浮世の憂さを一瞬でも忘れたいのだ。

 

また『家売る~』は脇キャラも光っている。社内でいまひとつ存在感がないまま「俺が課長で課長が俺で……」とつぶやく仲村トオルや、腹黒王子キャラ全開の千葉雄大……そして、悪気もないがやる気もない……ムカつくのにどこか憎めないイモトアヤコ演じる白州美加など、漫画的でありながら、自分の周囲にいる誰かと重ねてしまう人物造形がとにかく秀逸……いるよね~シラスミカみたいな無意識お馬鹿女性社員……うんうん。

 

今期の夏ドラでは、新境地を開いた北川景子が松嶋菜々子に大きく差をつけたわけだが、北川景子演じる三軒家の「無表情・NO抑揚・振り切りキャラ」が、松嶋菜々子の大ヒットドラマ『家政婦のミタ』の主人公とどこか重なっているように見えるのが、皮肉と言えば皮肉である。

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