アジアを制する者が世界を制す──ディオールがブランド史上初のアジアアンバサダーに水原希子を起用した背景

 

先日、パルファン・クリスチャン・ディオールの「アジア アンバサダー」に、モデル/女優の水原希子(27)が起用され話題を集めた。今回の取り組みはブランドとしては初の試み。なぜこのタイミングで「アジア」なのか? なぜ「水原希子」なのか? 変貌を遂げているハイブランド市場を読み解くヒントとしてフォーカスを当てていこうと思う。

 

 

■ハイブランドとアジア人の相性

 

このところ、ハイブランドがコレクションやキャンペーン等でアジア系のモデルを起用するケースが少なくない。欧米人の彫りの深い顔立ちとは異なるクールな表情や凛とした強さが、世界的に評価されている証拠かもしれない。

 

ビューティの観点から言えば、メイク映えすることもアジア系のモデルを起用するメリットに挙げられる。色をたくさん使ってもくどくならず、ベースメイクも肌表面の凹凸が少ないぶん、商品であるファンデーションの魅力を最大限に伝えることができる。

 

そして決定的なのは“消費のポテンシャル”である。化粧品の消費量を国単位で考えれば、人口の母数としてアジア圏が圧倒的なのは明白。つまり、アジア人にウケるものを作った方が、ヒットした際の消費の可能性が上がるのだ

 

 

ディオールが水原希子をアンバサダーに起用した背景には、いよいよアジアをターゲットに戦略を打ってきたことがうかがえる。アジア人女性にとっては肌や顔の造りも近く、より親近感を持ってメイク・スキンケアのイメージを受け取ることができるだろう。これまで焦点を当ててきたアメリカやヨーロッパでの需要の伸び率がある程度頭打ちとなった今、これからは「アジアを制する者は世界を制す」と言って過言ではない。

 

近年、アジア圏の経済的な発展は目覚ましいものがある。同時に美容やファッションへの関心の高まりも格段に上がっている。ほんの10年前までは、筆者が美容ページを担当していた中国ナンバー1のファッション誌『瑞麗 服飾美容』も、メイクにしろファッションにしろ、まだ“アカ抜けないアジアっぽさ”が残っていたのを記憶している。

 

今やアジアの女性たちも自己投資を惜しまない時代。ハイブランドが動き出した背景には、相応の需要があると判断した結果であろう。それを象徴するのが水原希子のアジア圏での絶大な人気だ。

 

 

■水原希子の“アンバサダー”はアジア人女性の未来を背負う大役

 

 

水原希子は、ファッションモデルとしての世界的な活躍はもちろんのこと、そのライフスタイルも注目を集めている。彼女には、アメリカ・韓国のバックグランドと日本で育ってきた背景がある。アンバサダー就任の会見時は日本語・英語・中国語・韓国語の4か国語を流暢に使い挨拶したこともクローズアップされた。Instagramでは、リアルな国際感覚と力強いメッセージ性が世界各国から支持を集め約490万人のフォロワー数を誇る。

 

いっぽうディオールは、数年前から中国での市場が急激な盛り上がりを見せている。その波に乗るように、Instagramでアジアのセレブリティをフィーチャーし始めていた。SNSは既存のメディアとは異なる、よりユーザーに近いチャンネルだ。国内外に自らの世界観を自発的に発信し続ける水原希子が、ディオールの指針にフィットしないわけがない。現にアンバサダー発表時に、ブランド公式の見解として「現代のディオールウーマンを体現している」というお墨付きを与えられている。

 

 

水原希子が“モデル”ではなく“アンバサダー”として起用された意味を改めて考えてほしい。単に「ブランドイメージに近いから」という理由で広告ビジュアルに起用されるだけではなく、ブランドの哲学を自身の言葉でライフスタイルと同列で発信していく。彼女のSNSをフォローしているファンへの浸透力は絶大だろう。

 

様々な自己発信ツールが確立した現代、ただ美しいだけでは女性からの支持は集められない。仕事、プライベート、考え方、価値観、その人を象るパーツに同性からの共感を得られてこそ、本当の意味で支持されるのではないか。ディオールが求める多面的なクオリティを担保できている女性は、アジア圏ではそのマーケットに対してごく限られている。そこで白羽の矢が立ったのが、水原希子だったというわけだ。

 

今回の起用から、ディオールはもとよりハイブランドが今後のアジア展開にどう舵を切っていくかイメージできるはずだ。水原は会見で「ディオールの『女性を美しくするだけでなく、より幸せにしたい』という言葉が好きだ」と話した。女性の美と幸福は常に一体──その思想は彼女の活躍によって、これまで以上にアジアへと広がるだろう。

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