F1のタイヤの“硬さ”は7段階。どう使い分けるのが正しいのか?

 

 

F1のタイヤは2011年からピレリが1社で供給している。本社はイタリアのミラノにあるが、2015年に買収され、中国化工集団の傘下に入っている。生産はトルコ・イズミット工場で行っている。


ひとくちにサーキットと言っても、コースの特徴・特性はさまざまだ。一般道や高速道路にも滑らかな路面もあればザラザラした路面があるように、サーキットの舗装もさまざまだ。タイヤに対して攻撃的な路面もあるし、タイヤにやさしい路面もある。高速コーナーが多くて横方向に大きな力が掛かるサーキットもあれば、直線の比率が高いサーキットもある。温度条件もさまざまだ。


これら異なる条件をすべてカバーするようなタイヤを設計することは、もちろん可能だ。乗用車のタイヤがいい例で、凍てつく冬から燃えるような夏まで広い温度条件をカバーする。市街地の低速走行から高速道路の走行まで苦もなくこなすし、峠道だってへっちゃらだ(タイヤによって得手不得手はあるけれど)。もっと言えば、雨が降ってきたからといって、タイヤを履き替えたりはしない。


大前提として、F1はドライ路面専用のドライタイヤと、ウエット路面専用のウエットタイヤを設定している。さらに、ウエット路面用ながら、ドライに近い路面状態に適したインターミディエイトタイヤがある。


1種類のタイヤですべての条件をカバーしてしまうと面白味に欠けるので、F1ではドライタイヤのコンパウンドにバリエーションを設けている。コンパウンドとは、タイヤのトレッド面を形成するゴムの配合のことだ。軟らかいコンパウンドはグリップが強いので路面を捉える力が強く、ラップタイムを縮める効果が期待できる。また、低温下でも適正なグリップを発揮する温度領域に入りやすい。つまり、ウォームアップ性が高い。ただし、摩耗は早い。


一方、硬いコンパウンドは長持ちする替わりに、適正温度領域に達するのに時間を要し、グリップが弱く、速く走る効果も弱い。その替わり、長い周回走ることができる。

 

F1のタイヤはピレリ1社が供給している。サイドウォールのカラーでコンパウンドの硬さがわかる


■タイヤのバリエーションでレースを盛り上げられるか?


ピレリはF1のルールを統括するFIA(国際自動車連盟)と協議しながら、軟らかいコンパウンドと硬いコンパウンドを用意し、チームやドライバーに任意に選択させて予選やレースを走らせることにした。速く走れるポテンシャルのある軟らかいコンパウンドをメインに選択して予選/レースに臨むのがセオリーだが、裏をかいて硬めを選択するチーム/ドライバーが現れれば予選~レースの展開が面白くなるし、タイヤにも注目が集まるというわけだ。硬いコンパウンドを選んだのに軟らかいコンパウンド並みに速く、しかも長持ちする走りができたりすると、レースを引っかき回すことになる。


2011年は軟らかい方からスーパーソフト、ソフト、ミディアム、ハードの4種類のドライタイヤが設定された。これら4種類のコンパウンドのうち、サーキットの特性に合わせてあらかじめ2種類のコンパウンドを指定。レースでは両コンパウンドを必ず装着する決まりとした。例えば、ミディアムとソフトが指定されたとし、レースで2ストップするのが基本とする。その場合、ソフト~ソフト~ミディアムでつなぐのがセオリーだが、ミディアム~ソフト~ソフトとつないだり、ソフト~ミディアムの1回ストップを敢行してセオリー勢にひと泡吹かせたりする展開を目論んだ。


また、走行中のマシンがどのコンパウンドを装着しているか識別できるよう、サイドウォールに施すロゴをカラーで色分けすることにした。スーパーソフトはレッド、ソフトはイエロー、ミディアムはホワイト、ハードはシルバー(2013年からオレンジ)である。


ピレリやFIAの目論見に反し、セオリーから外れた使い方をするドライバー/チームがほとんど現れなかった。「おっ、アイツだけこのタイミングでソフトを履いている。この後どうなる?」というような、ドキドキな展開はほとんど生まれなかったのである。


そこでピレリは2016年に次の手を打った。スーパーソフトよりももう1段階軟らかい「ウルトラソフト」を追加したのである。識別色はパープルだ。同時に、各グランプリに指定するコンパウンドを3種類にし、ドライバーやチームの選択肢を増やした。

 

 


それでもまだ不十分だったということだろう。2018年にはウルトラソフトよりさらに軟らかい「ハイパーソフト」を追加(識別色はピンク)。ハードよりも硬い「スーパーハード」も追加し、ドライタイヤは7種類になった。新たに加えたスーパーハードの識別色をオレンジにし、それまでオレンジだったハードの識別色は新色のアイスブルーに変更した。各グランプリに指定するコンパウンドが3種類な点に変更はない。


整理すると、軟らかい方からハイパーソフト(ピンク)、ウルトラソフト(パープル)、スーパーソフト(レッド)、ソフト(イエロー)、ミディアム(ホワイト)、ハード(アイスブルー)、スーパーハード(オレンジ)だ。ちなみに、ウエットはブルー、インターミディエイトはグリーンである。色も呼び名もそろそろネタ切れだろう。


ピレリは7色そろったドライタイヤを「レインボー」と表現しているが、レースに彩りを添えることはできるだろうか。
 

関連記事

シェア
ツイート
送る