一見良さそうだが、やろうとすると難しい「同一労働同一賃金」

 

首相が施政方針演説で、「同一労働同一賃金」の実現を目指すと表明したことで、これに向けた具体的な議論が始められています。

 

「同一労働同一賃金」とは、同じ価値の労働に対しては同一の賃金が与えられるべきであるという考え方で、この原則は、欧米では一般的に導入されているものです。

 

日本の場合は、主に正社員と非正規労働者の賃金格差を是正する目的があり、この格差は諸外国でも無い訳ではありませんが、日本の方がかなり大きいのだそうです。正社員の賃金を100%とした場合、フランスは89%、ドイツは79%に対し、日本は57%ということです。

 

2015年9月には「同一労働同一賃金推進法」という法律が成立していますが、同じ仕事であれば賃金も同水準にする「均等待遇」の規定は弱められ、同じ仕事でも責任などに応じたバランスが取れていればよい「均衡待遇」に修正されています。職種別賃金が基本である欧米とは異なり、日本は賃金を決定する要素が多様で、職種が同じでも賃金が異なることが一般的であることが大きいのでしょう。

 

私は「同一労働同一賃金」が、不当な賃金格差を解消することにつながるならば良いことだと肯定的に思っていましたが、具体的にいろいろな状況を考えはじめると、難しい課題がたくさん浮かんできます。

 

例えば、同じ製品を同じ設備で作るとして、1時間で50個しか作れない人と100個作れる人では、それが同じ職種だから“同一労働”というのは少し違和感があります。また、総人件費の関係では、非正規労働者の賃金を上げれば正社員の賃金は下げざるを得なくなるでしょう。さらに、日本は企業規模による賃金格差が諸外国に比べて大きいとされ、これも「同一労働同一賃金」のハードルになります。

 

一番大きな問題は、そもそも何をもって「同一労働」と定義するのかということで、これは相当な割り切りをしない限り、線引きは難しいと思います。「総論としては良さそうな感じがするが、各論を考えるとかなり難しい」というのが私の印象です。

 

それでも議論しようというのは良いことですし、必要なことだと思います。日本の雇用慣行を踏まえた、慎重で実りある議論を望みます。

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