良質な財布は「コバ」で見分けよ! “価格以上の価値”をつくるモノづくりの世界

ライフスタイル

美しく磨き上げられれた「コバ」。「コバ」とは縁・切断面を指し、コバ磨きは他の仕上げよりも手間がかかるうえ、熟練工による高い技術が必要とされる

運気を上げたいなら札を折らない長財布がいいとか、黄色い財布がいいとか、風水的には諸説あるようだが、作りの視点から見たいい財布はこうだ。「コバ」がしっかり磨かれているかどうか。それが財布の良し悪しを簡単に見分けるポイントだ。コバとは財布の縁のこと。そこが丁寧に磨かれていることが良い財布の条件なのだ。

 

お持ちの財布を取り出して見てもらいたい。たいていは表側の革を内側に折り返してミシンのステッチで留めているはずだ。それが“縁返し(へりかえし)”と呼ばれる一般的な仕上げ方法だ。国産の財布の場合は、折り返した角を“菊寄せ”と呼ばれる伝統技法を用いて、細かく丁寧に仕上げているものもある。

 

縁返しされた財布は、見た目も美しく、手間もあまりかからないためお値段もお手頃なものが多い。しかし耐久性という点から見ると、使い込むうちに縁が擦れて破れてしまうため長く使えないのが現実だ。

 

通常の仕上げとは違い、オイルを染み込ませるひと手間をかけて仕上げられた「バブアコードヴァン」の財布は手によく馴染み、使い込むほどに独特の風合いを楽しめる

 

 

■「コバ」をみれば財布の良し悪しが分かるワケ

 

一方の“切り目”と呼ばれる仕上げ方法で作られた財布は、手間はかかるが耐久性に優れている。前述したコバを磨いた財布とは、この切り目の財布のことで、良い財布の特徴のひとつなのである。縁返しは縁が擦れてそのうち駄目になるが、切り目は擦れに強いため長く使うことができるのだ。

 

ここで切り目を簡単に説明しておこう。切り目とは財布の縁を縁返さずに裁断した状態のものを指す。作り方はまず表側と内側の革を合わせてミシンをかける。その後、より密着させるために道具を使って強く押しつけるのだ。よく見ると、ミシンステッチに並行して“ネン”と呼ばれる線が入っている。


しかし、このままだと貼り合わせて糸で留めているだけで縁に耐久性は生まれない。切り目仕上げが優れているのは“磨く”という行程だ。後述の「ブルックリン ミュージアム」の場合、「サンドペーパーで磨く→染料を塗る」という行程を三度も繰り返すのだ。たとえ切り目であっても、ブランドによってはフノリやトコノールを使って軽く磨き、アクリル樹脂を塗って手間を省いている場合もあるので要注意だ。コバが塗料で盛り上がっているものは気をつけたい。

 

さて、話を戻そう。磨きと染料を繰り返すことで表側と内側の二枚の革がより一体化して、縁が丈夫になるのである。財布の弱点である縁が強化されるため、結果的に長く使い続けることができるというわけである。

 

そんな切り目の財布にこだわり続けているブランド、ブルックリン ミュージアムを詳しく取材してきた。

 

写真左から、ブルックリン ミュージアムの創業者で現在はディレクター草ヶ谷和久さんと、もともとは職人で当社の革小物の作り手でもある2代目社長の草ヶ谷昌彦さん

 

は1979年創業のドメスティックブランドで、当初から革小物やベルト、ソックスを取り扱ってきた。1999年から小売りを開始し、2002年から店舗を構えている。現在は革小物からクロージングまでトータルで展開しているが、なかでも財布は素材の種類やカラーバリエーションも多く、男女を問わず人気が高い。とくに革小物に特化しているブランドなのだ。

 

財布は東京の下町の熟練した職人が手掛けているが、店内の奥にも工房が併設されていて、財布の一部を製作している。「自分たちで作ることで、妥協しない良質なモノ作りを行うことができます。実際に作り手たちがモニターとなり商品を使うことで経年変化を確認でき、サイズ感や小銭入れの位置など、改良すべきアイデアをすぐに商品に反映できるメリットもあります」と創業者である草ケ谷和久さん。

 

内側も革張りで見えない部分にも手を抜かない。開いたときに表面と違う色がちらりと見えるのもセンスの良さを感じさせる

 

 

■細部に宿る“価格以上の価値”

 

ブルクッリン ミュージアムの財布はコバが丁寧に磨かれているだけではない。紙幣やカードを収納する見えない箇所にも革素材を使っている。多くの財布はコストダウンと軽量化のために化繊などの布を使って誤魔化しているのだが、布だと使い続けているうちに破れてしまう。その点、革だと破れることがないのだ。さらにカード収納口にはミシンステッチが施され、より強化を図っている。

 

「ここまでやっているブランドは他にはないと思います。修理に関しても力を入れていて、ステッチのホツレなども対応していますし、コバが傷んできたら磨き直しも行っています。私たちの考えるブランドの価値とは、最良のモノを提供し、アフターケアまでしっかり対応することだと思っています」と2代目の草ケ谷昌彦さんは語る。自身も作り手であるからこそ、ここまでケアできるのだろう。

 

巷にはハイブランドや雑誌で取り上げられている新参ブランドの財布があふれているが、有名だからと商品の価値をそのまま鵜呑みにしてはいけない。やはり作りや素材のクオリティを見極めるべきだ。
 

ちなみにブルックリン ミュージアムは革素材に関してもこだわりが強く、財布の場合はが有名だ。常に13~15種類のカラーバリエーションを展開している。他にもや藍染め、柿渋染め、などの素材を使った財布も人気が高い。

 

型崩れやキズを防ぐよう加工され、使い込むほどに落ち着いたツヤと手に馴染む柔らかさが出てくる「フレンチカーフ」。カラーバリエーションが豊富なのも魅力的だ

 

 

■モノの本質を見極めよ!

 

先ほど少し触れたが、二つ折り財布の小銭入れの位置が縦方向に配されている。一般的な財布とは異なる配置なのだが、これは自分たちが使ってみて、より使いやすいように常に改良を加えている証でもある。また、カードをあまり使わないユーザーのためにカードの収納枚数を減らした小さめの財布を作るなど、作り手が常にユーザー目線なのも好感がもてる。

 

コバの磨きや革の内装、ステッチの補強、考え抜かれたデザイン、良質な素材など、すべてにおいてこのブランドの財布はクオリティが高い。長く使い続けるにはこういう財布を選びたいものだ。

 

お店でお気に入りの財布が見つかったら、まずはコバを見て、実際に触ってほしい。切り目仕上げで丁寧に磨かれていたら、とりあえず合格だ。

 

撮影:貴田茂和 文:倉野路凡 取材協力:ブルックリン ミュージアム

 

DATA

ブルックリン ミュージアム

問い合わせ先:
TEL:03-6427-1530

関連記事