安くておいしいものは大阪に多いが、“本当においしいもの”は東京にある

 

4月5日、東京ドームで行われた巨人×阪神戦で藤浪晋太郎投手(21)が、投げては好調巨人打線を8回2失点に抑え、1-1の3回表には先頭で今季初安打で出塁し、高山の一・二塁間を破る打球で一気に三塁へ。さらに三塁から横田が放った投手前に高く跳ねるゴロの間に、勝ち越しのホームをスライディングで駆け抜けた。

 

この好走塁で一気に流れをつかんだ阪神は8-2の快勝。翌日6日のデイリースポーツは、もちろん「デイリー」の「ー」が虎のしっぽマークとなり、5面をフル使用しての「トラ・トラ・トラ!」のお祭り騒ぎ。私のような「阪神タイガースの3軍」を勝手に自認する草野球チームに所属する人間にとって、そんなときの“デイリータイム”はまさに至福のひとときだったりするのだが、イケイケの絶賛文体にくまなく目を通していると、ある興味深いエピソード記事が3面にひっそりと掲載されていた。

 

藤浪は遠征先で東京が一番好きだという。(中略)「(東京は)おいしいものが多いですね。お金を出せば(笑)」と食事もポイントが高いという。もちろん大阪出身だけに「くいだおれの街」の良さも知る。「安くておいしい店は大阪に多いと思うんですけど、本当においしいものは東京にあると思う」

 

デイリー記者は、このエピソードを「プロ4年目。先輩からのごちそうで、一流の味も知ったのだろう」などと無難に〆ているが、コレって、じつのところ「東京vs大阪」の文化比較論を語るにあたって、かなり本質を突いた意見だと思う。そして注目すべきなのは、こういう鋭い学者的見解が、まだ若い現役のプロ野球選手の口から発せられたという事実である。

 

大阪人が東京に対するライバル意識をアピールする際の「大阪のほうが美味いものが多い」は定番中の定番だと言える。たしかに800円でランチを食べようものなら、大阪のほうが絶対に美味い店は多い。ただ、仮に5000円をランチに出すことを惜しまないなら、どうだろう? おそらく“美味い店”のセレクト幅は圧倒的に東京のほうが広くなる……つまり、“大阪人の定番アピール”は、正確にだと「安くて美味いもの」としなければならないのだ。

 

ではなぜ、「安くて美味い店は大阪に多いけど、高くて美味しい店は東京に多い」のか? 単純に東京のほうが大阪よりも物価が高いから──それは間違いのない一つの要因だ。しかし、私は“より大きな要因”として「東京の人口の多さ」があると考える。

 

「人口が多い=分母がデカイ」ということは、それだけ「あらゆる人種が混在している」ということで、大阪より東京のほうが“金持ち”へと向かう縦軸も長いわけである。したがって、“とんでもない金持ち”に対応できる工夫を凝らすタイプの店も比例して増えてくる。対して、縦軸の短い大阪は、必然的に限られたコスト内で美味しいものを提供できる、横軸対応の工夫を凝らすことに長けてくる。どちらが良いとか悪いとかの問題ではなく、現在の政治経済を背景とする地域性の違いから生じる状況ゆえ、それはもう甘んじて受け入れざるを得ないのだ……なんて分析を、冷静沈着に「野球」以外の「日常」でもサラリとして発言できる藤浪という存在が、とにかく頼もしい。私の秘やかな夢である「真のインテリジェンスを兼ね備える超一流のプロ野球選手の誕生」がようやく現実となる日は、そう遠くないのかもしれない。

関連記事

シェア
ツイート
送る