消灯やシステム停止では意味がない…なぜ残業対策はこれほど難しいのか

 

大手広告代理店の電通で、再び起こってしまった過労自殺をきっかけにして、残業対策を見直す企業が増えています。この残業削減の施策というのは、そんなに画期的な手法がある訳ではなく、一般的なところで言えば、残業の申請制や一定時間以上の残業禁止、定時退社日(ノー残業デー)の設定といったようなもの。これらの運用を、例えば残業申請であれば、課長の承認だけで良かったものが、部長承認まで必要にするなど手続きを面倒にして、残業をしにくい方向に仕向けたり、残業時間数であれば、今まで月60時間まで認めていたものを50時間にするなど、引き下げる見直しを行ったりということがされています。

 

さらに、残業削減をスローガンとして目につくように掲示したり、上司から各社員への早期退社を促す声掛けをしたり、各自のデスクに「本日の残業時間」を立て看板で掲示して、周囲から一目瞭然にしたり、残業時間を減らすための様々な試みがされています。また最近は、フロアの強制的な消灯や施錠、定時以降のシステム停止など、問答無用で仕事をさせないようにするという、わりと強硬な施策も目立つようになってきました。

 

 

■「減らす」だけでは結局、変わらない

 

前述の電通でも、労使協定で最長70時間とされていた月あたり残業時間を65時間に減らしたという報道がされていましたが、そもそも上限自体が守られてこなかった実態を考えると、実効性があるのかどうかは難しいところです。午後10時に全館消灯ということにしたようですが、そのかわりに朝5時から電気がついているなどという指摘もあり、モグラ叩き、いたちごっこの様相になってしまっているように感じます。どの会社でも、これほど手を変え品を変え、あの手この手の様々な取り組みがされているにもかかわらず、実際の削減効果については、なかなか良い成果に結びつかないのが実情ではないでしょうか。

 

なぜ残業対策がこれほど難しいかといえば、個人の利害をはじめ、その他の多くの要素が複雑に絡み合っていて、それぞれを組み合わせた最適解というものが、簡単には見出せないということに尽きると思います。

 

単純に残業を減らすということは、社員にとっては時間の余裕が得られる一方、残業代としての収入は減ることになります。会社にとっても、同じ生産性のままで労働時間だけが減ったとすれば、仕事で生み出される価値も比例して減り、業績の上では当然マイナス方向の力で作用します。業務量は変わらず、成果も同じように求めるのに、時間数だけを制限したとすれば、そこはまさにサービス残業の温床になります。

 

ここで必ずついて回る生産性向上や効率化といったことも、現場レベルや個人レベルで実行するには限度があります。ある会社では、無駄な会議を減らすとの号令のもと、会議の時間数を制限しましたが、本来必要なコミュニケーション時間も取られなくなってしまい、ミスや行き違いが増えてよけいに非効率なってしまったという話があります。

 

 

■全館消灯したところで残業対策は進まない

 

その一方、残業対策である程度効果を上げている会社というのは、必ず多面的な施策を実行しています。ある会社では、原則定時退社を徹底して管理する一方で、システム導入と作業プロセスの見直しによるルーチン業務やバックオフィス系業務の簡素化、効率化も合わせて行い、徐々に効果を上げています。残業削減で浮いた残業代は、すべて賞与原資に組み込んで社員に分配すると宣言した上で、残業対策を進めている会社もあります。

 

ただオフィスから締め出したり、管理強化をしたりという一面的な施策だけでは、本当の意味での残業対策は進みません。必ずどこかにしわ寄せが向かい、それがサービス残業であったり、やらなければならないことの手抜きであったり、業績低下であったりということになります。すべての組み合わせでの最適解を見つけることは簡単にはできません。ただ、多面的な視点で施策を展開しなければ、残業対策の成果が得られないことだけは間違いありません。

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