納得! いま「アナログレコード」が売れている理由

ライフスタイル

 

アナログレコードが売れているという。確かに、このところ多くのミュージシャンが新譜のCDと同時に、枚数限定でアナログレコードを出し、それが完売している。長らくCD化されず、幻の名盤となっていたポップグループの「FOR HOW MUCH LONGER DO WE TOLERATE MASS MURDER?」は、ようやくCD化されたとファンが大喜びした直後、アナログ盤の発売が発表され、やはり売れ行きは好調である。

 

アナログレコードの人気の秘密は簡単である。その圧倒的な物体としての大きさと迫力だ。かつて、音楽はレコードで聴くしかなかったから、音楽が好きな人ほどレコードの収納場所に追われたものだ。また、友人宅に持っていこうとしても、重くて壊れやすくて、何枚もは運べない。だから、CDが出たときに喜んだのだ。「あんな小さなジャケットでは買う気がなくなる」とCDに対して批判的だった人の多くは、年に1枚アルバムを買うかどうかの人たちだった。何より、当時のレコードの売り上げはシングル盤がメインで、ゴールドディスクとかミリオンセラーなんて言葉もシングル盤に与えられるものだった。アルバムが音楽産業の中心になったのはCD時代になってからだ。

 

ところが今は違う。音楽そのものは、どこででも聴けるし、CDどころか、データで手に入るから置き場所なんか考えないで済む。音質だって、今やハイレゾ音源なら、レコーディングされた音そのものの再現だってできてしまう。しかし、そうなると、大好きな数枚なら、アナログレコードくらいの「モノ」としての迫力と価値が魅力的に見えてくる。前述のポップグループのアルバム、アナログ時代に買っていて、長いこと部屋にジャケットを飾っていた。そのくらい良いジャケットだったし、昔は、ジャケ買いなんて言葉もあったけれど、今でも、ジャケットを飾りたくてレコードを買いたくなる人がいても不思議はない。だって、30cm×30cmの厚紙の写真なんて、もう本屋にも売っていない。中には、昔以上にガッシリと厚いレコード盤が入っていて、音も当時より全然良いのだ。

 

レコードプレイヤーというのも、かつては、場所を取って困ったものだった。上にモノが置けないというのが何より面倒だった。音は飛ぶし、針で引っかいて音を出すのだから、聴けば聴くほどレコードが劣化するというのも意味が分からなかった。しかし、今なら、普段はデジタルで聴いて、ここぞというときだけレコードをターンテーブルに乗せるといったこともできる。かつてはカセットテープに録音するため、音の劣化が避けられなかったが、今ならレコードプレイヤーから直接、デジタルデータにできる。ソニーのアナログプレイヤー「PS-HX500」なんて、レコードから直接ハイレゾで録音できる。こんなものが気軽に買えれば、音楽も楽しくなる。

 

音楽の中心が配信ビジネスに移行した今、パッケージとしてのCDを買う意味は、かなりなくなっている。でも、パッケージとしてのアナログレコードなら、買うだけの価値が見える。もちろん、ブームといったところで、それほど膨大な数が売れているわけではない。しかし、音楽はもともと、一部の大ヒット曲をのぞいて、レコードを買うのはマニアだけという時代がとても長かったジャンル。というより、大きなビジネスだった時代の方が短いジャンルなのだ。その中で、欲しいアイテムの一つとして考えると、十分、市場が成り立つほど売れている。それは、実は、アナログ回帰なんてものではなく、お金に見合う価値のものを欲しいと思うファン心理。だから、今、若い人も年配の方も、どうせ好きなミュージシャンの曲を買うなら、アナログレコードもいいよね、と思うのだ。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

小物王

納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

納富廉邦のプロフィール&記事一覧
ページトップ