カップ麺、ついに待ち時間0分へ!? 生き急ぐ日本の行方

ライフスタイル

出典:「」公式サイトより

■日本人は、食周りに恵まれすぎている

 

「こんなに美味しいものを普段から、しかも安価に食べているなんて、日本人の舌は甘やかされている」。

 

EUと歩調を共にすることを拒否して意図的な経済・物流の障壁を設ける永世中立国スイスの、しかも首都ベルン、最大都市チューリヒや国際機関の密集するジュネーブではないバーゼルという第3都市に住んでいたとき、私は日本食材店はおろかアジアのごく普通の食べ物自体がめったに見つからない生活を送っていました。1年ぶりに日本製のレトルトカレーを手に入れ、それをチンしてイタリア産のやたらと粒が大きくてモソモソしたリゾット用のご飯にかけて食べながら、「こんなに繊細で美味しいものがスイスの外にはあるのか……」と、心の涙を流したものです。

 

親類に高い送料を負担してもらって、カレーやラーメンや調味料といった日本のたわいのない食品をようやく手に入れては、日本のごくありふれた、しかし決して欧州では存在し得ない中身とパッケージの品質の高さをあらためて噛みしめ、感謝する日々。

 

 

■日本のメーカーは「お客様は神様」のドMメンタル

 

だって、「そう言いつつどこからも切れない」と日本ではよくツッコミの対象となる「こちら側のどこからでも切れます」という袋パッケージ、なんだかんだ言って3〜4回根気よく頑張れば、切れるじゃないですか。ヨーロッパのパッケージは、まず「こちら側のどこからでも」みたいな親切な文言は皆無、「Open(またはフランス語でOuvert):開けろ」ってぞんざいに書いてあるところに、切り口の手がかりさえなかったり。どっから開けろってんだ! いっそ「開けろ」って書かずに「開けるな」って書いてみてもほぼ同じじゃね? 慣れると、はじめっからそういうものだと思えるように心が鍛えられてタフになる(初めからハサミ準備)のですけどね。そういう「お客様は神様なんかじゃない」不親切さは、日本の外では常識なんです。

 

だから帰国して、とある日本メーカーのパッケージを手でちぎって開けるとき、その切り取り線上に「開けていただいてありがとうございます」って書いてあったときは、腰抜かすほどびっくりしました。「なにそのドMメンタル? 客を甘やかすにもほどがありゃしないか?」って。世界中が評価するほど、美味しくて、しかも親切すぎる。そんな日本の食は、世界から見るとわりと「ちょっと頭おかしい、マニアックな倒錯レベル」なのです。

 

 

■待ち時間0分の「ホット」な「流水麺」って何?

 

こんなニュースがありました。麺類の製造販売会社として有名なシマダヤが、のだとか。なんと「ホットな」「流水麺」とはこれいかに。熱湯をかけて混ぜるだけで、ちょうど良いゆで加減に仕上がるのだとか。あぁ、3分のカップ麺でもグローバルスタンダートでは十分早いというのに、日本人はどこまでせっかちなのか。どこまでタイムイズマネー、どこまで生き急ぐのだ、そしてどこへ向かっているのだ、ジャパニーズピーポー!?

 

先日はiPhoneも日本人のスピード好きを優先的に尊重して、日本向けにガラパゴスなSuica機能を搭載。コンビニ弁当の温め時間は1100Wで1分、配達注文してから1~2時間で届いちゃうAmazonプライムNow。おまけに、それでなくとも毎日ちゃんと運行している(遅延は10分や1時間単位から、ストに入ると平気で1ヶ月止まるなどの海外レベルでは稀有)電車の1〜2分の遅延に手厳しい。

 

 

■日本の変態技術、バンザイ!

 

いかんですよ、ニッポン。これが普通だと思っていたら、海外でストレスで病気になります。待ち時間0分のホットな流水麺だなんて、どれだけやっちゃいけない一線を越えているか……! あぁもう言葉にならない。ニッポンって変態!

 

(フランス以南、イタリアやスペインなどの南欧を除く)中欧・北欧の固い固いお肉とパッサパサの岩のようなパンに鍛えられて帰国した我が家は、実は日本のごくフツーのスーパーで

 

「うあああ、流水麺がある〜う」

「しかも素麺とかww」

「素麺くらい茹でろよww」

「もはや日本人は素麺も茹でなくていいのか完敗だww」

「よし、これ買って帰ろう」

 

というテンションで、シマダヤを愛好しております。

 

シマダヤは、我が家にとっては「日本の快適な食技術」の代名詞。生き急いでいいよ! タイムチャレンジしよう、日本! たぶんそういう内向きでオタクな追求心が、いずれ日本を救うんだと思う! 変態技術、バンザイだ。

 

(※欧州の食技術がいかに貧困であるかをご理解いただくために、英国ロンドン時代に「有機・自然食専門ショップ」的な高級店で見つけたカブト・ヌードルなるふざけたカップ麺の画像をご紹介しましょう。)

 

KABUTO NOODLE(MISO味)……。確か5ポンド(当時のレートで750円)くらいしたと思う。魔が差したんだ

裏に作り方。「麺を知らずして、戦には勝てぬ」とかいうキャッチコピーがすでにふざけている。熱湯3分と言いつつ、「その間に瞑想とか空手練習とかしてもよし」、「丼がなかったら、兜をひっくり返して使ってね」。ケンカ売っとんのかコラァ

開けたらカラッカラ。絶対日本のとちがうし。わかってたはずなのに、アタシのバカ……

熱湯投入。なぜ泡立つ……。ぜんぜん美味しそうに見えない。もう見届ける覚悟

 

3分待って、かき混ぜたところ。固そうだな……もう少し待ってみても、結局まだ固かった。もっと待ってみたら、ただふやけてブヨンブヨンに。リピートがなかったのは自然な成り行き。同じ750円で一風堂の白丸が食べられる日本、バンザイ

 

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コラムニスト

河崎 環

河崎環(かわさきたまき)/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭学園中高から転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Web...

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