「男は黙ってバーボン・ロック」には理由があった!今さら訊けないウイスキーの基礎知識

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「ウイスキーは面倒くさい」。本稿を記し始め、そんな声が多い世相をあらためて認識した。「ハイボール」について、アイリッシュ、スコッチ、バーボン、カナディアン、日本…と五大ウイスキーを「覚えたい」としただけで、小言される始末だ。

 

そんな「BARには行きたいが、薀蓄を覚えるのは面倒……」という輩に、今回は呪文を授ける。「男は黙ってバーボン・ロック」。コレだ。いや、すまん。三船敏郎さんのアノCMのパクリであることは、先に吐露しておく。もちろん「女は黙ってバーボン・ロック」でも、まったく差支えない。

 

BARのカウンターに座り、酒の知識もなく、そして気の利いた話題を振ってくれるお供もなければ、武骨にこう呟けばよい。「バーボンのロックをください」……これで恰好がつく。たいていのBARなら「バーボンは何にされますか」と訊いて来るだろう。銘柄を指定するのが普通だからだ。「銘柄なんか覚えてられるか」という輩は「お勧めはありますか」と返そう。マスターなら3つから5つぐらいのボトルを指示してくれるだろうから、その中から「聞いたことがある」ひとつを指さし、ロックを作ってもらえばよい。気の利いた一軒なら、日本ならではの美しい球体の氷でバーボンを注ぎ、サーブしてくれる。丸氷でバーボン・ロックを飲んでいれば、十分にBARに足を運んだ意義がある。

 

あまりバーボンに自信のないBARであれば「ウチは、ハーパーしか置いてないんですが、これでよいですか」と返って来ることもあるから、黙って頷けばよい。「バーボンがお好きなんですか」と訊かれるかもしれないが、「いえ、ぼちぼち」などとでも返答しておけばよかろう。レアものの、オールド・ボトルにさえ手を出さなければ、廉価でもある。

 

猫も杓子もスコッチ……というブームの今、スコッチをオーダーするだけで、あれこれと薀蓄が始まったりすることも多い。スコッチに興味がない者などは、あまりの薀蓄の多さにうんざりしてしまうかもしれない。「たかが酒じゃないか」という層だって、この世には多々いるだろう。だが、バーボンともなると、なんだか武骨さが全面に出て来るので、薀蓄をひけらかそうとする者が少なく、気楽に飲める。SNSなどにアイリッシュ・ウイスキーのボトルの写真をアップしながら「今日はスコッチです」などとコメントをつけるような間抜けを犯すこともない。

 

バーボンのロックは、こうして朴訥な上に、あまり多くの種類を置いているBARも少なく、薀蓄をふっかけて来る者が少ないという利点の上に、アルコール度数が高いので、気づかぬうちにガンガンと杯を重ねることも少なく、レアなスコッチのように一杯の値が張ることもない。そして、一般的には、その気になれば、流通しているバーボンの銘柄ぐらいすぐに覚えられるほどに多種ではないなど、初心者にとっては利点が多い。「ロックでは強すぎる」という輩は「バーボン・ソーダ」と唱えておけば、ローラが闊歩しながらジム・ビームのソーダ割りでも持って来てくれるかもしれない(いや、そんなことは断じてないが……)。

 

銘柄を並べておくと、上記のジム・ビーム以外にエヴァン・ウイリアムス、アーリータイムズ、I.W.ハーパー、フォア・ローゼズ、メーカーズマーク、ワイルドターキー、エライジャ・クレイグ……ぐらいがわかれば十分だろう。私個人の好みは、ブッカーズとなるが、初心者に勧めるのは止めておく。

 

念のため、バーボンの薀蓄も並べておこう。バーボン・ウイスキー(bourbon whiskey)は、アメリカン・ウイスキーの一種。基本的にケンタッキー州バーボン郡で作られることから、そう呼ばれている。しかし、「bourbon」はもともと英語ではなく、実はフランス語に由来する。アメリカの独立戦争を支持したフランスは当時、ブルボン朝(Bourbons)の時代。『ベルばら』つまり『ベルサイユのばら』の舞台となっているフランス王朝である。このブルボン朝からの支援に感謝し、ケンタッキー州の郡にブルボンの名を冠し、英語読みで「バーボン」へと転じた。それが同州のウイスキーの名となったのだ。また、アイルランド系アメリカ人が、バーボンの作り手の主流だったため、アメリカでは、アイリッシュ・ウイスキー(Irish whiskey)同様、ウイスキーを「whiskey」と綴る。スコッチ・ウイスキー(Scotch whisky)は、「whisky」とEが入らないという違いがある。

 

バーボンは、トウモロコシ使用率が51%以上、アルコール度数は80%未満で醸造させるなどなど厳しく法律で製法が定められており、その製法を満たさないウイスキーは、単に「アメリカン・ウイスキー」と呼ばれる。現在、規制緩和により、ケンタッキー州以外、全米でウイスキー作りが盛んになっている。

 

「スコッチの薀蓄が面倒」という向きは、ぜひカジュアルなバーボンから始めてみてはいかがか。

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BAR評論家

たまさぶろ

週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学などにてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsを務める。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日イン...

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