キーマンを待つしかないPTA、終わらない「専業主婦vsワーママ対決」

人間関係

 

■重い沈黙に耐えかねて手を挙げる

 

読者諸姉氏の中に「断りきれなくて、今年のPTAやクラス役員を引き受けちゃったよー」という方は、どれくらいいらっしゃるだろうか。あるいは「以前、どうしても断りきれなくて引き受けちゃってねぇ」という方。かなり多いはずである。なぜなら現在、PTAを引き受けるという状況に、「進んで」とか「喜んで!」とか「いやぁもう、PTAやりたくてやりたくて、夢にまで見て」なんて気持ちが生まれる奇特な人は、なかなかいない。みんな、

 

“PTAの役員決めで、時間と手間がかかるため誰もが嫌がる役職に、長すぎる沈黙に耐えかねて手を挙げてしまった”

“勧誘の電話の度重なる懇願とその末の沈黙に、ついハイと言ってしまった”

 

など多かれ少なかれ似通った状況で引き受けて、気持ちの整理をつけるのに時間を要したのではなかろうか。うんわかる〜、沈黙を使って圧迫感で攻めてくるヤツっているよね〜。あいつらマジ卑怯だよな!(←沈黙に耐えかねて色々引き受けてきた人)

 

しかしなぜこんな圧迫面接的な、刑事の取り調べのような、スパイの自白強要のような、「誰かが決まらないと、この場の解散はできません。みんなどんなにお腹が空こうが泣き叫ぼうが、おうちに帰れないのよッ!」的な状況(誇張)が、のどかな学び舎のはずの学校の保護者間でまかり通るのか。物騒にもほどがありやしないか。

 

 

■4月に突然の「一人一つはやってもらいます」宣告がまかり通る仕組み

 

こういう物騒なことが連綿と続くのは、PTAの仕事が前年度にすでに決定している中で、新しいメンツが集められているからなのだ。例えば子供が新入学(入園)した学校で、4月に突然「お子さん1人あたり必ず1度は役員をやってください」なんて上から言われるわけである。保護者は自分の預かり知らないところで決められた仕事の割り振りに、言われるがままに当てはめられる以外に術がない。

 

前年度のうちから学校側は行事予定を組んでおり、その多くは余程のことがない限り前年度の踏襲である。そして前年度中に選出された翌年度のPTA本部役員が春休み中に来年度の行事予定を知らされ、本部役員でさえ「おう……一年でこんなに仕事あるんだ……」と知るわけだ。だから、4月の時点で親切に「さて新年度ですが、皆さんPTAにご入会されますかぁ?」なんて入会の意思確認をすると、その年度の既決の仕事が回らなくなるからしない。できれば入学式のどさくさに紛れて「一応任意ではあるのですが〜」と口頭でさらっと説明だけして、うやむやのうちに「子どもの入学=親のPTA入会」をデフォルト設定のまま進めたいところである(実際そのように進められる)。

 

こういった状況があっての「一人一つはやってもらいます」宣告なのだ。んなもん、そこで「いや、PTAって任意加入ですから!」って大勢が示し合わせて反旗翻してごらんなさい。保護者の中にはそれで胸がすく人もいるかもしれませんが、まずその時点でPTAの機能ストップ、そしてパニック。したがって学校の年間行事運営が危ぶまれ、日が迫っているような春の行事はストップ。年度後半の行事は縮小または削減。「毎年みんなが楽しみにしてくれている今年の学校フェスティバルですが、非開催となりました」。すでに入学している子どもの学校生活と行事が人質となり、「子どものために」が最強の魔法呪文となり、PTAは生き永らえていくのである。

 

 

■変革を起こすのは“バカと外国人”?

 

メディアではPTAがそこかしこで徐々に機能不全を起こし始めている様子が報じられているが、すると潤沢な予算を持たない部分を保護者や教師、地域の人々のマンパワーやアイデアで補ってきた公立校では、学校行事がすっかり痩せ細ってしまうのだ。

 

教員に余力はない。現時点でさえ、ごく一部のやる気のある先生がキーマンとなって引っ張る形を取っている中、その学校が元気であるかどうかは、保護者のボランティア精神が鍵となる。周辺の自治会が元気なら力になってくれるが、ただ、自治会は老いていく。後継者がいない都市部では特に、自治会もPTA同様に機能不全の兆候を見せているところが多い。
 

言葉が大変に悪いことを承知で書くが、「社会や組織にイノベーションを起こすのはバカと外国人」という説がある。その環境にどっぷり浸かった当事者は、事情をよく知れば知るほど改革ができなくなる、だから思い切った変革を起こすことができるのは、事情を理解していない異端者だ、という話だ。事実、ある公立校では“合理的でラディカルな新興住人グループによる大改革”でPTAが解体され、父母会という形になったものの、数年後に地主のボンボンが「やっぱりPTAがないと、“公”のネットワークから外れて地域の他の学校と足並みが揃わないし、情報やマンパワーなど、自治体からの支援が受けられない」として、PTAを再結成した事例がある。


企業の改革も、地方自治や村おこしも、PTAもまた、人を束ねた組織に変化をもたらす難しさという点で非常に似ている。以前、“地方再生”のプロに話を聞いた時、「地方再生の成功は、キーマンの存在にのみかかっていると言っても過言じゃない」との言葉が印象的だった。PTAも同様に、保護者、あるいは教員の中にキーマンが存在するかしないかでまったく別の活動になってしまうのだ。例えば、教員の中にも自らが他校では保護者であり、PTA会員であり、そこらのフルタイムワーママよりも長時間労働なのにPTAのお勤めを迫られて悩んでいるという女性教諭がいたりする。教員の中にも、問題意識を共有できる人はいるのだ。


キーマン(ヒーロー)を待っていても始まらない。“地方再生”と“地元公立校のPTA”の問題は世代間の継承、地域の活性化や自然資源・人的資源活用という点で、全くの同根だ。組織のリノベーションが、断捨離が、心の“ときめき”の声に従う片付けの魔法が必要なのだが、政治が女性活躍や教育現場を触るなら、もはや成立しなくなっているPTA組織も当然の範疇としてくれぐれも“よろしくお願い”したい。

 


■だから“専業vsワーママ”は、戦う相手を間違ってるのよ……

 

今年度も各所で順調に(?)PTAが滑り出しているようだが、実践現場では予想通り専業ママの発言にワーママが“ムカーッ”とか、その逆とかを漏れ聞く。

 

専業ママ「みなさん、PTAの備品は各自全て賢くダイソーで購入しましょッ(キリッ)」

 

ワーママ「ワーママの1日のどこにダイソーへ行く時間があると……」

 

専業ママ「極力予算をかけないように、との努力に協力する意思が感じられません」

 

ワーママ「時は金なりと申しましてね〜、効率あげてサクサク回すために無駄は極力カットして、ラクできるなら多少の持ち出しもアリにして、業務をシンプルにしようとしてるんでございますのよ」

 

専業ママ「じゃあそういう考え方でしたら、私は私でやるので、業務の効率化に関しては○○さんがやってくだされば……。あ、あと皆さん、メンバーの定例会は月に2回、平日の14時過ぎでお願いします」

 

ワーママ「何その、午前休でも午後休でも対応しかねる、微妙な時間……」

 

あーわかる、どっちも分かるぞぉぉぉ!!

だが戦うべき相手はそこじゃないんだ! しょせん解決しないもっと根深い問題の上でクルクル踊っているに過ぎないのだ!! 専業ママとワーママが仲良くLINEで買い物リスト共有して専業ママが買いに行ってあげてよ、ワーママは「定例会、午後じゃなくて午前中朝イチなら午前休を取ってご一緒できます」って提案してみようよ!!

 

と、最後に叫んで、3回に渡ったPTAネタを終わりとしたい。

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コラムニスト

河崎 環

河崎環(かわさきたまき)/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭学園中高から転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Web...

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