世界中のトップドライバーがカテゴリを超えて闘う“オールスターレース”、知ってる?

車・交通

 

F1にWEC(世界耐久選手権)、インディカー、NASCAR、WRC(世界ラリー選手権)、ラリークロス、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)──。世界にはさまざまなレースカテゴリーが存在するが、カテゴリーの枠を越えてドライバーが腕を競う機会はない。


いや、ある。レース・オブ・チャンピオンズ(Race Of Champions:ROC)というイベントだ。1988年から歴史を刻んでいる年に1回のイベントで、例年、モータースポーツがオフシーズンに突入する冬に行われている。2016年のオフに行われるはずだったイベントは、年が明けた2017年1月21日~22日にアメリカのマイアミで開催された。ROCがアメリカ大陸に上陸するのは初めてだ。


WRCのドライバーらが中心となって始めたイベントだったので、当初は屋外のダートコースやサーキットで開催されていたが、2004年以降はスタジアムで行っている。例えば、2007年と2008年はイギリス・ロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催している。「サッカーの聖地」と表現した方が伝わりやすいだろうか。2009年は北京オリンピックのメインスタジアムとして使用された通称「鳥の巣」で開催された。2012年の会場はロンドンのオリンピックスタジアムだ。

 

 

■イチロー所属のマーリンズ本拠地に特設コース


今回の開催地は、イチロー選手が所属するマイアミ・マーリンズの本拠地、マーリンズ・パークである。天然芝のフィールドにマットを敷き詰め、その上にアスファルト路面の特設コースを設けて競技を行った。サーキットで行うレースにしてもラリーにしても、現地観戦した場合は目の前を通り過ぎる一瞬しか、マシンの様子を確認することはできない。ROCはスタジアムで開催するため、スタートからフィニッシュまですべての動きを観客席から眺められるのが特徴だ。

 

近年のROCはスタジアム内に特設コースを設置する。今回はマイアミのマーリンズ・パーク


WRCの開幕戦モンテカルロと日程が重なってしまったため、WRCのドライバーが参加できなかったのは残念だったが、ROCマイアミ大会にはそうそうたるドライバーが集まった。F1からは、2010年~13年チャンピオンのセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が参加。ベッテルはROCの常連で、かつては7度のチャンピオンに輝いたミハエル・シューマッハとコンビを組んで数々の勝利を収めている。


なぜコンビを組むかというと、ROCはイベント名と同じ「レース・オブ・チャンピオンズ」と呼ぶ個人戦のほかに、「ネイションズカップ」と呼ぶ国別対抗戦を行うからだ。ROCが「モータースポーツのワールドカップ」と称されるゆえんである。ベッテルはかつてシューマッハとコンビを組んでチーム・ジャーマニーを構成し、国別対抗戦で6回優勝している。まさに、ドリームチームだ。


F1からは他に、パスカル・ウェーレイン(ザウバー/ドイツ)が参加。ROCに参加できるのは現役だけに限らず、引退したばかりのジェンソン・バトン(イギリス)やデイビッド・クルサード(イギリス)、一度は引退宣言したものの1年延長を発表したフェリペ・マッサ(ウイリアムズ/ブラジル)が参加。引退組では、ル・マン24時間で9度の優勝経験を持つトム・クリステンセン(デンマーク)が目を引く。クリステンセンのROC参加は15回目で、参加した20名のドライバー中、最多出場だ。


アメリカで行われた大会だけにアメリカで活躍するドライバーの参加が多く、インディカーシリーズからはファン・パブロ・モントーヤ(元F1ドライバーでもある/コロンビア)、トニー・カナーン(ブラジル)、ジェームス・ヒンチクリフ(カナダ)、ライアン・ハンターレイ(アメリカ)らが参加。NASCARからはカート&カイルのブッシュ兄弟(アメリカ)が駆けつけた。

 

 

■国別対抗戦も見どころ。日本は…


マーリンズ・パークに設けられたコースは、センターのバックスクリーン側を基点にホームベースに向けて2車線のメインストレートを配し、ストレートエンドで一塁側と三塁側に別れるレイアウト。レースはトーナメント(勝ち抜き)方式で行い、ストレートでスタートした 2台の車両は、1塁側コースと3塁側コースをそれぞれ1周。ストレートで交差して8の字を描くようにもう一方のコースを1周する。

 

さまざまなタイプの車両で戦う。マシンコンディションは同一なのでドライバーの腕が問われる


競技車両はラリークロスタイプやNASCARタイプ、オープン2シーターや後1輪の3輪車などさまざまだが、対決する2名のドライバーは同じ車両に乗るのが決まり。つまり、道具に優劣はなく、純粋に腕の差で勝負が決まる。ユニークなのは、助手席にVIPゲストを乗せて競技を行うことだ。


21日に行われた個人戦は、クリステンセン(1967年生まれ)とモントーヤ(1975年生まれ)のベテランが決勝に残り、モントーヤ(F1時代に比べると、いろんな意味でずいぶん貫禄がついています)がROC初出場にして初優勝を飾った。予選ラウンドでは、マッサとウェーレインが対決したが、レースに敗れたウェーレインはフィニッシュラインを通過後、バリアに激突して横転。幸い大事には至らなかったが、助手席のゲストはさぞかし肝を冷やしたことだろう。


22日の国別対抗戦はUSA NASCAR、USAインディ、USAラリークロス、カナダ、ドイツ、ノルディック、イギリス、ブラジル、コロンビア、ラテンアメリカに分かれて対決。前日のアクシデントによりウェーレインにドクターストップがかかったため、ベッテルひとりでチーム・ドイツを構成。そのドイツ(というよりベッテル)が、予選ラウンドを含めて8勝し、決勝ではUSA NASCARを下して優勝した。


最後にアメリカ対その他の国々(Rest Of World)の対戦が行われ、接戦を制してアメリカ以外の国連合が勝利を収めた。最後の対戦で勝利を収めたペター・ソルベルグ(03年のWRCチャンピオン。14年&15年のワールド・ラリークロス・チャンピオン/ノルウェー)がチームを代表してウイニングランを行っている。


ハイライト動画を見るだけでも楽しそうだし、動画や写真から伝わってくるドライバーの表情を見るにつけ、心底楽しんでいる様子。そこに日本人ドライバー(と、チーム・ジャパン)がいないのがチトさびしい。
 

 

 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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