上司に「気合いが足りないからインフルエンザになるんだ」と言われたら

人間関係
上司に「気合いが足りないからインフルエンザになるんだ」と言われたら

今年の冬も、インフルエンザが猛威をふるっています。いつ誰に、その魔の手が伸びてくるかはわかりません。インフルエンザだけでも苦しいのに、周囲の反応のせいで腹が立ったり悲しくなったりという余計な苦しみを背負わされるケースもあります。備えあれば憂いなし。けっこう横行している「インフルエンザ・ハラスメント」の対策を考えておきましょう。

 

会社を休ませてもらおうと上司に電話して、インフルエンザにかかったことを報告したとします。たいていの場合は「えっ、大丈夫? ゆっくり休んでね」「たいへんだね。お大事に」といったねぎらいや心配のセリフが返ってくるはず。もしかしたら内心では「うわー、まいったな」と思っているかもしれませんが、表面的にはあたたかい対応をするのが大人のやさしさであり、「ひどい人」と思われないための大人の配慮です。

 

しかし、いつも大人の対応をしてもらえるとは限りません。ウカツというか正直というかいろんな想像力が足りないというか、

 

「気合いが足りないからインフルエンザなんかになるんだ!」
「健康管理を怠るなんて、社会人としての自覚が足りない!」
「まったく、この忙しい時期に、何を考えてんだ!」

 

などなど、言われた側が耳を疑うような大人げないセリフを口にする人もいます。

 

もちろん、気合いだけでインフルエンザは防げないし、きちんと健康管理をしていてもかかるときはかかります。忙しい時期なのは重々承知ですが、こっちだって休みたくて休むわけではありません。明らかに理不尽なイチャモンで、激しく腹が立つし、そんなことを言ってしまう上司の下で働いていることが悲しく思えてきそうです。

 

しかし、残念ながら世の中には困った人がたくさんいるし、相手が常に自分が望むとおりの反応を期待するのも無理があります。降りかかった災難の被害を最小限に抑えるには、怒りの感情に支配されないことが大切。こうした明らかに相手に非があるケースでは、心の中で「クソ上司が!」「最低のヤツ!」と際限なく怒りをふくらませてしまいがちですが、その方向で精を出しても疲れるだけで何の実りもありません。

 

そこまで絵に描いたようなダメなセリフを口にしてしまう人は、遠慮なく笑ってしまいましょう。「よくまあ、そんな調子で恥ずかしくないもんだ」と呆れながら笑うもよし、「おお、ベタなセリフを聞いちゃった」とニヤニヤするもよし。あるいは「いい歳して、そんなふうにしか言えないなんて、むしろ気の毒な人かも」と同情してもかまいません。いままで怖い上司だと思って萎縮していたとしたら「なんだ、たいしたことない人だったんだ」と一種の見切りをつけて、新たな関係を築くきっかけにする手もあります。

 

 

どうにか回復して、久しぶりに出社したときも、そういうダメ上司はやさしい言葉なんてかけてはくれないでしょう。そこでまた腹を立てても仕方ありません。ないものねだりをしてストレスを増やすのではなく、全力で大人な態度を取ることが、おもに自分の気持ちを整理する上で有効な反撃になります。

 

深々と頭を下げて「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝ったあとは、「あらためて健康のありがたさを思い知りました」とか「日頃の行ないが悪いから、きっとバチが当たったんですね」といったお決まりのセリフを付け加えて、病み上がりの状況における理想の大人像を演じ切りましょう。大人げないことしか言えない上司に対して、大人な態度をぶつけ返すことで、一気に優位に立った気持ちになれるはずです。

 

久しぶりに出社して「申し訳ありませんでした」と言ったときに、「気合いが」「健康管理が」の類の大人げないセリフをぶつけられることもあります。もう元気になっていますから、どうしても黙っていられないなら、反論するのもひとつの選択肢。ただし、感情的になってしまったら相手と五十歩百歩です。冷静な口調で「もし課長がインフルエンザにかかったときには、同じセリフをお贈りしていいですか」とでも言ってやりましょう。

 

まあ、反論するのが必ずしも偉いわけではありません。そういうダメなセリフを部下に言うヤツはたいてい器も小さいので、きっと根に持ちます。さっきと同じように、笑ったり同情したり、あるいは見切りをつけたりといった対抗策を取ったほうが、長い目で見て無駄に疲れずに済むでしょう。神妙な態度でうつむきながら「一言(いちごん)もありません」といった大人な言い回しを使ってみるのも一興です。

 

最悪なのは、反論するでもなく自分の中で整理をつけるでもなく、相手に非があるというところに甘えて、いつまでも引きずってウジウジと腹を立てたり、お酒を飲んで友達や同僚に愚痴をこぼしたりすること。時おりままならない出来事に見舞われるのは、大人の宿命です。振り回されずに上手に付き合っていくのが、大人の強さに他なりません。

 

インフルエンザは次々と新しい型が表われて、免疫のつけようがないと聞きます。しかし、大人を見舞う災難に対しては、意識して免疫をつけてしまいましょう。それはけっして逃げでも諦めでもなく、大人としての勇敢でたくましい攻めの姿勢です。

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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