【中年名車図鑑|6代目 日産ブルーバード】ブルーバード、お前の時代だ!

車・交通

大貫直次郎

1980~1990年代の日本の名車を紹介する連載「中年名車図鑑」。第1回目は、今年の干支の酉にちなんで、メーテルリンクの童話劇の幸福のシンボルである“青い鳥”から命名されたブルーバード、それも最後のFR(フロントエンジン・リアドライブ)ブルとして大ヒット作に昇華した6代目の910(1979~1983年)で一席。

 

1982年1月のマイナーチェンジで登場した4ドアハードトップモデル。910ブルーバードの人気を不動のものにした

【Vol.1 6代目 日産ブルーバード】

日産自動車は排出ガス対策にある程度の目処がついた1970年代中盤になると、滞っていた新型車の開発を積極的に推し進めるようになる。とくに中核車である次期型ブルーバードの開発には、大いに力が入れられた。

 

新しいブルーバードを企画するに当たり、開発陣は“原点回帰”を試みる。ブルーバードの設計理念は「つねに先進的なクルマであること。そして、最高水準のメカニズムをもつこと」。これこそが本来の“ブルーバード・スピリット”であり、次期型はこれを具現化するものでなくてはならない--。こうした開発方針のもと、「80年代を代表する高性能、高品質の本格乗用車」の完成を目指した。

 

5代目の810型系の発表からわずか3年4カ月後の1979年11月、6代目となる910型系ブルーバードが市場に放たれる。ボディ展開は2ドアハードトップと4ドアセダン、5ドアワゴン(車名はADワゴン)、5ドアバンの計4タイプを用意(ワゴンとバンは同年12月から販売)。810型系で用意していたロングホイールベース版は廃止された。

 

スタイリングに関しては、“シンプル&クリーン”をデザインテーマに掲げる。数多くのアイデアスケッチが提出されたが、その中から直線基調のシャープなボディラインを描く1枚が選出された。また各設計部門には、「デザインを変更するような注文は一切出してはいけない」という厳命が出された。

 

「シンプル&クリーン」なデザインが多くのユーザーに支持された。今見てもバランスのとれたプロポーションだ

メカニズムについては、従来の810型系で他車との共用化や省資源を徹底したことを鑑み、910型系では新機構を積極的に取り入れる戦略を打ち出す。そして“ハイキャスター・ゼロスクラブ・サスペンション”、“ラック&ピニオン式ステアリング”“ベンチレーテッドディスクブレーキ”“高性能&省資源のZエンジン”という4つの技術トピックを創出した。エンジンに関しては、V字型配置の吸排気弁や1気筒当たり2本のプラグの配置した既存のZ型系エンジンを、チューニングを見直して搭載する。ラインアップはZ16型系1595cc直列4気筒OHC/Z18型系1770cc直列4気筒OHC/Z20型系1952cc直列4気筒OHCを設定。Z18型については、最新の過給器であるターボチャージャーの組み込みも仕様検討された。

 

直線基調のシャープなスタイリングに、先進の足回りを採用した910型系ブルーバードは、たちまち市場の大人気を獲得する。販売台数はウナギ登りで、1979年12月には1600cc~2000cc小型乗用車クラスの月間トップセールスを記録。それ以後も、同クラスの首位に立ち続ける。また910型系はその走りの良さから、自動車マスコミ界で「510ブルの再来」、「ブル本来の走りが蘇った」などと絶賛された。

 

好調な販売を続ける910型系ブルーバードは、1980年3月になると真打ちともいえるスポーツ仕様が追加される。日産にとっては1979年12月に登場した430型系セドリック/グロリア2000ターボに続くターボモデルの第2弾となる「ブルーバード1800SSSターボ」が登場したのだ。搭載エンジンはZ18E型1770cc直列4気筒OHCをベースにギャレット・エアリサーチ社製ターボチャージャーを組み込んだユニットで、型式はZ18E-T(135ps/20.0kg・m)を名乗る。また、Z18E-T型は新開発のノックセンサーシステムを採用。通常のターボ付きエンジンは圧縮比を下げないとノッキングを起こしやすくなるが、Z18E-T型はノックセンサーシステムによって圧縮比を8.3の高さに保持し、その結果、スムーズな吹き上がりと優れたドライバビリティを実現した。

 

ターボモデルの追加によって販売台数に拍車がかかった910型系ブルーバードは、1982年1月になると新鮮味を維持するためのマイナーチェンジを実施する。最大の注目ポイントは、新ボディタイプと新エンジンの設定だった。ボディタイプに関しては、「4ドアセダンの実用性と2ドアハードトップのスポーティさにファッション性をプラスした」という4ドアハードトップを追加する。ピラーレスによる開放感とともに見た目のスタイリッシュさも創出した4ドアハードトップ車は、若者層を中心に大人気を博した。エンジンについては、LD20型ディーゼルにターボチャージャーを組み込んだLD20-T型ユニットを新設定したのがトピックとなる。このLD20-T型は、乗用ターボディーゼル車としては日本で初めて排気バイパスシステムを導入。低中速から最大過給し、高負荷時には排気をバイパスすることによって最大過給圧を保つように制御するこのシステムは、力強いパワーとフラットなトルク特性を実現していた。またこの時のマイナーチェンジでは、ロックアップ機構付きのオートマチックトランスミッションの設定やエレクトロニック・デジタルメーターの採用なども実施。クルマとしての魅力度は、さらに引き上がった。

 

当時まだ珍しかったデジタルメーターを採用。エクステリア同様直線基調のクリーンなデザイン

■ジュリーのCMが印象深い「ザ・スーパースター」

 

910型系ブルーバードの人気の背景のひとつには、積極的な広告展開があった。イメージキャラクターは当時、ヒット曲を連発していたジュリーこと沢田研二さん。白いタキシードやドレッシーな衣装を身にまとった沢田さんが910型系ブルーバードと並び、「ブルーバード、お前の時代だ」というキャッチフレーズを囁くシーンが、クルマ好きのみならず、音楽ファンのあいだでも大きな話題を呼ぶ。またカタログなどでは、当時の沢田さんのイメージにちなんで「ザ・スーパースター」というコピーが冠せられた。ブルーバードと沢田さんの組み合わせは非常に好評で、次期モデルのU11型系の前期型でも、沢田さんがイメージキャラクターとして起用された。

 

510型系以来の人気モデルとなり、1979年12月から1982年2月まで1600cc~2000cc小型乗用車クラスの月間販売台数首位を連続27カ月も守り続けた910型系ブルーバードは、1983年10月になるとフルモデルチェンジが実施され、7代目となるU11型系に移行する。そのU11型系では、伝統のFRからFF(フロントエンジン・フロントドライブ)機構へとレイアウトが一新された。結果的に最後のFRブルとなった910型系。最大のライバルであるトヨタ・コロナをも凌駕し、27カ月連続でトップセラーの地位に君臨した偉業は、長いブルーバード史に燦然と輝いているのである。

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大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

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