女性の過労はタイムカードでは分からない

人間関係

清水なほみ

女性の過労はタイムカードでは分からない

先日受けた「女性のヘルスケアアドバイザー養成講座」の中で、「女性の過労はタイムカードでは分からない」というお話がありました。男性の過労はタイムカードを見れば一目瞭然で、改善方法も単純だけれど、女性の過労はタイムカードを見ただけでは分からないことが多く気づかれにくい&本人も気づきにくいので注意が必要、ということです。

 

また、男女の睡眠時間の差を見てみると、明らかに40~50代で夫より妻の方が睡眠時間が短く、60代以降はまた夫婦の差がなくなるというデータが示されていました。

 

タイムカードでは分からない過労というのは、要するに「職場」以外での労働が多いということです。

 

先日「疲れやすい・だるい」を主訴に受診された更年期世代の患者様も、子どものお弁当を作るために4時起きして、パートに出かけて、家事は全部自分がやって、さらには子どものクラブ活動の世話役までしなければいけないということでした。明らかに過労による疲労です。

 

男性は、ゴルフに行くために4時起きすることはあっても、家族の食事を作るために4時起きすることはほとんどないでしょう。

 

男女平等とか、家事分担とか、イクメンとか、色々言われている割には家庭内の男女の「不平等感」は改善していないと感じることがしばしばあります。

 

オールアバウトの生活トレンド研究所が行った「20~40代の恋愛・結婚・家庭観」に関する調査の結果にも、この「家事分担の不平等感」ははっきり表れています。

 

 

結婚前は「家事は分担する」という意識を持っていた男性も、結婚後は「なんだかんだで妻がやってくれるよな」と甘えてしまう傾向にあるのではないでしょうか。そして、妻側も「言ってもやってくれない夫」に不満を感じながらも、自分がやらざるを得ない立場に立たされて、上記の女性のようにオーバーワークになってしまうという現状がはっきりと見受けられます。

 

 

そもそも「ゴミ出し」って「家事」ですか? 仕事に行くついでにゴミ袋をちょっと持ってゴミ捨て場に置いてくるだけですよね? わざわざ何かを追加でする必要もない、通りがかりにできる作業ですよね? この「ゴミ出し」が男性が「手伝う」家事にカウントされている時点で、いかに男性に家事負担が期待できないかが想像できます。

 

不平等感は家事だけでなく、育児の負担についても同じことが言えると思います。そして、それらの不平等感が結婚前・妊娠前から実感できてしまうからこそ、30代女性の約半数が「子どもはいらない」という意識を持ってしまうのだと思います。

 

だって、明らかに自分の負担ばかりが増えることを率先して行いたいとは思わないですよね。「女は産んで1人前」が古い価値観の押しつけであると分かってきた現代では、「産まない選択」をする女性がもっと増える可能性は十分にあります。そして、その選択が、「子どもが欲しくないわけではないけれどこれ以上大変になるんだったら要らないわ」という消極的選択となっている可能性は高いと思われます。2人目・3人目を「もう無理」とあきらめるのも、背景にあるものはきっと同じです。

 

女性の「目に見えない過労」を何とかしなければ、きっと「産みたい女性」は増えないでしょう。それは、「産まない選択」をする女性の責任ではありません。女性がもっと安心して、無理をせず、楽に仕事も子育てもできる環境が整えば、潜在的に「産みたい」と思っている女性が実際に「産みたい」と思う可能性はあると思います。

 

そのために意識を変えるべきなのは、行政と「妻の大変さが見えていない夫」と、そして一人で抱え込んでいる女性自身なのかもしれません。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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