「子どもを産まない」人生を想像してみる。

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尾越まり恵

「子どもを産まない」人生を想像してみる。

妊娠・出産について多く書いてきたせいか、何人かにこんなことを言われました。

 

「まりえさん、子ども願望があったんですね! バリバリ働きたい人だと思っていました」

 

ハッとしました。

 

20代の頃、確かに私は「専業主婦にはならない」と思っていました。男に頼らず、自分の力で生きていける女になるのだ!と。産休・育休が保証されている公務員でもない限り、仕事か子育てか、まだどちらかを選ばなければならない時代でした。「それならば仕事だ」と、私はそう思っていたのでした。

 

「DINKS(ディンクス)=ダブルインカムノーキッズ」(夫婦共働きで子どもなし)という言葉がはやり、「産まない方がカッコイイ」という風潮が広がっていたのは、その少し前です。

 

しかし、この2~3年で世の中の空気は急速に変わりました。子どもを出産したテレビタレントがすぐに仕事復帰し、ベビー服ブランドを立ち上げるなど、仕事も子どもも両方手に入れる人生を見せ始めた。出産がむしろキャリアアップにつながる時代。

 

国は少子化対策に力を入れ、子どもを産まない女性は何となく肩身が狭い。出産のリミットに差し掛かっている30代の心は複雑です。仕事が大事という気持ちは変わらないけれども、世の中の風潮に後押しされ、私が出産を意識し始めたのは、30歳を過ぎた頃からでしょうか。

 

 

しかし、2ヵ月前に受けたAMH(卵巣年齢)検査でリミットがかなり間近に差し迫っていることを知ることに。その結果を手にして、「私はこのまま子どもを産まないかもしれない」と思いました。その人生は、どんなものか? リミットが近づいて初めてリアルに考える、「未産」という生き方。それは「不幸」な人生だろうか?

 

安藤美姫選手が言いました。「出産を決断したのは、女性としての幸せを手にしたいと思ったから」

 

妊娠・出産は「女性の幸せ」と言われることが多い。それは、妊娠・出産が女性にしか経験できないことだからです。でも、その言葉を聞くたびに、妊娠・出産を経験していない人は、女性として不幸だと言われているような気になってしまう。

 

出産は、個人が望み努力して手に入れられる域を超えている。だから、「もたない」あるいは「もてない」女性は苦しいし、まわりは腫れ物に触るようにそのことには触れない。

 

ノンフィクション作家・衿野未矢さんの『「子供を産まない」という選択』を読みました。35歳で結婚、その後5年で離婚を経験された衿野さんは、ご自身が子どもを産まなかったことを振り返りながら、多くの「未産」女性に取材をしています。

 

例えば、こんな女性のエピソードがありました。

 

 

「働きやすい会社ベスト30」に選ばれたことのある会社で働いている46歳の独身女性。同じ職場の30代前半の後輩が出産して育児休暇をとった。育休中の後輩の分まで彼女の仕事は増えた。コンビニのおにぎりをかじりながら、夜、家で一人で仕事をする。「後輩は今頃赤ちゃんと添い寝しているんだ」と想像したら泣きたくなった。

 

濃密な育児期間を経て、キラキラした目で復帰してきた後輩。まわりはそれを祝福と賞賛の言葉で迎えた。女性は、今まで頑張ってきた12年間がむなしくなり、会社を辞めた。

 

「はっきり言って、私は後輩に嫉妬しているんです」と彼女は認めています。でも、わかっていても、その呪縛から逃れることは難しい。出産後も働く女性が増える一方で、このような苦しみを経験する女性も多くなるのではないでしょうか。

 

結婚している人、していない人。
子どもを産んでいる人、産んでいない人。
専業主婦の人、働きながら子育てをしている人。

 

女性の世界はとかく2択で語られがちです。でも、人の生き方はそんな簡単なものではありません。そこには個人のさまざまな事情や思いがあるはずです。

 

 

33歳で独身・未産の私のまわりは、子どもを産み育てる友だちが増えました。家庭をもつ幸せは、独身の私から見ると眩しいものです。だからこそ、いま、言い聞かせていることがあります。

 

「人の人生に呪いをかけるのはやめよう」

 

妬みやひがみは、自分が苦しくなるだけ。選ばなかった人生を想像しても、何も変わらない。すべてを手にしている人などいないのだから、「もっていない」ものよりも、いま自分が「もっている」ものを大事に生きていこう。

 

衿野さんは言います。「過去そのものは変えられないけれど、どう評価するかは、自分で決めればいい」10年後、20年後に、振り返って自分の人生を「幸せ」だと評価できる生き方をしたい。そう願いながら、自分が正しいと思う選択をしながら生きていけばいい。

 

私はいま、そう考えています。

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尾越まり恵

フリーランスライター。 福岡県出身。大学卒業後、結婚情報誌『ゼクシィ』の制作に携わり、2011年3月末に独立。 「女性」をテーマにしたコンテンツを取材・執筆しています。 専門は「生殖医療(不妊治療)」、「シン...

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