ロバート秋山の怪演が人々の心をとらえるのはなぜ?『小河ドラマ 織田信長』でも存在感

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出典:「」公式サイトより

2017年3月25日、異色の歴史ドラマ『小河ドラマ 織田信長』が時代劇専門チャンネルで放送された。

 

織田信長が現代の『連続時代劇 織田信長』撮影現場にタイムスリップし、「本当の自分はこんな人物ではない!」と激怒して脚本を書き換えるというストーリーは破天荒で新鮮だった。織田信長を演じた三宅弘城さんや、ドラマディレクターを演じた松井玲奈さんも物語の強烈さに負けない迫真の演技を見せていた。しかし、なにより光っていたのは“織田信長を演じるロバート秋山”を演じるロバート秋山さんの存在感。

 

 

■男性同士のローション相撲で炸裂した強烈な色気

 

特にJOYさんが演じる前田利家に「昔は俺たちけっこうヤったよなぁ……気持ちよかったな」と(※実際に信長と利家には男色説がある)ローション相撲でじゃれあうシーンで放った強烈な色気は筆者の脳髄にズドンときた。若き日の三國連太郎さんや仲代達矢さんばりの“イッちゃった感”あふれる怪演だった。

 

フリーペーパー、honto+の連載『クリエイターズ・ファイル』でデザイナー『ヨウコフチガミ』を初めとするさまざまな架空の業界人を、さも実在の人物かのように演じきり注目度急上昇中の秋山さん。キャラ良し、演技良し、アイデア良し………芸能に何かとモノ申したくて評論家をしている筆者にとって「こりゃ人気も出るよなぁ」と素直に思える数少ないタレントだ。

 

秋山さんの芸風はそもそも、けっして一般にわかりやすいものではないと思う。秋山さんがコント・トリオ「ロバート」で披露してきた『トゥトゥトゥサークル』や『地方CMソングライター』『HIROSHI RECORD』などのネタもクリエイターズ・ファイル同様“いそうでいない”キャラクターを緻密に演じるという内容だが、役柄が奇人やウザい人であることがほとんどでポップさには欠けている。要所にギャグが散りばめられているわけでもないし、見た目も格好よくないし、スピード感があるわけでもない。近年流行した一発ギャグやリズムネタなどとは正反対だ。

 

 

■ロバート秋山が焦点を当てた「ひどくいびつな人間像」

 

しかし秋山さんの“人間の愚かさや軽薄さ、醜さをクローズアップし笑いに転化させる”独特のシュールで斜め上なセンスは、お笑い通や感度の高いクリエーターにとって見逃せない珍味となる。こじらせて、すねた感情を共有し得た「秋山! お前もそう思ってたんか!」という共感が強烈な連帯感が生むのだ。まず通を味方に付け、彼らに薦めさせることで世間に理解を広げ、結果的にキングオブコント優勝(2011年)などの栄達を果たしたわけだ。

 

研ぎ澄まされ、手もお金もかけて構築しているので気付かない方が多いのだろうが、クリエイターズ・ファイルも基本的にはロバートで秋山さんが演じてきたことの延長線上にある。ヨウコフチガミにしても、天才子役『上杉みち』やカリスマ・ウェディングプランナー『揚江美子』にしても仕事人としては一流だが、その人間像はひどくいびつで不完全だ。

 

ヨウコフチガミの「(パリコレの)当日さ、頭スキンヘッドで来れるよね?」「今日の服はトータルで四万円くらいしますものね」といったセリフは単に言葉面だけでも面白いが、秋山さんが笑いの元にしているのはそんなセリフを吐くヨウコフチガミの心の闇。単に業界人あるあるのお笑いとして捉えると、クリエイターズ・ファイルの真価を見誤ることになるので用心してほしい。

 

ちなみに、秋山さんが近年演じたキャラクターの中で筆者が一番好きなのは『爆笑キャラパレード』(フジ)で登場した『白木善次郎』。プロの取り巻きとしてタレントをでかく見せるための空気づくりに自信を見せるが、同時に自分のポジションの不安定さにおびえる(ように見える)繊細な男を見事に演じ切っている。

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シンガーソングライター/音楽評論家

中将タカノリ

シンガーソングライター、音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。深い文学性と、歌謡曲、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性で独自の世界観を構築している...

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