「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」という記事を医師(私)が読んで思ったこと

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citrus たむこう38

「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」という記事を医師(私)が読んで思ったこと

またまたまたでた。暴走医療批判記事。『』。

 

やれやれ。昔はメディアが面白おかしく適当に表すことが多かったんだけど、最近は「かわったお医者さん」が、ある意味「面白おかしく」しゃべるケースがおおいんだよねー。ま、もちろん本意ではないことを編集されているのかも知れないけどね。

 

で、実際この記事内容が、まー、ひどい。個人的な経験談や印象がメイン。アカデミックな、きちんと根拠を示したような記事はありません。

 

とくに笑ったのが、「疲労困憊・明らかな睡眠不足時に風邪ひいたんで、風邪薬飲んで車運転したら眠気に襲われて事故おこしそうになった」とか、「インフルエンザの薬はインフルエンザウィルスをやっつけるわけではないので初期にしか意味が無い」「異常行動がおこったから飲ませたくない」。うーん。正直「あったりまえ」ですよ。

 

こんな話は医療関係者ではなくても、一般の皆さんでも結構わかっている話。……ていうか、そもそも「睡眠不足で疲労困憊で風邪ひいてるけど運転する人」に「眠気の出る感冒薬」は処方しちゃだめでしょう。

 

少なくとも私はそういう感冒薬を処方する必要があるなら、患者さんにそういうリスクも話してますし、そういうシチュエーションが疑われる人にはそもそも基本的には処方しません。

 

さらにインフルの話も必ず患者さんにお話しするし、「10代までの小児にはかっちり必要性が無ければなるべく処方すべきでない」というのは医者ではだれでも知ってる話。

 

そもそも薬のせいではなくても「インフルエンザでの高熱での異常行動」もありえるし、「インフルエンザ脳症という病気での異常行動」もありえるし、それは医師が個々のケースに従って判断して、責任をもって出すか出さないか判断すべき。ざっくりなんとなく出したくないとか出すとか決めるのではないと思います。

 

 

「この患者さんにはこうこうこうで、内服した方が良いから処方」。逆に、「この患者さんはこうこうこうで内服は必要ない、もしくは危険だから処方しない」。きちんと考えないと、特に「自分がこんな目にあったからこの薬は危険」なんてもってのほか、さらに「自分がこんなひどい目にあったから患者さんに出さない」なんてのは論外ですよ。

 

薬には絶対功罪両方があります。誰にでも有効な薬なんてないし、誰にでも安全な薬もない。世にもまれな副作用だって、たまたま世界にひとりだけ目の前の患者さんにおこるかもしれない。逆もまた然りで、思いのほか有効でしっかり治るかもしれない。

 

もちろんその判断の土台になるのはエビデンスやガイドラインですが、そのうえで目の前の患者さん一人一人を特別な目でみて、個々のケースとしてそれぞれ考えなければなりませんね。

 

ちなみに何の説明もなく、いっつも同じ薬が出ているような医者はあやしいですね。抗生剤一つをとっても様々な性質や様々な力を持っているもので、その時々の病状によっては異なってしかるべきです。

 

少なくとも「よくなってないのにいつも同じ薬を続ける医師」というのは、処方に関しての引き出しが少ない(知識経験が少ない)のかもしれませんので注意が必要です。

 

ぜひ今度医療機関に受診される際に、処方について医者側から説明が無いようだったら、「あ、ちょっと待ってください、なんでこの薬が必要なんですかね?」と聞いてみてください。怪訝な顔をされるかもしれませんが、そもそも怪訝な顔してる医者が変だし、当然の権利です。もしちゃんと説明してくれなかったり、機嫌が悪くなったりしたらそのお医者さんとは長い付き合いはしない方が良いかと思います。

 

 

ちなみに最後にこの記事の締めのところで、

 

多くの医者たちが、自分では飲まないクスリを患者に処方する理由はクスリを出せば儲かるということのほかに、家族や患者が「出してくれ」と言うからだ。

 

(中略)

 

「本当はクスリを飲まないほうがいい場合でも、何も出さなかったら患者さんに文句を言われます。日本は医療費が安いですから、患者さんのほうも『せっかく病院に来たのにクスリをもらわなきゃ損』という意識があるようにも思います。悪い評判が立つのも嫌なので、仕方なく出していることが多いですね」

 

という医者の話が書いてありますが、私からしたら悪いけど意味不明ですね。必要ない薬を処方したら、当然効かないし、へたしたら副作用がでたりもする。そりゃむしろ「害」ですよね。

 

必要ない薬を希望されたから処方する、これだけは絶対にしちゃいけないと思います。

 

やっぱり皆さん、外来の時に先生に必ず聞いてみてください。「先生これはなんの薬なんですか?」って。

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たむこう38

たむこう38

 ふつうの医者です、おっさんです。自分的にはこつこつ一心不乱に日々修行として医療活動をしてきましたが、なんの肩書きもありません。今の今でも真剣に医療に取り組んではいますが、単なる街医者ってやつです。全然えらくともなんともありません。  また、そもそも「医者になっちゃったー」ではなく、「出来が悪いくせに医師になりたくてしょうがなかった奴が必死にもがいてもがいてここまでやっと来た」って感じの人間です。  なんのセンスもありませんが、むかしっから文章書くのは大好きで、何かを評論するのも大好きです。いつか評論家なりコラムニストなりチャンスがあればやってみたいなー、みたいには思っています。  

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