親子で思い出作り!? 変わるランドセル選びの最前線

ライフスタイル

村井麻紀

 

6月がランドセル選びの最終選定期。これが2017年度(来春入学)のランドセル商戦と聞けば、そんなに早いのか!? と驚く人も多いのでしょうか。しかしながら、人気のランドセルは夏前には完売してしまうといった情報が昨年のうちからまことしやかに囁かれており、人より先に情報を得てよいものを手にしたいという思いで、筆者もまた年長児の親としてこの戦線に飛び込むこととなりました。

 

今どきのランドセル選びとして最初にやること、それは資料請求です。百貨店や大型ショッピングセンターで商品が並ぶよりも前、春先にしておくべきは各社のカタログ申し込み。実際の商品をいち早く見るため、事前展示会にいつ行くべきかなどのスケジュールをチェックするには、資料請求は欠かせない段取りとなります。各社から送られてくるカタログには、商品情報、ブランドを語るストーリーブック、使われる革素材の見本、開発現場の紹介DVDまで封入されているところもあり、情報満載で趣向を凝らしたものになっています。こういった資料を見てしまうと、早い時期からお目当てのランドセルが何となく絞られていきます。さらには、年間を通じてSNSで情報発信を行っているブランドもあるのだから、年々商戦が早まっていくのも仕方がないことでしょう。

 

ランドセル選びのここ数年の変化として、鞄専門店の職人が仕上げた本格的なランドセルが注目され始めていることがあります。素材となる革選びに強いこだわりを持っていることが共通点、下町や地方で職人の工房を持つことから「工房系ランドセル」とも言われています。大量生産されないことで早めの注文を受け付け、4月頃から各地で事前展示会や出張店舗を設けるようにもなっています。

 

かつては秋以降だった購入時期が、お盆を中心とした夏休みに前倒しされ、今やGWから夏前が最盛期となっている理由に、この工房系ランドセルの人気が関係しているともいえるでしょう。今年も既に受付開始を迎えたその日に受注体制を上回る注文が殺到、炎上してしまったところも。奈良の工房でつくる鞄工房山本では、店舗の混雑を回避するために事前案内したWEB受付にアクセスが集中、サーバーが繋がりにくい中で大部分が完売となり、購入を希望していた多くの人から不安や怒りの声が寄せられ、ニュースにもなりました。

 

工房系ランドセルは、愛用者の声として実際に子供に使わせて良さを実感する声が口コミで伝わり、全国的な人気に広がりましたが、その魅力の根源にはエモーショナルさ(=情緒的な要素)があると感じます。例えば、ニトリやイオンのランドセル。色やデザインが豊富にあるし、何より安い。いいものをお得に買えたと満足するのも価値観ですが、ニトリやイオンが好きだから選んだという理由はないでしょう。一方、工房系ランドセルには長年のベテラン職人による手仕事、つくり手の想いや温もりが感じられ、そこでつくられるランドセルだけが持つ魅力に惚れ込んでしまっていることが大きくあります。たかがランドセルではあるけれど、ランドセルを選ぶというのは人生でそう何度もない経験。だからこそ、色やデザインといった表面的ではない部分でこだわりを求める志向が強くなっているのです。使い込むほどに味わいを増すようなものとして、毎日の暮らしの中で上質で本格的なものを求める風潮がランドセル選びにもあるのでしょう。

 

 

■ランドセル選び、そのものがストーリー

 

梅雨晴れの週末、工房系ランドセルの人気をこの目で確かめたくて、電車を乗り継いで訪れたのは東京都足立区にある土屋鞄製造所の本店。新作の事前展示がスタートしたばかりとあって店内は入店規制され、家族連れが行列するほどの盛況ぶり。店員の説明によると混雑する日には専用駐車場に車を停めるまでに1時間、入店までに1時間、店内で商品を選んで購入するまでに1時間と、長い人で合計3時間近くかかるとのこと。こんなに待たされるのに、訪れる人は後を絶たず、何だか楽しそうに待っているのは、お目当てのランドセルをついに見に来たという高揚感なのでしょうか。革の匂いがするこぎれいな店内には、真新しい沢山のランドセルが展示され、奥には職人達の仕事場である工房を見学できる一角がありました。素材となる革やパーツ、工業ミシン、金槌の叩くような音が聞こえる、モノづくりの現場。それを見せたくて子供を呼ぶ親の声、職人たちの様子を熱心に見入る父親達の姿も印象的でした。

 

読者の皆さんはランドセルを買ってもらった時の思い出を持っているでしょうか? 大事に使いなさい! と言われたことだけを覚えている方も多いのでは……。かつては入学祝に贈られるものとして、親や祖父母から一方的に買い与えられた経験を持つ世代が大人となった今、ランドセルを買う前後のストーリーまで楽しむようになりました。

 

ランドセル事前展示会では、店の看板の前で記念撮影をしてから帰る姿が多くみられましたが、家族でランドセルのことを話しながら、誰がどんな風に作っているのかを知り、一緒に選んだという経験があれば、物に対する考え方や大事に使いたいという気持ちにも影響するのではないでしょうか。ある意味、普段身に着けているようなファストファッションとは対極にある、モノとしての価値を伝える気持ちがそこにあるのかもしれません。ランドセルを買った後も、工房系ランドセルでは「職人体験」のワークショップを開催したり、ランドセルと一緒の写真コンテストを開催したりとイベントが続きます。買うことが目的ではなく、子供と一緒にプロセスを楽しみ、家族の思い出作りとするのが今どきの子育て世代のランドセル選びなのです。

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村井麻紀

1976年生まれ。東京都下出身・武蔵野市在住。 広告代理店での勤務を経て、制作会社へ。男女二児の働くママとしてフルタイム勤務で奮闘中。 明日香医院での出産、育休切りによる転職、数々の保育園に子供を通わ...

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