定時帰宅、長期休暇…、それでもヨーロッパが豊かな理由

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定時帰宅、長期休暇…、それでもヨーロッパが豊かな理由

2020年の東京五輪開催年を目標に、文部科学省が日本の活性化を目指して提唱した「夢ビジョン2020」。ここに週休三日の導入案が盛り込まれたことから、熱い議論が交わされていると聞きました。「たとえ残業が増え、手取りが減っても週休三日が良い」と歓迎する声がある一方、「お給料が減らされる上に、無給残業と休日出勤が増えるだけ」との冷めた意見もあるようです。

 

私も日本では過酷な長時間残業の経験があるので、休みを渇望する気持ちはよく理解できます。しかし現状では、ノー残業や週休三日など、正社員である限りは夢のまた夢。そんな日本で、果たして労働時間を減らせる方法はあるのでしょうか? 私が転職を機に移住したヨーロッパの例を見ながら、考えていきたいと思います。

 

■残業が少なく、休暇の長い欧州の働き方
既にご存知の方も多いでしょうが、ヨーロッパでの年間休暇はおおよそ5~7週間。夏季には通常で2~3週間、長いと1~2か月ものバカンスを取ることは珍しくありません。また典型的なオフィスワーカーの勤務スタイルは、月~木は早朝出社して、定時に帰宅できるよう猛然と働くというもの。金曜ともなると、午後は週末モードに突入し、17時まで会社に残っていることは稀だと言えます。

 

このような働き方となる原因には、プライベート重視の人生観に加え、年俸制が主流なことから定時外労働は無給であるのみならず、「仕事効率が悪く、無能な人間のすること」とのネガティブな印象を持たれていることが挙げられます。

 

さらに、ある程度まとまった休みはリフレッシュのために不可欠であり、当然取るべき権利だという意識もあります。定時帰宅や休暇取得にもいちいち罪悪感を感じ、滅私奉公が美徳とされる日本から見ると、俄かには信じられないような考え方です。

 

■ワークシェアリングで休日の増えるヨーロッパ
そんなヨーロッパでは、オランダをはじめ、ドイツ、フランスなど一部の国で、ワークシェアリングという時短労働が広がっています。

 

これは失業者の増加を防ぐため、一人当たりの労働時間を減らすことで、仕事を多くの人で分かち合う方法。雇用拡大の他にも、余暇の増加による消費の活性化や自己研鑽の余地、育児・介護時間の捻出など、多岐にわたる効果があるとされています。もちろん週休3~4日も実現しやすくなるので、ゆったりとした人生を送るにはもってこいのシステムでしょう。

 

 

■パートタイムも正社員待遇のオーストリア
現在私の住むオーストリアでは、サービス業や製造業などを筆頭に、様々な産業にてパートタイム労働に従事する人が多くいます。学業と仕事の両立や子育て、プライベートの充実、複数の職の掛け持ちなど、多様な理由から利用されていますが、パートタイマーもれっきとした正社員待遇であるところは、日本も見習うべきポイントでしょう。

 

加えてオーストリアは女性の社会進出が発達しているため、カップルでも女性の方が地位・収入・年齢が高いこともしばしば。そのような例では男性側が育児休暇を取得したり、週休3~4日で余裕を持って働いたりしています。このように男女の役割分担にさほど縛られていない点も、パートタイム制度が社会に浸透している一因かも知れません。

 

またオーストリアではいまだ教会勢力が支配的であり、安息日とされる日曜は、飲食店等を除いて労働が厳禁。残業に対する法律も厳しく、遵守しない会社には雇用主“個人”に対する重い罰金刑が。実際数年前には、従業員に違法な超過勤務をさせたとして、ある金融機関の経営者が“個人的に”15万ユーロ(約2000万円)の罰金支払いを命じられる事件が起こっています。

 

■長時間労働の日本より生産性の良いヨーロッパ
しかし、そんな労働時間が日本より圧倒的に少ないヨーロッパの国々が、一人当たりのGDPで日本よりずっと上位にランクインされているのはかなり皮肉なこと。2014年度の一人当たりのGDP(OECD統計)は先述のオランダが9位、オーストリアが次点の10位で、20位以内はほぼヨーロッパの国々が独占。対する日本は20位で、あれほどのんびりしたワーキングスタイルで名高いイタリア(21位)とまさかの同程度。ゆったりと働いて人生を謳歌できる国々が、ろくにプライベートも満喫できない日本より生産性で優っているのは衝撃的事実です。

 

もちろん一人当たりのGDPには総人口や為替レート、就労人口の多寡など、様々な要因が絡むので単純比較はできないでしょうが、やはり日本の長時間労働が生産効率をおとしめ、国民の疲弊とストレス社会の一因となっているは否めないのでは。

 

現状のまま導入しても、有名無実となりかねない週休三日制。これを実現するには、ヨーロッパのように女性の社会進出やワークシェアリング、正社員待遇のパートタイマー制度を整えたり、オーストリアに見られる、不当な長時間労働に対する事業主個人への重い罰金刑制定などを併せて進めることが課題となるでしょう。働きづめの日本人が心身ともに燃え尽きてしまう前に、何とか良い方法が模索できることを心から願います。

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ライジンガー 真樹

All About「オーストリア」ガイド、ダイアモンド社 地球の歩き方「ウィーン特派員」。 ウィーン移住をきっかけに、オーストリアの歴史・文化・グルメなどの魅力を日本の人々にも伝えたいと願い、CA乗務の傍ら旅行...

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