バル&横丁ブームで町の評価が変わる!? 東京暮らし、人気は西から中心部へ!

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『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』(速水健朗/朝日新聞出版)

地方の人間には憧れの地である大都市・東京。住むならどこがいいだろう? 私は中央線沿いが一番いいと思っていた。理由は単純で、最初に勤めた会社の寮がそこにあり一時期住んだことがあるからだ。慣れた場所である上に、仕事場となる都心にも出やすい。新宿や渋谷で遊ぶにも便利な場所だと考えていた。

 

「西高東低」は気象予報の用語で気圧配置を表す言葉だが、東京の土地の人気を表すこともある。人気があるのは西側で、東側より家賃相場が高いという意味だ。ところが、『』(速水健朗/朝日新聞出版)によると、この定説が最近変化しているらしい。

 

そもそも、なぜ「西高東低」という傾向が生まれたのか。その歴史は古く、大正時代前後まで遡るそうだ。1923年の関東大震災の復興以降、川や運河の多い東側は水上交通が発達したのに対し、西側は中央線や西武線などの鉄道が発達。このため、東京の郊外化が西側に向かって広がった。それとともに、郊外に移住してきたのが「新中間階級」。一方、東側に住んでいたのは、元々地方から東京に仕事を求めてやってきた流入者たちで、日雇い労働などに従事する「都市下層民」だった。が、第一次世界大戦を機に彼らは工場労働者となって東京下町の産業化を支える「労働者階級」になる。この社会階層の違いが東京の「西高東低」の原因と著者は考察する。なるほど、そんな歴史があるとは知らなかったが、土地柄としても東側より西側になんとなくおしゃれでトレンディなイメージを持っていたことに気付いた。

 

この「西高東低」の価値観が今も根強く残っていることを著者も認める。が、実際の状況としては、現在西側よりも東側の人口が増えつつあるようだ。

 

●東京都23区人口増減率ランキング
 1位 千代田区 5.1%
 2位 中央区 3.9%
 3位 港区 2.4%
 4位 墨田区 1.5%
 4位 文京区 1.5%

 

正確には中心部及びそこに近い範囲の一部東側で人口が増えているという結果。このことから現在大都市部への人口の一極集中が進行していることを著者は示唆する。ひと昔前には東京の中心部の人口が減少する「ドーナツ化現象」が散々取り沙汰されたが、真逆のことが起こっているわけだ。それはいったいなぜなのか。

 

本書の分析によると、理由のひとつは「食住近接」。スペインの小規模な家庭的居酒屋「バル」を模した店が次々とオープンするバルブームや、小さな路地に所狭しと飲食店が並ぶ横丁ブームに代表される食文化にあるという。わざわざ遠くまで飲みに行かなくても、生活圏の中で立ち寄れて、周囲の人とも交流できる場所を人々が求めているというのだ。そうした生活と密着した飲食店をもつ町が八丁堀や人形町、北千住などに形成されているわけである。確かに、平均初婚年齢が上がっている現在、地方出身の独身者にとって誰もいない家に帰る前にふらりと立ち寄って軽く楽しく飲める場所があるのはありがたいかもしれない。

 

もうひとつの理由が、「職住近接」。満員電車や長時間通勤による通勤ストレスの軽減を求める人々が増えた結果である。都内にあるオフィスから2駅以内に住む社員に家賃補助を出すITベンチャー企業も増えているそうだ。IT企業こそ会社に行かなくてもネットを介して自宅で仕事ができるイメージだが、アイデアを生み出すこと、またコミュニケーションの円滑化のために、顔を合わせて意見交換することに改めて意義が見出されている。

 

中心部ともなれば、周辺部に比べて家賃はぐっと高くなる。そのコストに見合うほど充実した生活を送れるならば、人生を昇華させうるならば、ぜひとも住みたい。が、物価の低い地方の人間が移住するには先立つものがないなぁ……。まずはやっぱり住み慣れた西側に住んで地道に稼ぎ、徐々に中心部に攻め込むか。

 

文=林らいみ

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