ウェブライターよ。なぜ君たちはこれほど文章がヘタなのか?

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ウェブライターよ。なぜ君たちはこれほど文章がヘタなのか?

「斜陽」と言われて久しい出版業界に身を置く私たち同業者の集まりで、もはや挨拶代わりとして、かならず話題にあがるのが不景気ネタである。

 

「またギャラを叩かれた」だの「校了で終電を逃してもタクシー代が出ない」だの「カメラマンを付けてくれないからライターみずからデジカメで撮影して取材相手に嫌な顔をされた」だの「ロケ弁が叙々苑のカルビ弁当からコンビニ弁当になった」だの……、聞けば聞くほど気分がダークになるネタばかりだ。

 

で、先日もまた、私と紙媒体メインのライター3人とウェブ制作の編集者1人というメンバーで飲みに行って、例に漏れずライター衆が持ち寄った不景気ネタが炸裂し、それに対して一番年長である私が「僕はもう、自分が死ぬまで出版界が持ちこたえてくれたらラッキーくらいの逃げ切り体制に入っているから」と枯れたアダルトを気取った発言で煙に巻く……といった流れで、場はサッドな空気でじわっと盛り上がっていたのだけれど、そこで唐突にウェブ編集者の語った持論が、なかなか興味深かったので、少々長くなるが紹介しよう。

 

「皆さん、そんなにヒマなんですか(ウェブ関係者ならではの無神経な一言w)? じゃあ今度、ウチの仕事やってくださいよー。今、ウチの業界って、マジでちゃんと文章の書けるプロのライターさんを探してるんですよ。ボクも最初はウェブサイトってビジュアルが勝負だと思ってたんですよ。可読性が高くて目立つデザインだとか……。でもね、そういうのって、ネットの世界じゃ限界があるんですよ。写真だって、いくら大御所に発注してもパソコンやスマホの画面だと紙みたいにキレイに載せられないじゃないじゃないですか。極論、写真なんてイマドキはプロが撮ってもスマホで素人が撮っても、ほとんど見分けがつかないし……。つまりですね、最終的にウェブサイトのクオリティを決めるのは“テキスト”なんですよ。ネット社会がメインを占めるこれからは“テキストのプロ”の時代なんですよ!」

 

 

この飲み会では一番若手だったウェブ編集者の熱いアジテーション……。正直、最初は年輩に対する気配り、意地悪い見方をすれば「ただのヨイショだろ?」と我々は勘ぐっていた。しかし、その彼が続ける話によれば、たとえば上場企業だと自社をアピールするウェブサイトのテキストを作成する有能なプロフェッショナルに対しては、ン十万円の報酬を支払う用意があるという。

 

テキストのプロ──なんと心地良い響きのするフレーズであることか。私を含む紙組4人の涙腺が感動のあまりゆるんだのは言うまでもない。

 

たしかに、新聞や週刊誌から下りてきているウェブニュースあたりを除けば、ネット上に晒されている原稿は、紙媒体のそれと比べ、圧倒的に精度の低いものが多い。

 

・句読点の打ち方のセンスの無さ
・無駄な漢字の使いすぎ
・副詞や接続詞や単語や語尾などの安直なダブり
・「きれい」だの「かわいい」だのの曖昧な形容詞の乱発
・意味のない改行や強調文字
・すぐに修正できるゆえの不注意な誤字

 

……諸々、文脈のつながりだとかリズム感だとか見た目(文章と見た目は一般的には無関係だと思われがちだが、一つのコラムや書籍の見開きを瞬間的に眺めたとき、“見た目”の善し悪しは確実にある)をダメにする要素は挙げればきりがないが、やはり一番の原因は、

 

「ウェブでしか書いてない人は、決められた文字数のなかで原稿をまとめる訓練をしていない」

 

これに尽きるのではないか。

 

 

私たち紙媒体出身のライターが、たとえば15W(文字)×40L(行)という縦も横もガチガチに固められ、誤差はマイナス3文字ほどしか許されないシビアな制限を課せられるのに対し、ウェブの原稿は基本、書き放題だ。

 

そして、書き放題であるがために書きたいことを捨てられない。読者に伝えたい想いをすべて書き並べてしまい、結果「このヒトは結局なにが言いたいのか」がよくわからないままの、シマりのない原稿が出来上がってしまうわけである。

 

紙媒体で構造不況に悩む文筆業者たちよ、もう心配はいらない。あなたたちの高い能力はネット上でも然るべき評価をされはじめている。あと、ウェブを仕切るクライアント殿たちよ、私たちは只今大バーゲンセールのお買い得期間真っ最中だ。早く買っとかないと後悔しまっせ!?

 

そういえば、このNews Digでも、紙媒体でバリバリやってきた石原壮一郎さんなんかの原稿は、群を抜いて読みやすく、しかも面白い。

 

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ネットニュースパトローラー

山田ゴメス

1962年大阪府生まれ B型。 ネットニュースパトローラー(※citrus限定肩書き。たまにスポーツ新聞や週刊誌も。略して「NNP」)。 関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッショ...

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