所沢の育休退園問題は母親へのバッシングばかり。退園させられる子どもの気持ちはどうなんだ?

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平田志帆

所沢の育休退園問題は母親へのバッシングばかり。退園させられる子どもの気持ちはどうなんだ?

所沢市の育休退園問題は、市の主張が認められるかたちとなりました。仕事等で家庭で保育できない子どもを預かる福祉施設という性格を考えれば、待機児童問題を放置していた所沢市の怠慢が根本的問題なのだけれど、仕方のない結果かなとは思います。

 

でもここでは福祉施設うんぬんということは置いておいて、仕事をしていない、もしくは休業中の人が子どもを預けることについて考えたいと思います。

 

こんなことを取り上げたのは、ネットの声に劇的な違和感を覚えたからです。だって母親へのバッシングばかりで、退園させられる子どもの気持ちに寄り添った声がまったくないんだもん。自分の子どもは自分で育てろだの、専業主婦はやってるんだだの、私は子育てが楽しいから預ける人の気持ちが理解できないだの。子どもが不在で、どんどん話が発展していく。たまには、こんな声があってもいいと思います。

 

急に退園させられて、ママと一緒にいられると思ったら乳児のお世話にかかりきりで全然かまってもらえない子どもの気持ちはどうなんだろう? ママの気を引こうとして、赤ちゃん返りをすればするほどママの機嫌が悪くなるのを肌で感じるのはつらいんじゃないだろうか? 日中ママにかまってもらえないなら、行きなれた保育園で遊んだほうが、楽しいんじゃないか?

 

私は子どもを二人以上を育てる大変さは未経験ですが、乳児期の夜泣きやイヤイヤ期は経験済みです。この二つが同時に起きたとしたら、優しい気持ちで子どもに向き合える自信がありません。二人以上育てている人を、心の底から尊敬しています。

 

「専業主婦はちゃんと子育てをしている」と言う人がいるけど、楽しくラクラクと子育てをしている専業主婦の名前を最低でも10人あげられるのでしょうか? はたから見れば幸せそうでも、多くの人が体力も気力も限界ギリギリのところで綱渡り状態のはず。

 

そんなときに何かの拍子で糸が切れて、母子心中とか子殺しとかに発展する悲劇が後を絶たないんじゃないでしょうか。そういう事件が起きると「子どもを気軽に預けられる場所があれば、母親の負担が減る」なんて声が出るのに、今回のような判決が出たら「母親なんだから子育てくらいしろ」。手のひらパーンってひっくり返すわけですよ。

 

 

「自分は保育園なんか頼らなくても子育てをしてきたから母親はそうするべき」みたいなことを言う人もいるけど、人によって得手不得手があるのは当たり前。一日中子どもといるのが何より楽しい人もいれば、息が詰まる人もいる。後者のような人の場合、子育てだけをすることが大きなストレスになります。

 

そんなイライラした状態で育てられたら、それこそ子どもがかわいそう。それに「子どものせいで何もできない」というネガティブな気持ちは、黙っていても子どもに伝わるはず。世界的に見て日本人の若者の自己肯定感が低いのは、母親ひとりに育児責任を負わせることと無関係ではないと私は考えています。

 

参考:今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~

 

結局、誰も子どものことなんか考えていない。聖母や賢母の枠からはみ出た母親を叩いて、うすっぺらい正義感にひたっているだけ。

 

子どものことを考えたら、別の声やアイディアが出てくるはずです。その一例が、ある認可外保育園のとりくみ。ここではone more baby サポートという名称で、上の子どもを預かるサービスを実施しています。利用した方の声を一部紹介します。

 

「下の子が生まれてから上の子を外遊びに連れていけなくなり、週に3回利用しています。特に夏と冬は乳児を連れて外に出るのは大変なのでありがたかったです。長女も外でのびのびと遊べ、満足そうです」

 

「つわりがひどくて寝たきり状態になり、息子を入園させました。私はゆっくり体を休められ、息子は先生やお友達と楽しく過ごせて本当に助かりました」

 

この認可外保育園の園長は、5人のお子さんがいる女性です。経験者だからこそ、母子の気持ちによりそったサービスが提供できるのでしょう。「子どもはお母さんと一緒にいたいはずだ」とか、ファンタジーな発言をする所沢市長とは大違い。子育ては、子どもと一緒にいるだけでできるもんじゃないんですよ。

 

必要なのは、専業主婦とかワーキングマザーとかは関係なく、子育てに困ったときにすぐに利用できる公的サポートです。

 

 

さきほどあげた保育園は認可外のためかなり高額で、誰もが気軽に利用できるものではありません。そこで解決のヒントになりそうなのが、先日目にしたこの記事です。

 

保育園義務教育化を提唱する古市憲寿氏「国が悪者になるべき」

 

「(前略)母親のストレスが減ります。育児はストレスがたまりますから。この国では、子供を第三者に預けて母親が働くことへの抵抗感がまだまだ強い。それが義務教育になれば、『国が言うから仕方がなく預けている』といういいわけを誰もが使えるようになるんです。国が悪者になって、母親のストレスをなくしてあげるべきです」

 

実現できるかどうかはさておき、「保育園義務教育化」「国が悪者になる」という斬新な発想に心を奪われました。実際に著書を読んでみようと思います。

 

保育園義務教育化(古市憲寿・小学館)

 

今回の所沢市の育休退園問題は、とにかくオトナの都合で語られてばかりという印象でした。

 

子育てとは、文字通り子どもを育てること。母親が髪の毛を振り乱して頑張ることが目的じゃありません。

 

子ども不在で語られる、「○○してこそ母親」という精神論。これこそが、子育てをしにくくしている原因ではないかと思います。

オーサーの個人サイト

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平田志帆

1978年生まれ。一児の母。正社員、派遣社員、契約社員、パート、日雇いアルバイト、フリーランス、独身貴族、専業主婦、DINKs、産休・育休、ワーキングマザーと、あらゆる働き方と生き方を経験。 33歳の時、勤めてい...

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