「将来社長に」という新入社員が過去最低なのは、世代特有の問題でないと思うこと

ビジネス

 

日本生産性本部が、今年の新入社員を対象に実施した調査によると、目指すポストを「社長」と答えたのは10.8%と過去最低だったということです。また、働き方の設問では「人並みで十分」が58.3%で過去最高、「人並み以上」は34.2%で、両者の差は24.1ポイント。これまで最大差だったバブル期の91年度の23.6ポイントを上回っているそうです。調査担当者は「売り手市場を反映して、人より前に出る意識が低い。ほどほどに働き、重い責任を負いたくない傾向にある」と分析しています。

 

ただ、これを持ってやる気がないなどと見るのは、私は誤りだと思っていて、例えば、「仕事中心か、私生活中心か」という質問において、「私生活」と回答した人の割合はバブル期に比べて激減しているそうです。これを分析したところによれば、「せめて人並みの生活をするために一生懸命働く」という切実さの結果ではないかとされています。バブル期とは人並みのレベルが違うのではないかということでした。

 

こういうことから見えるのは、世の中に「安定」という部分が、あまりにも少なくなっているのではないかということです。これは新入社員に限らず、すべての世代で共通することです。

 

 

■不安定な時代に“安定”を求めるのはどの世代も同じ

 

例えば、自身での起業を考えたとして、うまくいくかいかないかがイチかバチかの勝負で起業するような人は、少なくとも私は出会ったことがありません。自分なりの計画と見通しのもとに、うまくいくシナリオを考えて事業を組み立てます。どこかに安定が見込める部分を持ちながら事業を考えますから、その安定部分がまったくなかったとしたら、起業という選択はしづらいでしょう。

 

また、就職した会社で出世した上で社長になるということも、可能性としてはあるでしょうが、経営の舵取りというのは、基本的にはこれから起こることを予測する仕事の連続です。未知のことを予測しながら経営判断を重ねていくということです。

 

個人の生活やプライベートでも、先が見えないことには変わりありませんが、会社の経営は多くの人を巻き込んでいて、その人たちの人生もかかっています。その責任の重さに躊躇する気持ちがあるのは当然でしょう。

 

これは、同じく新入社員に対する別の調査ですが、例えば「年功序列と成果主義のどちらを望むか」という問いには、「成果主義が良い」と答える人が半数を少し超えてはいるものの、年々「年功序列が良い」の側にシフトしているそうです。「終身雇用が良い」という人も、7割を大きく超えているそうです。

 

やはり、今の世相からは「安定」ということが心理面での優先度が高く、なぜ「安定」かといえば、現状がそうとは言えないからでしょう、このような気持ちは、世代を問わず共通のことではないでしょうか。

 

実は、この「新入社員が社長を目指さない」という調査結果を見て、「若いくせにチャレンジ精神が足りない」「上昇志向がない」「横並び精神がダメだ」などと批判する年長者が大勢いました。

 

でも、人並みを維持することにさえ苦労していて、先行きの見通しも不透明な中では、当面は今の安定を確保するために仕事を優先せざるを得ず、そういう状況の人に対して「チャレンジ」や「上昇志向」を求めるのは、私は少し無理な要求だと感じてしまいます。同じような境遇にあれば、そこで安定を求めるのは、どんな世代でも同じではないかと思います。

 

今の世の中を鏡のように映すのが若い世代の心理だとしたら、「社長になりたい」という新入社員が少ない原因と責任は、その上の世代にあると思います。

 

「社長になりたい」という若者を増やしたいと思うのであれば、それは若者たちだけの問題ではなく、周りが作る環境要因も大きいはずです。こういう結果を、ただの若者批判に使ってはいけないと思います。

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小笠原隆夫

IT業界出身で現場のシステムエンジニアの経験も持つ人事コンサルタントです。 人事課題を抱え、社内ノウハウだけでは不足してその解決が難しい企業、100名以下から1000名超の企業まで幅広く、人事制度構築、...

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