アウディA8の自動運転「レベル3」があまり話題にならない理由

車・交通

 

今年7月。ドイツの自動車メーカー・アウディの最高級セダンA8の新型が、量産車で初めて自動運転のレベル3を実現したという発表があった。今の自動車業界の最大の関心事のひとつが自動運転であることは間違いない。その中でスバルや日産など多くのメーカーがレベル2に留まっているところ、アウディはひと足先にレベル3を達成したというアナウンスだった。

 

現在自動運転のレベル分けは、米国のSAEという非営利団体が作成したレベル0〜5の6段階が多く使われている。レベル0が完全手動、レベル5が完全自動で、その間に4つの段階を制定している。

 

それによると自動運転レベル2は、運転の一部をAI(人工知能)が行うものの、人間が残りの運転を行い、周辺の環境を常に監視しなければいけないとある。一方のレベル3は、運転は基本的にAI任せになり、AIが要請した場合にいつでも人間が運転を代われる準備をしておくとしている。

 

つまりレベル2がレベル3になると、運転主体が人間からAIに移行する。これは大きなステップアップだ。だからアウディの決断は英断として注目されるはずと多くの人が予想した。ところがそれから1か月。新型A8のレベル3はあまり話題になっていない。なぜか。

 

 

■せっかくの自動運転技術も“宝の持ち腐れ”になる?

 

今回アウディが新型A8に搭載したレベル3は、中央分離帯のある高速道路で車速60km/h以下の場合限定となっているからだ。つまり渋滞している高速道路でなければ機能を実行できないという、ピンポイントな内容だった。それならスバルの「アイサイト」でも同様のことをやってのけることができるのでは?と思った人が多かったようで、それが上記の評価につながっているようだ。

 

アイサイトはレベル2だから運転主体は人間ということになっているけれど、最新型はかなり信頼できるレベルに仕上がっているし、100km/hに速度を上げても同等の機能を発揮する。一般道でも車線がしっかり認識できる場所なら機能する。場面によってはアウディのレベル3を上回る性能を発揮するのでは?という意見には、筆者も同意したくなる。

 

しかもアウディによれば、新型A8が発売されるのは2018年になってからのこと。でもそのときに全世界の路上でレベル3の自動運転機能を堪能できるわけではない。現状でレベル3の合法化を進めているのはドイツなどごく一部であり、多くの国で宝の持ち腐れになる可能性が高いのだ。

 

現行のレベル2でも、運転支援システムという表現に留めているメーカーと、自動運転という言葉を使っているメーカーがある。それと同じで、アウディは性能面でも状況面でも注釈付きという部分で突っ込まれるのは承知の上で、なんとしても量産車世界初のレベル3を謳いたかったのだろう。

 

そんな中で、レベル3の基準自体に問題があると考える専門家がいるという。AIが人間に運転を代行してほしいと要請したとき、人間がすぐに運転を代わってくれるかという点を問題視しているようだ。

 

現状でも運転中にスマートフォンのゲームをしていて死亡事故を起こしたという事例がいくつもある。同じような状況が起こらないとは限らない。そもそも基本はAIに任せつつAIが要請した際には人間が運転するという内容はファジーだし、AIの運転技術が完璧ではないことを示しているようなものだ。

 

一部の技術者はこの状況を懸念して、レベル2の範囲を広げる代わりにレベル3はスキップし、完全自動のレベル4に直接到達することを考えているという。つまりレベル4の技術水準を達成するまで人間が運転し、AIに任せても問題がないという結論が出たときに初めて移行するという手法だ。たしかにこれならファジーな部分はかなり減る。

 

レベル3相当の技術を他に先駆けて量産化することは、メーカーの立場から見れば大事かもしれない。しかしユーザーの立場から見れば、完全自動でない限り運転免許は必要だし飲酒運転は禁止のまま。つまり手動とほぼ同じだ。メーカーの論理よりユーザーの立場を重視した自動運転開発を望みたい。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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