「前向きなシングルマザーでいなければ」「夫に愛されていなくて、感謝もされない」…『まじめに生きるって損ですか?』に涙止まらず

人間関係

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『まじめに生きるって損ですか?』(雨宮まみ:著、HELMETUNDERGROUND & RIKO:イラスト/ポット出版)

 

ヤバい、リアルに泣けてきた。

 

「こじらせ女子」という言葉をこの世に送り出し、浸透させた雨宮まみさんの『』(雨宮まみ:著、HELMETUNDERGROUND & RIKO:イラスト/ポット出版)は、涙なくして読むことが難しい。

 

「恋愛×占い」がテーマのサイト「ココロニプロロ」での連載「」を書籍化したもので、同サイトには

 

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。

 

とある。心の中にドロドロと溜まった澱を愚痴として吐き出す、それをテーマにしたこの連載は、2016年7月時点も続いている。本はそこから選んだ15の愚痴をまとめているが、これがもうこじらせどころか、神様さえ呪いそうな勢いの報われなさを抱えた女性たちの叫びにあふれている。

 

たとえば悪いことが重なって離婚し、男性に対しての自信を無くしてしまった30代前半女性は、

 

「前の旦那は、離婚して、不倫相手やハタチの子と付き合っているのでしょう。私だけがすべて失った気持ちでいます」
「子供がいるから、友達には愚痴れません。前向きなシングルマザーでいなければならない、と思い、惨めな本音は言えません。誰かに話したいし、誰かの肩や胸で泣きたい」

 

と語り、引きこもりでニートだという20代前半女性は、

 

「外見ばかりじゃなく内面がそもそもダメなんです」
「誰の目にも触れず、そのまま消えてしまいたいです。私という存在を、なかったことにしてほしい。家族がどうとか友達がどうとか、もうそんなことすら煩わしいほど、私はこの世界からできるだけ早くいなくなりたいです」

 

と訴えている。

 

これ以外にも「おばさんとして生きていくことを受け入れられない」42歳の女性や、家事の95%はこなし、ルックスも保っていて夫を束縛せず、ハードな不妊治療にも耐えているのに、「夫に愛されていなくて、感謝もされない」30代後半の女性などが登場する。

 

彼女たちに共通するのは、「一生懸命努力してまじめに生きているのに、周りの理解が得られていない」ことだ。こういう場合、よくある人生相談だったら「努力の方向が間違っている」「相手に期待しすぎるのがよくない」「まずはあなたから変わってみよう」などの回答で強引に幕引きをするものだが、雨宮さんはそれを一切しない。

 

まずは相手に合わせて温かいor冷たい、甘いor甘くない、洋テイストor和テイストをカスタマイズしたお飲み物をスッと差し出し(バーチャルだけど)、それぞれの言葉や状況を肯定しながら、自身の思いを寄せている。あくまで愚痴を聞く場所であって、人生の問題を解決する場所ではないというスタンスを貫きつつも、突き放したり「前を向いて頑張ればいいことあるよ!」的な、根拠レスなポジティブシンキングに逃げたりしない。そして一緒に悩み、考え、時には自分自身の傷口も見せている。

 

たとえば「~するべし」「~であるべき」という自分の指針に基づき、自分で勝手に定めた「お役目」に忠実に生きることを誇りに思いながらも、実は疲れていて「早く終わってしまいたい」と愚痴る30代前半の女性に対して、雨宮さんは過去AVについて書いていた時の、「身に覚え」を告白している。

 

「私はAVのよさを広く伝えたいと思っていたし、それが自分の役目だと勝手に思っていました。誰に押し付ける気も、誇示する気もないつもりでいたけど、認めてほしいという気持ちがだだ漏れていたんでしょうね。うっとうしがられ、嫌われ、馬鹿にされました」

 

「生きているのがつらかったし虚しかったし、なぜ頑張っているのにこんな思いをするんだろう、と思ってしまいました。そして、誇りを踏みにじられたとき、私は誇りを捨てて敗走しました」

 

そこから相談者に真摯に向き合う雨宮さんの姿勢は、涙なくして読むことは到底できない。なぜなら誰もが自分の失敗を認めず、「あれはそうするしかなかった」「私は最善の手を尽くした」と言い訳をしがちなのに、雨宮さんは、正直に自分の敗走を認めて告白している。それができるからこそ、他人の愚痴を逃げずに受け止めることができているのだと気づかされるからだ。

 

また同書では20代後半女性の「誰からも誕生日を祝ってもらえない」という悩みも紹介している。一応家族がケーキを買ってくれたり、仲のいい友達からメールが届いたりはしたものの、相談者はほとんど1人で当日を過ごしていた。しかし彼女は同じ誕生日の知り合いのSNSにおめでとうメッセージが多数届いているのを見たり、別の友人がサプライズで盛大にお祝いをされるところに立ち会ってしまったりして、「自分は誰からも関心を持たれてないんじゃないか」と、悲しくなってしまったことを愚痴っている。

 

「子供じゃあるまいし、誕生日を祝ってとかバカじゃね?」と思うかもしれない。

 

しかし先日、大阪大学の松林哲也准教授などが、誕生日に自殺する人はそれ以外の日と比べて約5割多いという調査結果を発表している。それにSNSには日々、芸能人からその辺の誰かまで老若男女関係なく、仲間に盛大に祝ってもらっているバースデーパーティの画像が掲載され続けている。誕生日を祝ってもらえない相談者が「誰からも関心を持たれていないのでは」と疑念を抱くのも、無理のない話である。でもそれでもこの悩みは大人が口にした瞬間、周りからは「子供じゃあるまいし、バカじゃね?」と言われること請け合いだろう。

 

このような「誰にも分ってもらえない愚痴」を心おきなく語れるのは、自身の失敗を認め、それを隠さずに告白する雨宮さんのような相手なのだろう。今まさに傷ついている人もついていない人も、安心して手に取ってほしい。

 

文=玖保樹 鈴

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