迷走するクール・ビズ…「服育」途上国、日本の課題とは

ライフスタイル

 

「ビジネスマンの服装規定について、政府にどうこう言われる筋合いは無い!」と、クール・ビズスタート当初から、ずっと言い続けているのですが、先日の、「ネクタイを外して、上着は着用しなさいという。やはり日本人というのは、何か教科書的なルールに安心したり、言葉に踊らされるところがあって、実質的な意味を考えるところで弱いと感じますよね」という点には、まったくもって同感です。

 

学生手帳に「ズボンの裾は20cmとする」や「ワイシャツは白に限る」と書かれていたように、「クール・ビズ期間は、ネクタイ、ジャケットは着用しない」と規定されなきゃ会社にも行けない社会人を作り出してしまった日本の「服育」の失敗については、「食育」「英語教育」「ゆとり教育」の三大失敗教育に加えて担当省庁は猛省すべきと思うわけです。

 

 

■“お洒落偏差値”が低い、高偏差値の人々

 

そもそも日本人は服装について学校の授業で習うことなく大人になります。東大卒だろうが、誰もこれについて勉強した人はいません。だからして頭の中身は優秀でも外見は劣等生。オタクと呼ばれる高偏差値な人たちが「服を買いに行く服がない」と冗談めくのも何をか言わんや。むしろシャインズの「私の彼はアパレルの男」が「高校時代の卒業アルバム、頭はリーゼント」なほうが、ずっとお洒落偏差値は高いわけです。じゃ、誰に服装を教わるのか? そりゃ、親でしょ、兄弟でしょ、先輩・後輩・友達でしょ。

 

これまで取材させていただいた、お洒落外国人は皆口を揃えて「ファッションは親から教わった」といいます。男の子は父親から、正しいジャケットのサイジング、靴の磨き方、ネクタイの締め方、ツイードのジャケットにはシルクのネクタイを合わせないといったお洒落の法則を事細かに伝授されます。父親がお洒落に疎ければ、伯父さんや従兄弟、兄弟の場合もあれば、近所の先輩や友達と服装について悩み、語り、切磋琢磨して大人になります。学校教育だけが人間形成に必要な教育でないことは当たり前ですが、こと服装教育は成長過程で必須科目なのに誰も学ばないのは先進国として発展途上分野なのではないでしょうか。

 

たいていの男性が結婚式の打ち合わせで初めて、新郎の衣装はモーニングかテールコートか、挙式の時間で違えることを知ります。フォーマルウェアのルールについて、ペーパーテストで100点とれる大学生がどれだけいるでしょう。ジャケットのポケットにフラップが付いているのは外套の名残。室内用の上着にはフラップがなく、礼装に着用するジャケットはノーベントということを知っているでしょうか? ノーベル賞授賞式に、現地で借り物の衣装にぎこちなく袖を通す科学者と、自前の正礼装でやってくる外国人のお歴々とは、やはり隔世の感があるといわざるを得ないのです。

 

「欧米式の服装ルールを、日本にそのまま持ち込むな」という声もあります。たしかに高温多湿な日本の気候に、スーツにネクタイは通年服とは言い難い。しかし、ならば日本の文化と環境に相応しい洋装のルールは私達が作っていかなくてはなりません。和装には歴史と伝統に撚って培われてきたものがありますが、こと明治欧化政策は西洋の真似をすることばかりで、日本独自の服装文化を作ってきたとは言い難い。むしろ文化の形成に失敗している。いまからだって遅くはないはず。クール・ビズ、果たしてこれでいいのでしょうか? 一人ひとりが考えて、能動的に服を選び着ることで作り上げていくべきと思います。

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ファッションエディター・ライター

池田保行

神奈川県横浜市出身。ファッションエディター・ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリー。 2004年よりファッション エディター & ライター ユニット ZEROYON 04(ゼロヨン)を主催。 毎年1月と6月にイタリ...

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