ホンダの新しいF1パートナー「トロロッソ」とは何者か?

車・交通

 

F1世界選手権第14戦シンガポールGPの週末(あと2つで日本GPだ)、すなわち9月15日、ホンダは2015年のF1復帰以来継続してきたマクラーレンとのパートナーシップを、2017年シーズン限りで終了すると発表した。


両者の蜜月(だったかどうかは疑わしいが)はわずか3シーズンで終わりを告げることになる。本田技研工業の八郷隆弘社長は、「志半ばでマクラーレンと袂を分かつのは非常に残念」とコメントした。10月6日~8日に鈴鹿サーキットで行われる第16戦日本GPは、マクラーレン・ホンダとしての走りを見届ける残り少ないチャンスになる。


マクラーレンとの関係終了を発表した直後、ホンダはスクーデリア・トロロッソと2018年からのパワーユニット供給について合意したと発表した。来シーズンはトロロッソをワークスチームに位置づけ、シーズンを戦う。他のチームへの供給はなく、これまで同様に1チーム体制だ。一方、ホンダと縁を切ったマクラーレンはルノーと複数年契約を結んだと発表した。

 

 

 

■トロロッソ(伊語)=レッドブル(英語)

 


トロロッソは、サンマリノGPの舞台だったイモラ・サーキットに近い、イタリア・ファエンツァ(Faenza)に本拠を置くF1チームである。イタリア語のトロロッソ(Toro Rosso)は英語に訳せばレッドブル(Red Bull)だ。トロロッソは、イギリスに本拠を置くレッドブルの姉妹チームなのである。


マシンのサイドポンツーンにはエナジードリンクとしてあまりにも有名なRed Bullのスポンサーロゴが描かれているし、エンジンカウルにはレッドブル缶でおなじみの「雄牛」が跳躍している。本家レッドブルと違ってカラーリングが明るいブルーなのは、「レッドブル・シュガーフリー」をイメージしているからだという。

 

トロロッソはレッドブルの姉妹チーム。ボディにはおなじみの「雄牛」が描かれている


2006年のチーム創設以来、トロロッソの役割は、ドライバーを育成してレッドブルに送り込むことだ。レッドブルでドライバーズタイトルを4度獲得(2010年~13年)したセバスチャン・ベッテル(現フェラーリ)はトロロッソ出身。今季のレッドブルのラインアップを構成するダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペンも、トロロッソで腕を磨いた後にレッドブルに移籍している。


2009年までのトロロッソは、レッドブルのマシンと基本設計を共有する双子車と言っていい状態だった。2010年以降は自主開発の度合いを段階的に強くし、現在に至る。2017年はレッドブルと同じルノー製のパワーユニットを搭載するが、例えば2016年はフェラーリのパワーユニットを積んでいた。


2017年はレッドブルと同じルノー製のパワーユニットを搭載するが、ギヤボックスケーシング(内部機構はレッドブル製)を含め、車体設計はオリジナルだ。サスペンションの設計も異なり、空力も独自開発である。若手ドライバーを育成してレッドブルに送り込む役割に変わりはないが、マシンのパッケージはまるっきり異なる。ハードウェアでレッドブルを超えることだって起こりえないワケではない。

 

 

 

■片山右京、中野信治、佐藤琢磨とも縁がある!?

 


トロロッソは2006年に誕生したが、まったくの新規チームというわけではなく、前身はミナルディ(Minardi)というチームだった。 1985年にF1に初参戦したミナルディは典型的な小規模チームであり、予算も小規模であるがゆえに成績下位に定着していた。上位チームに比べればシートを得るためのハードルは低く、若手ドライバーがチャンスを求めて門を叩くことが多かった。


フェルナンド・アロンソもそのひとりである。アロンソは2001年にミナルディでF1デビューを果たすと、その後ルノーに移籍し、チャンピオンになった。1997年にはティレルを離れた片山右京が、ミナルディでF1ドライバーとして最後のシーズンを過ごした。1998年には中野信治がミナルディのステアリングを握った。元をたどれば、日本人に縁のあるチームである。


トロロッソになってからも、日本人ドライバーとの縁はあった。いや、なかったと言うべきか。所属チーム(スーパーアグリ)が消滅したためF1のシートを失った佐藤琢磨は、2009年シーズンを過ごすシートを得るべく、オーディションに参加し。だが選に漏れ、トロロッソ入りはならなかった。このときめでたくトロロッソ入りを果たしていたら、2017年に果たした佐藤のインディ500優勝はなかった(ので、良しとしよう)。


独自開発路線は規則の厳格化によって半ば強いられた格好だが、そのことによってファクトリーには最新の設備が導入されることになった。ミナルディ時代は下位の常連だったが、現在のトロロッソは中堅クラスの実力を備える。いまや常勝チームになったメルセデスAMGも、十数年前はできたてほやほやの(別の名称の)新興チームだった。レッドブルもまたしかりである。


F1で上位に浮上するカギを握るのは、チームの運営・経営が安定していること。加えて、実力のあるパワーユニットコンストラクターと手を組むことである。どちらが欠けても、うまくいかない。トロロッソとホンダの組み合わせは、上位に浮上するだけの化学反応を起こすだろうか。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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