欧米でも実は複雑!? 「謙遜するのは日本人だけ」という誤解

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先日、雑誌アエラに「」との記事が掲載されていました。他国では自分や家族を過大評価してアピールする傾向にあるところを、日本人がひたすら謙遜に徹したり、京都人を中心に「褒めながらけなす」という変化球を用いるさまが「ひねている」と見られる原因なのだそう。ひねるとはなかなか否定的な表現ですが、この記事以外でも「外国人には謙遜が通用しない」という所説を私も随分と耳にしてきました。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか?

 

よくあるのが、「海外で普通に謙遜したら、奇異な目で見られてしまった」という失敗談。能力があるにもかかわらず過剰に謙遜すると、「ネガティブな人物」、「自分に自信がない」、「セルフ・エスティーム(自尊心)に問題あり」とのレッテルを貼られ、周りの信用を失くすことにも繋がるので、その国の文化を知らずにうっかり自己卑下してしまうと厄介なことになりそうです。特にアメリカなどでは謙虚さが劣等感の表れと誤解され、時には軽侮の対象にすらなってしまうとのこと。様々なバックグラウンドの人間が集まる多民族国家で、「自分を売り込んでなんぼ」の社会では、なるほど謙遜は毒となることもあるのでしょう。

 

他方、私の住むオーストリアのウィーンでは、ある程度の遠慮や謙遜を嗜まないと、「出しゃばり」、「鼻持ちならない人物」として疎まれ、陰口を叩かれてしまうのが実情。実は私の義弟がアメリカ人とニュージーランド人のハーフなのですが、彼はウィーンに来た当初、不遜とも受け取れる自信満々な態度と発言を繰り返し、周囲のウィーンっ子たちを唖然とさせていました。また、ウィーンで働くオーストリア人の友人がアメリカ支社の社内ポジションに応募した際には、こちらの人事部から「アメリカ向けとしてはプッシュに欠ける。徹底的に盛った自己アピールを心掛けるように」との助言を受け、履歴書とカバーレターにも大幅に赤字を入れられる始末でした。

 

この他にも、スウェーデンやオランダには「自惚れは放屁のごとく臭い」という嫌悪感も露わな格言があるようですし、イギリスではジョージ王子誕生直後のインタビューで「息子は幸いなことに母親に似ている」と発言したウィリアム王子に対し、キャサリン妃が「いえいえ、そんなことはないと思います」と慎ましやかな返答をしていたのが印象的です。

 

同じヨーロッパ内でも、イタリアやスペインなどのラテン系カルチャーでは積極的な自慢話を聞く機会も少なくないので、また事情が異なる模様ですが、上記のような、概ね控えめな国民性の国が多い北ヨーロッパでは、ある程度の謙遜は重要な会話テクニックのひとつであるように見受けられます。もっとも、自分の家族を「愚妻・愚息」と称するなど、日本で聞かれるような過剰な謙遜はさすがに相手を困惑させてしまいますが……。

 

ということで、「外国では謙遜が通じない」わけでも「謙遜するのは日本人だけ」でもなく、「外国には謙遜が理解されない国もあるが、それを善とする国もある。ただし日本では過剰に謙遜する傾向がある」というのが凡そのところではないでしょうか。外国と言っても世界には200か国以上も存在しますし、欧米と一括りにするのはおろか、欧州内でさえも事情が微妙に違う国々がひしめき合っているので、一国を見て「外国では〇〇である」と早合点してしまうのは、今回のケースでは少々危険かも知れません。誤ったステレオタイプを盲信して振舞っていると、思わぬ陥穽に陥らないとも限りませんので、どうぞご注意くださいね!(ちなみに私は何度も落ちた人です…笑)

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ライジンガー 真樹

All About「オーストリア」ガイド、ダイアモンド社 地球の歩き方「ウィーン特派員」。 ウィーン移住をきっかけに、オーストリアの歴史・文化・グルメなどの魅力を日本の人々にも伝えたいと願い、CA乗務の傍ら旅行...

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