もし友達の“秘密の過去”を知ってしまったら…「忘れられる」ことが許されない時代に過去と付き合う方法

エンタメ

三浦ゆえ

(C)NTV

水曜ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)は、ワケありの過去を持つ主人公・菜美(綾瀬はるか)がひょんなことから主婦となり、街で起こるトラブルを解決していくストーリーです。citrusでは本ドラマの連動企画として、各放送回で取り上げる社会問題にまつわる記事を掲載。さまざまなジャンルに精通したcitrusオーサーが、ドラマをより深く楽しむためのヒントを提供していきます。

 

~『奥様は、取り扱い注意』連動企画 Vol.02~
友達の“秘密の過去”に、どう向き合うべきか

 

<第二話あらすじ>菜美は友達の優里(広末涼子)、京子(本田翼)と着付け教室に通うことに。そこで出会った主婦・夏希(高岡早紀)は、過去の経歴に関するトラブルを抱えていた…。実は夏希は元有名AV女優だったのです。

 

今回ご登場いただくcitrusオーサーは、「女性の性と生」をテーマに執筆活動を続けるフリー編集者・ライターの三浦ゆえさん。“秘密の過去”を持つ女性に、私たちはどう接すれば良いのか。ドラマのテーマにあわせながら、三浦さんが解説します。

 

***

 

■「過去」を詮索しない大人の友達付き合い

 

(C)NTV

幼なじみや学生時代からの友人は別として、大人になってからの友人については“過去”を知る機会がほとんどありません。本人が明かせば、ある程度分かります。ただ、友達付き合いをする理由はあくまで、その人の“いま”に親しみを感じるからであり、過去はさほど気にしない。そんな人も少なくないでしょう。

 

ドラマの主人公・菜美には、夫に打ち明けていない過去があります。その過去を捨て、「穏やかな生活」「あたたかい家庭」を夢見たからこそ、結婚したのです。11日放送の第二話、菜美ら3人は着付け教室で主婦・夏希と出会い、親しくなります。しかし、ある出来事を機に3人は「元有名AV女優」という彼女の過去を知ることになります。

 

 

■「元AV女優」の女性社員に向けられた好奇の視線

 

私が以前勤めていた職場にも、「元AV女優」がいました。入社後すぐ女性社員のあいだで、そのルックスのよさが話題となり、やがて男性社員から彼女の経歴が聞こえてきました。知ったそばから眉をひそめる女性が多かったと記憶しています。きっと、本人の知らないところでそれを暴き、他人に言いふらす行為が不快だったからでしょう。

 

彼女とは結局、言葉を交わさなかったので、その経歴を伏せたかったのか、もしくは知られてもまったくかまわないと思っていたのか、分からず仕舞いです。ただ、いま目の前にいるその人を無視して、過去の彼女、とりわけその性的な部分にだけ無遠慮な好奇の視線を向けるのはマナー違反だと感じました。

 

ほどなくして、彼女は部署ごと別社屋に移っていきました。人の噂も七十五日。毎日その話題で持ち切りだった人も、次第に彼女の存在すら忘れていきました。とはいえ、一度ネット上にAV女優としてその姿態が晒され、作品が流れてしまえば、完全に消し去るのはほぼ不可能。本人がAV女優としての自分を忘れてほしいといくら願っても、時代が「忘れられること」を許しません。恐ろしいことです。

 

 

■書き換え不可能な「過去」で差別する人たち

 

(C)NTV

もし親しい人にAV女優としての過去があると知ったとして、それまで“いま”の彼女に感じていた親しみは、その瞬間に消えてしまうのでしょうか。その活動によって罪を犯したわけでも、その過去で周囲の人や街全体に害を及ぼしたわけでもなく、ただ自分の意志で仕事をしていただけ。白い目が向けられるとすれば、そこには特定の職業に対する偏見、しかも過去に遡って向けられる偏見が見え隠れしています。社会にここまで深く根差した偏見を解消するのは、簡単ではありません。

 

「異質である」「知らない世界に属していた」というだけで人を排除する不寛容さ。それはいまの日本、いえ、世界のいたるところで見られます。性別や出自、属性、肌の色、国籍といった本人の意志や努力でどうにもできないことを理由に不当な扱いをするのが差別なら、“過去”も書き換え不可能であり、それをもって不当に扱うこともまた、差別です。

 

変えようのない過去にフォーカスするより、その人の“現在”、そして“未来”に目を向けたほうが、誰にとってもプラス。また、他人の“過去”を貶め、“いま”を尊重しない人は、自分がそうされても仕方ないと理解しておく必要もあります。“いま目の前にいるその人”を見る。偏見の解消は、そうすることでしか始まらないのです。

 

***

 

もしあなたの友達が「元AV女優だった」と自分に打ち明けたら、その友達と親しくなったきっかけを振り返りたいものです。本稿の内容と種類は違うものの、同じく、誰にも打ち明けていない“過去”を持つ菜美は、夏希をどう救うのでしょうか…。

 


日テレ水曜ドラマ

『奥様は、取り扱い注意』

毎週水曜22時~
<出演>
綾瀬はるか
広末涼子
本田翼
西島秀俊 ほか
<スタッフ>
原案・脚本:金城一紀
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:枝見洋子 松本明子(AXON)
演出:猪股隆一 ほか
製作著作:日本テレビ

HP:


ではSTORY機能を使った「放送前にフライング!取り扱い注意ストーリー」企画を実施中! 出演者や名シーン、ファッションなどドラマに関する情報を24時間限定で「フライング」してお届けします! ドラマの放送のない日も『奥様は、取り扱い注意』を楽しめる新しい企画です。こちらもお楽しみに!

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~...

三浦ゆえのプロフィール&記事一覧
ページトップ