手間ヒマかける?それとも忘れる?現代女性にとって“ポジティブ”な生理とは?

ライフスタイル

三浦ゆえ

 

20世紀は、日本人女性の“生理”に史上最大の変化が訪れた100年でした。国内初の使い捨て生理用ナプキンが発売されたのは1961年のこと。私たちが当然のように使っているナプキンは、母の世代・祖母の世代には当たり前ではなかったのです。その商品は生理にまつわるさまざまな不自由からの解放をもたらしました。

 

「生涯で経験する生理の回数」も大きく変化しました。明治時代、初潮を迎える年齢は14~15歳でした。早くに結婚・出産し、しかも複数の子どもを設けて、妊娠中・授乳中は生理がない……となると、生理は“たまに来るもの”だったといいます。それに対し、現在の平均初経年齢は12歳強。子どもの数も少ない現代女性は、明治時代とくらべてまさに桁違いの数の生理を経験することになります。

 

 

■アパレル企業・ベイクルーズの“女性特有の悩み”に対する新提案

 

となると、人生において生理について考える時間が占める割合も増えます。年間で何日間、生理にわずらわされ、どれだけの時間をロスしたか……という思いが、逆説的に「生理をポジティブに」というキャッチフレーズを生んだのかもしれません。100年前の女性からすると、人生でたまにしか経験しないものを「ポジティブに!」といわれてもピンとこないでしょう。

 

“ポジティブ”が指す状態は、非常に曖昧です。アパレル事業を展開するベイクルーズグループは現在、東京・青山に期間限定ショップ「」をオープンしています。コンセプトは“生理期のつらさやPMS(月経前症候群)など女性特有の悩みにもっとポジティブに向き合う”ことです。主力商品は布ナプキン。生理中、1週間後、2週目、3週目、それぞれの体調に合わせ、オーガニックコットン製、リネン製、シルク製のパッドを使い分けるという提案がなされています。

 

 

■布ナプキンはポジティブかネガティブか

 

ほかには使用後の布ナプキンを浸け置き洗いするためのホウロウバケツや石けん、生理中の心を穏やかにするアロマグッズやハーブティー、冷え対策ができるソックスやルームウェアなど幅広い品揃え。ここでいう“ポジティブな生理”とは、上質なものに囲まれることから始まるようです。実際に足を運ぶと、なまなましい生理現象をみじんも感じさせない洗練された空間に、ミニマルデザインのアイテムが並ぶ大人のショップといった風情でした。

 

布に経血を吸収させ、洗濯してそれを洗い流してくり返し使う布ナプキンは、市販の紙ナプキンでかぶれてしまう人にとってはポジティブな存在ですし、ゴミが出ないため、エコであることを何より重視する人たちにとっても同様です。しかし、洗うのは相当な手間です。忙しい現代人、そこに時間と労力を奪われることをネガティブと考えるか、それとも自分の経血を目で見て生理を実感できることこそポジティブと考えるか。

 

 

■自分に手間ひまかけて生理を実感するのは“ポジティブ”なの?

 

同店では紙ナプキンも販売されていますが、100%オーガニックコットンを使用し、吸収性ポリマーは不使用というもの。吸収された経血が閉じ込められることがないとなると、皮膚との接着面は常にじとっと湿っているでしょうし、漏れも気になります。根拠なく吸収性ポリマーを毛嫌いするナチュラル派にとってこの商品はポジティブでも、頻繁にトイレに行ける環境にない人にとってはネガティブです。

 

生理における「ポジティブ」の意味は、人によって違います。体質、ライフスタイル、職場環境などによっても左右されます。同店のコンセプトは、自然派でエコ、自分に手間ひまかけたい層にはマッチします。差し迫った必要性もないのにそれだけの時間を生理に割けるというのは、ある意味、贅沢なことです。それを“余裕のある暮らし”と感じる人もいそうです。けれどこれは、すべての女性に当てはまる考えではありません。

 

 

■「生理を忘れる」という選択肢もある

 

そもそも無理して生理をポジティブに転換しなくてもいいのでは? 生殖年齢にある女性にとって生理がある=健康の証ですが、身体への負担が大きいものでもあります。そこにあるネガティブな要素をなくすだけで十分……いえ、いっそ生理であることを忘れてもいいのです。

 

日本の生理用紙ナプキンは「付けていることを忘れる」を目指していますし、近年は“月経カップ”も注目されています。シリコン製のカップを膣内に挿入して経血を受け止めるもので、長時間にわたって交換不要です。生理痛があれば鎮痛剤、重いPMSや月経困難症があるならピルでコントロール。いま現在、子どもを希望していない人ならIUS(子宮内避妊システム)という選択肢もあるでしょう。忘れるどころか、生理そのものを止めるのです。

 

手間と時間をかけて生理を強く実感することこそすばらしいというのは、どこか生理を特別視、神聖視しているようにも見えます。その気分を盛り上げるために、すてきなアイテムが必要という人も一部にはいるのでしょう。しかし、現代女性はもっとフラットに生理と付き合えるはずですし、そのぐらいの距離感でいいと思うのです。

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三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~...

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