【今週の大人センテンス】みんなで身につけよう! ゆるゆるな蛭子イズム

人間関係

出典:「」公式サイトより

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第73回 失笑しながら希望が湧いてくる

 

「オレは、人の気持ちを考えて行動するのはバカバカしいと思っています。」by蛭子能収

 

【センテンスの生い立ち】

漫画家で、タレントとしても活躍中の蛭子能収さん。今年10月21日に70歳を迎えるが、マイペースなゆるゆるっぷりにますます磨きがかかっている。女性自身で好評連載中の「蛭子能収のゆるゆる人生相談」をまとめた単行本『笑われる勇気』(光文社)が、10月4日に発売。そこでも蛭子さんは108本の相談に対して、ほぼすべてに競艇の話をからめつつ、投げやりなようで鋭い真理が混じっているようにも読める回答をゆるゆると返している。

 

【3つの大人ポイント】

  • 淡々と堂々と筋金入りの「下から目線」を貫いている
  • 肩の力の抜き方や「わが道」の歩き方を教えてくれる
  • 読むうちに悩んでいることがバカバカしく思えてくる

 

今日も蛭子能収さんは、競艇に行くことを楽しみに、他人との比較や見栄や背伸びとはまったく無縁なまま、ゆるゆると生きてらっしゃいます。たぶん反省とも無縁です。何かとギスギスした世の中において、常にマイペースで生きているように見える蛭子さんの存在は一服の清涼剤と言ってもいいでしょう。

 

そんな蛭子さんが、蛭子イズムを思いっきり炸裂させているのが、雑誌「女性自身」(光文社)で連載している「蛭子能収のゆるゆる人生相談」。毎回、読者から寄せられるそれなりに深刻な悩みに対して、ある時は投げやりに、ある時は適当に、そして大好きな競艇の話と絡めながら、力の抜けた回答を返しています。

 

「女性自身」のwebページでバックナンバーを読むことができますが、たとえば10日2日に公開されたのは。先輩からは「他人に気を使いなさい」と説教され、親からは「人の気持ちを考えなさい」と言われているとか。「でも、空気を読むのは大変。どうしていいかわかりません」と悩む相談者に、蛭子さんはこう答えます。

 

オレは、人の気持ちを考えて行動するのはバカバカしいと思っています。相手の気持ちをくもうとする人は、少し考えすぎですよ。相手に気を使ってしたことが、その人にとっては迷惑なこともあると思うんです。そもそも人の気持ちは、他人にはわからないもの。あまり気を使ったり、人の気持ちを考えたりすることはムダですよ。

 

相手の気持ちを考えることを「バカバカしい」「ムダですよ」と言い切るのは、なかなかできることではありません。でも、たしかにその通り。バカバカしくてムダなことを無理にやろうとするから、悩みのループにはまり込んでしまうという一面もあります。「相手の気持ち」という自分ではどうしようもないものをどうにかしたいと思って、ジタバタもがき苦しんでいるケースも多いでしょう。

 

蛭子さんがさらに真価を発揮しているのが、仕事の場合は「ある程度の協調性は必要」と言っているくだり。テレビの仕事で空気を読むには「もっとも権力をもっている人、お金を持っている人だけを見て行動すれば間違いありません」と言い切っています。それも、たしかにその通り。ただ、蛭子さんが実際の仕事の場面で、協調性を発揮して上手に立ち回ってらっしゃるかどうかは、また別の話ですけど。

 

蛭子さんがこんな調子で答えている108本の人生相談を一冊にまとめたが、10月4日に発売されました。連載から生まれた2冊目の単行本です。語り下ろしエッセイの「『笑われる』心得」も、わが道を行く蛭子さんの本音がぎっしりで爽快にして痛快。「義理なんて、たんなる“気持ちの貸し借り”」「凝れば凝るほどカレーライスはまずくなる」など、とても大事なことを教えてもらっているような気にもなれます。

 

本の中から、蛭子イズムに満ちたフレーズをいくつか拾ってみましょう。

 

「人生ですか……、面倒くさい相談ですね。そもそも、人生がうまくいくものだと思っているのが間違いだと思いますよ」(苦難が続いて「人生って、うまくいかないですね」とこぼしている相談に対して)

 

「オレの女房が浮気しても、やってしまったことは仕方がない、という感じでしょうね。セックスしたとかしないとか、どうでもいいですよ」(妻が不倫をして、離婚しようと考えているという相談に対して)

 

「期待することも憧れることもなければ、失望することだってありません。他人は、自分に都合がいいかどうか。オレにとって尊敬できる人は、競艇で勝たせてくれる選手だけです」(憧れていた女性上司と、実際に一緒に仕事をしたら幻滅したという相談に対して)

 

もっともらしいことを偉そうに語るのは簡単ですが、蛭子さんのように、淡々と堂々と筋金入りの「下から目線」を貫くのは容易ではありません。たぶん本人はそんなつもりは毛頭ないでしょうけど、極めて崇高な心の持ち方であり大人力の高い処世術です。蛭子さんの行動や発言を見習うと困った事態を招きそうですけど、肩の力の抜き方や「わが道」の歩き方を大いに学ばせてもらいましょう。何らかの悩みを抱えている人は、読むうちに悩んでいることがバカバカしく思えてくるに違いありません。

 

そう、勝手にいろんな荷物を背負いがちな私たちに必要なのは、ふた言目には「どうでもいいですよ」で片付けてしまう蛭子イズムです。蛭子さんが多くの人にとっての「理想の大人像」となり、蛭子さんが“珍獣”としてではなく男性としてモテモテになる――。それこそが、日本の目指すべき方向ではないでしょうか。少なくとも蛭子イズムが広まれば、今よりも住みやすい世の中になるのは確実です。

 

 

【今週の大人の教訓】

わが道を歩き続ければ、やがて周囲が自分に合わせてくれる

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石原壮一郎

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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