過去最低の観客動員数だったF1日本GP。人気復活のカギはテレビにある!?

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鈴鹿サーキット(三重県)で開催されたF1日本グランプリ(10月6日~8日)の、決勝レース日の観客数は6万8000人だった。鈴鹿での日本GPの開催は今回で29回目を数えたが、観客数は昨年の7万2000人を下回り、過去最少を更新した。フリー走行が行われた金曜日と、予選が行われた土曜日を合わせた3日間の観客数は13万7000人で、これも前年の14万5000人を下回り、過去最少となった。


観客数のピークは2006年で(2007~08年は富士スピードウェイで開催されたため、この年が区切りの年だった)、決勝日に16万1000人、3日間で36万1000人を記録した。今年の3日間の観客数は、2006年の決勝日1日分にも満たない。鈴鹿にF1が戻って来た2009年以降は長期低落傾向にある。F1は“オワコン”なのだろうか。


「外せないイベントだから必ず行く」という熱心なファンに鈴鹿のF1は支えられてきた。どんなイベントでも、「次はもういいかな」と脱落していく人がいる。その一方で、「おもしろそうだから行ってみよう」という新しいファンが出てくる。鈴鹿のF1の場合、新規のファンを脱落するファンが大幅に上回っているのだろう。だから、長期低落傾向に歯止めがかかっていない。

 

鈴鹿のF1の観客動員数は2006年をピークに下がり続けている。2015年のホンダ復活も新規ファンの獲得には奏功しなかった


2015年にはホンダが復活した。1988年から92年までコンビを組んで好成績を残したマクラーレンとのコンビ復活で、活躍の期待がかかった。だが、ふたを開けてみれば活躍を期待できる状況ではなく、3年続けて入賞(10位以内)すらできていない。ホンダF1プロジェクト総責任者の長谷川祐介氏は、観客数減少の一因はホンダにもあることを認め、「ちゃんと勝利が狙えるようなポジションに入れば、お客さんの入りも違うだろうし、熱狂度はまったく違ったでしょう」と語った。


そのうえで、次のように付け加えた。


「やっぱり鈴鹿はすごいですね。ホンダの活躍にかかわらずこれだけのお客様が朝も夜もサーキットに駆けつけていただいて、熱狂的に応援していただいた。感謝です。素晴らしいです。チェイス・キャリーも言っていたそうです。スズカはスペシャルだと」


チェイス・キャリーとは、F1の商業面を統括する会社の新しいボスだ。観客数が減ったとはいえ、鈴鹿を訪れるファンの熱狂度は少しも変わっていない。第三者的に観察すれば、コース上で繰り広げられる走行セッションを見るのも楽しいが、それぞれのスタイルで鈴鹿のF1を楽しんでいるファンの姿を見るのも楽しい。

 

 

■全世界的にF1の人気は低迷しているのか?

 

F1の人気低迷は日本だけではない。目下活躍中のメルセデス・ベンツの母国、ドイツでも人気低落傾向にある

F1の観客数は世界的に減少傾向にある。1999年から始まったマレーシアGPは、2017年の開催をもって終了した。日本では1987年の初開催後に人気に火がつき、その人気が長期間持続して、低落傾向に至っている。マレーシアの場合は、ついにファンが定着することはなかった。2輪の世界選手権であるMotoGPは人気だというから、F1はまだ早いのかもしれない。


近年はメルセデス・ベンツが大活躍しているというのに、ドイツでもF1の人気は低落傾向だ。そもそも今年は、ドイツGPが開催カレンダーから落ちている。2016年はホッケンハイムで開催されたが、決勝レース日の観客数は5万7000人で、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権。日本のSUPER GTに相当)戦の観客数より少なかったという。


2018年はホッケンハイムでドイツGPが復活するが、ひょんな理由から前売りチケットのセールスが好調だという。隣国オランダ出身のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の活躍だ。オランダではF1が開催されないため、熱心なファンがドイツGPの前売りチケットを買いあさっているのだ(同時に、オランダGP開催の機運も高まっている)。

 

表彰式後のインタビュアーはインディ500ウィナーの佐藤琢磨。いまひとつ活気のない鈴鹿サーキットにおいて、抜群の存在感を放っていた


華のある、自国出身のドライバーがいるかいないかも、集客に大きく影響を与えるだろう。今回の日本GPでは、表彰式後のドライバーへのインタビュアーを元F1ドライバーの、というよりインディ500ウィナーの佐藤琢磨が務めた。そのときの存在感は、主役であるはずのF1ドライバーを食う勢いだった。琢磨はトークショーに参加したり、ホンダが1960年代に走らせたF1マシン(RA300)をデモ走行させたり、チェッカードフラッグを振ったりと大車輪の活躍だった。


ウイリアムズの40周年を記念して、往年の名車のデモ走行が行われたが、そのうち1台を1996年にウイリアムズでチャンピオンになったデイモン・ヒルが運転した。決勝前夜には、ホームストレートとピットレーンがファンに開放された。決勝レースの翌日には、ファンミーティングが開催され、トークショーには琢磨とヒルが参加した。鈴鹿サーキットはあの手この手の集客作戦を仕掛けている。


新規ファンを増やす手段として不足していると感じるのは、やはり、地上波による無料テレビ中継がないことだろうか。画面の中だろうと何だろうと、「動いている」F1に触れるきっかけがないことには、新しいファンは出てこない。
 

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世良耕太

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全...

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