大学の授業を欠席してでも企業の内定式に参加すべき“本当”の理由とは?

ビジネス

小寺 良二

 

■大学にとっては大迷惑!? 平日開催の企業の内定式

 

毎年企業の採用活動と学生の就職活動の1つの節目となるのが、10月1日に行われる「内定式」である。街でリクルートスーツを着てやや緊張した表情の学生達を数多く見かけるのもこの時期である。特に近年は企業にとっては採用難が続いており、企業の採用担当者にとってもこの日に採用予定人数の内定者が揃うかどうかは毎年予測がつかない。

 

しかしこの「内定式」、実は毎年一部の大学関係者や学生からは非難の声が出ている。

 

最も多い声としては「なぜ授業を欠席してまで参加しなければいけないのか」ということ。これは企業側にも責任はあって、多くの企業は内定式を平日の日中に開催する。今年も10月1日は日曜日だったにも関わらず、多くの企業は翌日月曜日の10月2日に開催した。内定式にはその企業の経営者や役員が出席することも多く、会社の重役を休日出勤させられないという事情なのか、大体堂々と平日に開催する。当然授業日と重なる学生もいるが企業からは「参加必須」と言われるので、渋々授業を休んで参加している状況。

 

就職活動中も授業を休まざるを得ないことはあるが、会社説明会や選考は他にも候補日があり日程を調整することができるが、内定式だけは企業が勝手に定めた日に半強制的に参加させられる。内定式に参加しようとしまいと半年後に入社してその企業で働くことに変わりはない。学生は学業を犠牲にしてまで内定式に参加する必要は果たしてあるのだろうか?

 

 

■「内定式」に参加する最大の価値とは何か?

 

企業の採用コンサルティングをしている立場から言うと、採用活動を行う企業にとって「内定式」の役割は大きい。内定者同士の横のつながりを持ってもらい、会社の重役や先輩社員からも祝福され、自社に入社して働く「覚悟」を持ってもらう上で最も効果的な手段だからだ(実際に内定式に参加した後の内定辞退は少ない)。

 

では学生にとっては「内定式に参加する価値」はどれほどあるのだろうか?私個人の意見としては「授業を欠席してでも内定式には参加すべき」と考えている。その理由は学生生活を通じた最大の「締め切り効果」が得られるからだ。「締め切り効果」とは、何か物事に締め切りを意識せずに取り組むのと、明確に期限や締め切りを定めて取り組むのとでは、締め切りを定めた方がより効率的にかつ生産性も高まるというもの。

 

大学生活というのは人生の中でも最も「自由な時間」を与えられていると言っても過言ではない。しかも最低限やるべきことさえやっていれば、その時間を何に使おうが自由に決めることができる。しかし残念ながらその時間の価値に社会人になってから気づくという人も少なくない。実際に「大学時代にもっと勉強しておけばよかった!」「もっと遊んでおけばよかった」と嘆く社会人は多い。もしそんな「大学生活の価値」に大学時代のうちに気づける機会があるとすれば、それは大学の授業以上に出席する価値があるのではないだろうか。

 

 

■大学側も「内定式効果」をうまく利用すべき

 

なぜ内定式でそこまで「締め切り効果」が生まれるのかというと、内定式の1日で集中的に「社会人」を疑似体験するからだ。ほとんどの企業は内定式にリクルートスーツを着てくるように指示を受ける。就活の時に散々お世話になったスーツだが、当然普段の私服よりは着心地は良くない。「あっ、スーツを着て毎日過ごす(仕事をする)日々が半年後に来るんだ」と実感する。

 

また内定式では経営者や役員から祝福の言葉をもらう。多くの方々が言うのは「仕事で成果を出して、早く会社に貢献できる人材になってほしい」ということ。今、それぞれの学生がどんな学問を専攻していて、どんなサークルで活動しているのかなんて関係ない。半年後に求められるのは「仕事で成果を出して会社に貢献すること」だと改めて認識させられる。

 

そんな体験を通じて、学生が普段当たり前に感じていた好きな服を自由に来て、自分の興味のある分野を勉強し、好きな仲間たちと活動できる日々が実は貴重で、あと残り半年間(10月〜3月)しかないことを痛感する。

 

そんな「締め切り効果」をその後どう学生生活に生かすかは学生それぞれの自由だ。しかしこの効果は大学や指導する教員にとっても有難いはずだ。私も仕事で多くの大学や教授とお会いしているが「人生の中でここまで学問と向き合えるのは今しかないんだ!」ということを学生に本当の意味で伝え理解させられている大学や教授は多くない。

 

内定式に参加する(開催する)目的の1つを「大学生活の価値を再確認する」という点を共有できれば、企業と大学がお互いに理解、協力し合いながら内定式を開催できるようになるだろう。

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小寺 良二

若者の就職支援を専門とするキャリアインストラクター。アメリカの大学卒業後、アクセンチュア(株)を経て(株)リクルートに入社し企業の採用支援を経験した後に独立。官公庁や自治体、企業が実施する数多くの若者...

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