「コンビニアイス」がアイスクリーム専門店から売上を奪い続けるカラクリ

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川乃 もりや

「コンビニアイス」がアイスクリーム専門店から売上を奪い続けるカラクリ

 

サーティワンアイスの業績が厳しい要因のひとつに、コンビニエンスストアに需要を食われたことを挙げている。

 

しかし、この「コンビニ説」には少し違和感がある。

 

総合的には、コンビニの台頭による部分は大きいと筆者も考えるが、記事内で、

 

アイスクリームのメーカー別シェアは、「爽(そう)」や「モナ王」を販売するロッテ、「ジャイアントコーン」や「パピコ」を販売する江崎グリコなどが、上位を占めている。これらの商品がコンビニを経由して売れていることが、サーティワンアイスのシェアを奪っているようだ。

 

としているところに分析の物足りなさを感じる。

 

一般社団法人日本アイスクリーム協会のデータを見ると、アイスクリーム全体の販売は年々右肩上がりである。冷暖房の普及に伴い、生活環境で季節感を感じるシーンが減ってきている。そのため、1年中アイスクリームの需要が生まれている――ということは、読者の皆さんも感じているだろう。

 

アイスクリームは4つの種類に分かれている。

 

(一般社団法人日本アイスクリーム協会)

 

●アイスクリーム(乳固形分15.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上)
乳固形分と乳脂肪分が最も多く含まれており、ミルクの風味が豊かに感じられます。

 

●アイスミルク(乳固形分10.0%以上 うち乳脂肪分3.0%以上)
乳固形分と乳脂肪分はアイスクリームに比べて少ないですが、牛乳と同じくらいの乳成分を含んでいます。
植物油脂が使われることもあります。

 

●ラクトアイス(乳固形分3.0%以上)
乳固形分はさらに少なく、植物油脂が使われることもあります。

 

●氷菓(上記以外のもの)
乳固形分はほとんどありません。果汁などを凍らせたアイスキャンディーやかき氷などがあります。

 

ポイントはアイスクリームの種類別販売物量・金額だ。アイスクリームの項目とラクトアイスの項目に注目いただきたい。

 

(一般社団法人日本アイスクリーム協会)

 

ラクトアイスは横ばいなのに対し、アイスクリームは右肩上がり。これが意味するところは、本格派アイスの販売が増加しているということだ。

 

・爽(そう)……氷菓
・モナ王……ラクトアイス
・ジャイアントコーン……アイスクリーム
・パピコ……種別は商品によって氷菓、ラクトアイス、アイスミルクなど様々

 

と、前述の記事に挙げられているアイスが、必ずしもアイスの売上増加をけん引しているわけではないように思われる。

 

 

コンビニ経営をしていた筆者の経験上言わせてもらうが、今コンビニで売上が伸長しているアイスは、趣向を凝らしたデザートのようなアイスや、ハーゲンダッツを代表する高級系アイスである。

 

前者のデザート系アイスは、販売寿命が短いため、次々に繰り出される新商品のアイスに埋もれがちだが、どこでも見かけるアイスに飽きたユーザーが購入している。

 

後者の高級系アイスは、例えばハーゲンダッツののような新商品で、生産に支障をきたすほどの話題性を全面に推した販売戦略(?)にうまく乗っている。

 

新商品発売と同時に品切れは「なんだよ。もっと作っておけよ」といった意見とはよそに、コンビニにはある種の特典をもたらしてくれる。

 

SNSの台頭により、情報が広まるのは格段に早くなった。特に「食べ物・飲み物が美味しい」という情報はSNSであっという間に広まる。

 

品切れ後もお客さんはコンビニに来店するが、品切れを伝えてもそのまま帰るわけではない。多くの人は、コンビニに入ると何かしらの商品を買ってしまうのだ(もちろん全員がそうであるわけではないが)。

 

話題の商品は、その商品があるなしに限らず、コンビニに恩恵をもたらしてくれる。だから、コンビニは新商品を積極的に取り入れているのだ。

 

 

話が少しそれたが、アイスクリームに対する考え方は、過去とは大きく変わってきているように感じる。

 

1980年代後半以降、ハーゲンダッツやサーティワンなどのアイスクリーム専門店が拡大し、それによって、“ご褒美的なアイス”の需要が大きくなった。しかし、皮肉なもので、その需要の変化が、アイスクリーム専門店を苦しめていると分析している。

 

高級系アイスの需要が大きくなると、コンビニはそれらの商品を販売するようになる。お客さんは近くにあるコンビニで高級系アイスを購入し、満足する。したがって、わざわざアイスクリーム専門店へ足を運ばなくなる、といった具合だ。

 

コンビニは、アイスクリームだけに限らず、多くの専門店の商品を手軽に販売している。近年では、コンビニコーヒーがその代表格だろう。コンビニで売っているコーヒーは缶コーヒーが主流だった。そこからパックのコーヒーへと移行(参照:)。そして、本格的ドリップコーヒーへと変化。このような変化がアイスクリームでも起きているのではないだろうか。

 

今後、販売環境に変化が起きれば、コンビニでサーティワンのようにカウンターでアイスクリームの販売が始まるかもしれない。いや、すでにミニストップで販売していることを考えれば、需要の高まりはすぐそこに迫っているともいえるだろう。

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川乃 もりや

コンビニ本部社員からコンビニオーナーを経験。現在、コンビニ関係の記事を書いているコンビニライター&アドバイザー

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