世界最低レベルからどう脱却する? 日本女性の働き方は「マミートラック」から「時短エグゼ」に変われるか

ライフスタイル

 

■女性の経済参加が遅れている日本

 

毎年、国ごとの男女格差を測るジェンダーギャップ指数(GGGI)が、世界経済フォーラムによって発表されています。残念ながら、男女格差という点において日本は最低レベルです(2016年は144カ国中111位)。

 

分野別指数を見ると、「健康と寿命」や「教育」の分野ではスコアも高く、かなり平等(順位自体は高くないですが…)と言えますが、その一方で足を引っ張っているのは「経済活動への参加と機会」と「政治への関与」です。ひとつの推計方法に基づいたジェンダーギャップ指数で全てが測れるとまでは言いませんが、例えば経済分野において、管理職や専門職・技術職での女性の比率の低さやそこから派生する女性賃金の低さが大きな課題となっていることは事実として受け止めるべきでしょう。

 

また、日本も全く改善していないわけではないでしょうが、ランキング自体は10年前の80位(115カ国中)から114位と落としています。つまり、日本の進捗スピードが全然世界に追いついていないとも言えるでしょう。

 

 

■「何となく当たり前」が落とし穴に…?

 

私自身は女性ではないので自らの経験から発言することはできません。ただ、多様性のある働き方をいち早く日本でも推進し、成果を収めているP&Gで働いた33年間で、女性も含め多様な人たちが仕事を通じてそれぞれ最大限の能力を発揮できることは、本人にとっても組織にとっても重要であることを知りました。結局のところ性別は関係なく、能力と成果に応じて管理職や専門職を目指す人・ふさわしい人もいれば、そうでない人もいるというだけのことです。

 

「マミートラック」という言葉があります。元々は米国のフェリス・シュワルツ(NPOカタリスト初代代表)が、1989年にグローバル・マネジメント誌として知られる『The Harvard Business Review』のなかで、労働時間や労働量等に融通をきかせ、母親であることを優先させるコースとキャリアを優先させるコースを提案したことから始まります。女性の環境やキャリアへの考え方に応じて働きやすくしようとする善意の目的から生まれたものですが、同年に「The New York Times」では、

 

「母親であることを優先させるコース」に対してマミートラックをいう名称を使う、このような考え方は、育児を母親だけの責務と考え、結果的に女性が出世の希望がない低賃金の仕事についてしまうことを助長する

 

と批判し、論争を引き起こしました。

 

日本では2016年にNHKが『おはよう日本』で「“マミートラック” 働くママの落とし穴」と題して、マミートラックから抜け出せず、仕事へのやりがいを失っていく女性が多い現象を取り上げています。職種や目指しているキャリアによって課題への取り組み方も変わると考えますが、「働く母親=時短で働く=責任のある仕事が任せられない」というバイアス(無意識の偏見)が根深いことが一つの問題点ではないでしょうか? 日本のジェンダーギャップ指数での現状を考えた場合、制度だけでなく、バイアスから生まれた多くの「なんとなく当たり前」に疑問を投げかけることが必要かと考えます。

 

 

■女性のための転職サービス「時短エグゼ」

 

このような状況の中、時短でもキャリアを継続したい女性のための転職エージェント「時短エグゼ」なるものが登場し、話題になっています。サービスを提供するビースタイル社は、2002年に創業され、「しゅふJOB」を通じて主婦の派遣事業を行い、約5万人(2016年時点)の雇用を創出してきました。「時短エグゼ」は、年収500万以上の即戦力人材や専門的なスキルが必要な職種に特化しています。女性に特化する派遣・転職エージェントは他にもありますが、働く母親をターゲットしています。

 

評価できる点としては、現在時間的制約があるハイスキルの働く母親に向けて、能力を発揮するチャンスを生み出してくれることです。一方で、企業側が“単にコスト削減を目的として”時短勤務の即戦力人材を採用するのであれば、女性にとっては短期的なキャリアとなってしまい、マミートラックを繰り返してしまうリスクもあります。

 

今後、「時短エグゼ」のような就業形態は定着していくのでしょうか? 最終的に、働く女性が長期的な展望が持てて、かつ成長できるキャリア育成ができる環境を作っていけるかが、雇用側となる企業に問われることではないでしょうか。もちろん、バイアス抜きで。

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プロダクト・リサーチャー

四方宏明

1959年京都生まれ。神戸大学卒業後、1981年にP&Gに入社。以降、SK-II、パンパースなど、様々な消費財の商品開発に33年間携わる。2014年より、conconcomコンサルタント、WATER DESIGN顧問として、商品、サービス...

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