ただ乗っかるだけじゃダメ… 「ポケモンGO」を利用した町おこしの現実と可能性

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鈴木うるか

出典:「ポケストップGO」より

■もはや紙媒体で人は動かない

 

みなさんはポケモンGOを楽しんでいますか?私は普段全くゲームをやらない人間でしたが、このたびは見事にハマってしまいました。いい歳してスマホを握りしめてウロウロすることにはちょっと気恥ずかしさを感じますが、同じくスマホを持ってウロウロしている人を見つけると、「ああ、同類が」とニヤニヤしてしまいます。はじめて近所の公園に行き、何十人ものポケモントレーナーに遭遇したときは、祭りさながらの高揚感を覚えました。

 

同時に、紙媒体でも仕事をしている自分にとっては、このポケモン現象は、紙媒体情報誌の「人を動かす力のなさ」を改めて痛感する出来事でもありました。紙媒体が終わっていることなどとっくの昔から知ってはいましたが、ポケモンGOの破壊力をこうもまざまざと見せつけられると、ぐうの音も出ません。

 

いまだにお店などに雑誌の取材を申し込むと、「人がたくさん来て捌ききれなくなると困る」という理由で掲載を断られることも多いのですが、正直、ポケモンGOに比べれば、絶望的なほど影響力はありません。以前取材させていただいたお店に後日足を運んで、「反響はありましたか?」と伺ってみたところ、「びっくりするほどなかった」と言われたこともありました。ですので、もし紙媒体の取材を申し込まれて、「反響が大き過ぎたらどうしよう」という点で悩んでいるとすれば、あまり心配しなくても大丈夫です(涙)。

 

 

■ただ乗っかるだけじゃ、集客や町おこしに効果なし!?

 

とはいえ、じゃあポケモンGOで集客だ!町おこしだ!というのもいささか安直だと思います。ご存知のとおり、ゲーム人気を集客に利用する企業や自治体が話題になっています。ポケモンGOの日本リリースと同時に提携サービスを開始した日本マクドナルドでは、2016年7月の既存店売上高が、前年同月比26.6%増を記録。大阪市旭区の千林商店街では、モンスターを一定時間大量に出現させる有料アイテム「ルアーモジュール」を使用して商店街をホットスポット化させ、賑わいを呼びました。鳥取県では、鳥取砂丘を「鳥取砂丘スナホ・ゲーム解放区」として売り出しはじめています。

 

しかし、上記のような、単にポケモンGO人気に乗っかっただけの集客方法は、果たしてどれほどの効果が見込め、いつまで持続するのでしょうか。じつはすでに、ポケモノミクスによる集客効果はあまり見込めないとする調査結果も出ています。

 

顧客傾向分析サービス「ウォークインサイト」を運営するモバイルAブリッジが行ったによると、ポケストップ(アイテムがもらえるスポット)になっている都内のある店舗では、ポケモンGOのリリース前後を比較すると、これまで店の前を通ったことがない通行者が70%増えたにもかかわらず、入店者はむしろ減少(-2.2%)したといいます。

 

この店舗は、ポケモンGOに関連するキャンペーンを実施していなかったこともあり、集客に大きな効果は認められなかったのです。この例に限らず、今恩恵を受けている店舗や地域でも、リピーターを作る魅力や工夫がないと、ゲームが飽きられるとともに、早々にポケモノミクス効果もなくなってしまうのではないかと思われます。

 

 

■じゃあ、ご当地ポケモンはどうだろう?

 

やはり、集客や町おこしのためには、「そこにしかないものがある」ことが必須。ならば、「ご当地ポケモン」なんてどう? と考えたのが滋賀県大津市です。ポケモンGOには、コイキングという雑魚モンスターがいるのですが(ものすごくたくさん集めると、ギャラドスというレアモンスターに進化する)、大津市は、これに引っ掛けて、「」を開発することを株式会社ポケモンに打診しているというのです。記事によれば実現は未定だそうですが、私はこれを読んで、ニヤリとしました。

 

というのも、2000年代になってから、琵琶湖に生息する鯉の中には、中国から伝来したとされる日本の鯉とは異なる遺伝子を持つ、古来種がいることがわかったのです。しかも、知人のライターから聞いた話によると、この古来種の鯉は、「鯛よりもうまい!」のだそう。大津市がこのことをPRしようとしているのだとしたら、面白い話ではありませんか。「ビワコイキング(仮)」だけでなく、遠野で河童とか、沖縄でキジムナーとかに遭遇できたら、テンションも上がりますよね。

 

現在のポケモンGOでは、水辺には水に関わりのあるモンスターが、公園には草タイプのモンスターが出やすいなど、出現地域にざっくりとした棲みわけがあると言われていますが、その土地柄や歴史を考慮してポケモンを出現させているわけではなさそうです。むしろ、なんだかものすごいやつが出そうな自然豊かな田舎ほど、ポケモンの出現率・ポケストップが少なく、逆に都市部にはポケモンが出すぎてパニックになるような場所もあり、アンバランスさ・格差がある状況です。これでは都市部以外のプレイヤーが離脱してしまうとネット上では再三指摘されていますが、こうした「格差」が、「ご当地ポケモン」や地域性の導入で補正されれば、離脱者も減り、街歩きや旅の楽しみも増える。地域にとってもゲーム運営者にとっても好都合ではないでしょうか。

 

 

■周遊性があれば、なお地域おこしによい?

 

ただし、仮にご当地性を導入したとしても、ゲームに周遊性がないのがポケモンGOと町おこしを結びつけづらい点かもしれません。ポケモンGOでは、現地まで行かないとポケストップやジム(モンスターを戦わせる場所)にアクセスできないし、ポケモンの卵は、一定の距離を歩くという条件で孵化します。「歩く」ことに重点を置いたルールを採用してはいるのですが、現状のルールだと、街を周遊する必然性がないのです。

 

その点、街を周遊してもらい、街の魅力を知ってもらうきっかけになるという意味では、ポケモンGOと同じナイアンティック社が開発した、「Ingress(イングレス)」のほうが向いていると言えます。ご存知の方も多いかもしれませんが、イングレスは、ポケモンGOの前身とも言えるAR(拡張現実)&位置情報ゲームで、現実世界をフィールドに、2つの勢力に別れて「ポータル」を取り合ってチームの陣地を広げる、いわゆる陣取りゲームです。ポータルは、実際に存在する建物やモニュメントで、実際に現地に足を運ばなければ、ポータルを自分の勢力に入れることはできません(このポータルが、ポケモンGOではポケストップに転用されているそうです)。

 

このゲームをいちはやく観光振興に利用したのが岩手県と神奈川県横須賀市です。とくに横須賀市は、観光地やゆかりの偉人に絡めた手の込んだイングレス用の街歩きモデルルートを作成しており、2000人規模のイベントも成功させています。この成功の理由は、イングレス人気だけでなく、日頃の横須賀市の観光振興にかける努力の成果も大きかったと思います。ゲームで集客・町おこしを考えるなら、ゲームの特性にとらわれるだけでなく、地域の魅力の掘り起こしとブラッシュアップも大切なのではないかと思いました。

今後、ポケモンGOワールドにも、イングレスのような地域性&周遊性のあるコラボレーションが生まれることを期待したいです。

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鈴木うるか

ライター&編集者。東京工芸大学芸術学部写真学科卒。出版社に勤務後、フリーに。ウェブや雑誌で旅や街のことを中心に執筆。月刊『散歩の達人』(交通新聞社刊)で、「ゲストハウスに泊まろう!」を連載中。カメ...

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