もてぎでSUPER GTとDTMが共演。日独レーシングカーの交流戦は実現するのか?

車・交通

 

SUPER GT第8戦もてぎの決勝レースは11月12日、ツインリンクもてぎで行われた。メインイベントはもちろん、最終戦に位置づけられたSUPER GTの決勝レースである。SUPER GTはGT500とGT300の2つのクラスに属する45台(!)の車両が混走するが、どちらも、年間チャンピオン決定戦となった(GT500はKeePer TOM’s LC500が、GT300はグッドスマイル 初音ミク AMGがタイトルを獲得)。


このほかに歴史的なイベントもあった。DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の車両が、GT500クラスの車両と一緒にデモンストレーション走行を行ったのだ。DTM側はMercedes-AMG C63 DTM、Audi RS 5 DTM、BMW M4 DTMの3台。SUPER GT側はNISSAN GT-R NISMO GT500、LEXUS LC500、Honda NSX-GTの3台だ。


それにどんな意味がある? と疑問に思うかもしれないが、ドイツのDTMと日本のSUPER GTはかねてから「クラス1(Class One)」と呼ぶ交流戦の実現を目指して協議を続けているのである。ドイツ勢と日本勢でガチンコ勝負をし、ナンバーワンを決めようというわけだ。


その交流戦に向けた第一歩が、ツインリンクもてぎで行われたDTM&SUPER GTのデモランである。実は、10月中旬、SUPER GTの2台(NSX-GTを除く)はDTM最終戦ホッケンハイムに出向き、ひと足先にデモランを実施。今回のデモランはそのお返しの位置づけだった。


もてぎのデモランに向けては、DTMを統括するITRのチェアマン、ゲルハルト・ベルガー(フェラーリ、マクラーレン・ホンダ、ベネトンなどで活躍した元F1ドライバーのベルガーである)が来日し、記者会見を行った。


「(マクラーレン・)ホンダ時代に日本人のエンジニアやメカニックと一緒に仕事した。だから、日本に戻ってこられてうれしい」と挨拶したベルガーは、次のように交流戦に向けたプランを語った。


「最終戦ホッケンハイムでは、ヨーロッパのファンにSUPER GTを紹介する試みを行い、非常に大きな成果を挙げた。今回はSUPER GTにご招待いただき、日本のファンにDTMを紹介した。日本のプレミアムブランドがドイツのプレミアムブランドと競うことは、両者の将来に向けて非常に重要な取り組みだ。ヨーロッパと日本がそれぞれ膨大な予算を使うことなく、交流戦を実現したい。それが最終目標だ」


段階的にではあるが、DTMとSUPER GTが交流戦を行うための準備は進んでいる。2014年にSUPER GT GT500クラスが規則を一新し、DTMと共通の技術規定を取り入れたのもその一環だ。少なくとも、車体骨格とパワートレーンのレイアウトは日独で共通になった(特例でミッドシップレイアウトを選択したNSX-GTだけ例外)。

 

DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の車両が、GT500クラスの車両と共演。日独交流戦に向けたデモンストレーションだ


ただし、交流戦の実現に向けた課題はある。GT500は2.0L・直4ターボエンジンを搭載するのに対し、DTMは4.0L・V8自然吸気エンジンを搭載する。500馬力+αを発生するDTMに対し、GT500は600馬力超を発生していると思われ、エンジンの出力面からいって、勝負にならない。


GT500はブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップ、ミシュランの4タイヤメーカーが参入し、熾烈なタイヤ開発競争を繰り広げている。一方、DTMはハンコックのワンメイクだ。SUPER GTはふたりのドライバーが交代して長い距離を走るのに対し、DTMはひとりのドライバーが短い距離を運転する。どっちがどっちに合わせるのか。交流戦の実現に向けたすりあわせが欠かせない。


エンジンに関しては解決の目処が立っている。 DTM側がGT500に合わせる格好で、2019年から2.0L・直4ターボに切り替えることが決まっている。この件に関しては、昨年までアウディのモータースポーツ活動を率いていたW・ウルリッヒが次のようにコメントした。


「政治的、財政的な理由で実現しなかったが、4気筒ターボエンジンの開発は数年間から着手している。私は今でも、SUPER GTと同じタイミングで導入すべきだと思っている。だが、それはもう終わった話だ。(2.0Lの)4気筒ターボは、我々がロードカーで取り組んでいるダウンサイジングのコンセプトと結びついているので、導入に賛成だ。開発を強力にプッシュしている。交流戦を行う際は、タイヤはワンメイクにするべきだろうね。タイヤ開発競争を行うと大金が必要になるから……」

 

L・デュバルはAudi RS 5 DTMをドライブ。DTMは2019年から2.0L・直4ターボに切り替える予定


もてぎのデモランでAudi RS 5 DTMをドライブしたL・デュバルは、交流戦は「夢」だと語る。


「世界で名が知られたドイツと日本の自動車メーカーが一緒にレースすることになれば、こんなに素晴らしいことはない。(2010年にホンダでGT500のタイトルを獲得しているが)アウディのドライバーとして日本に戻ってこられるのがベスト。夢の実現を願っているよ」


ウルリッヒは「DTMとSUPER GTは親密な関係にあるから、私は楽観的」と付け加えた。日独レーシングカーの共演は大迫力であることを、デモランはファンに示した。道は平坦ではないだろうが、近い将来の交流戦の実現に期待したい。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全...

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