Braun、そしてAppleの風化しないデザイン…両者の関係は単なるコピーではない

ライフスタイル

出典:動画「」より

■Appleデザインの源流としてのBraunデザイン

 

ロンドンは、博物館・美術館が大変充実しています。テレンス・コンランが設立したロンドンのデザイン・ミュージアムはケンジントン地区に移転し、2016年にリニューアル・オープンしました。様々なカテゴリーのデザイン展示がされていますが、その中でも目を引くのが、家電~エレクトロニクス分野でのデザインに関する展示です。Braun、Sony、Appleがこのカテゴリーでのデザインにおける重要ブランドとして選ばれています。

 

デザイン・ミュージアム・ロンドン

 

私自身はデザイナーではありませんが、プロダクトをリサーチしていく上で、(カテゴリーによって差はありますが)デザインは顧客にとってブランドの価値を決める重要な要因となります。デザインがブランド価値に貢献した模範となるのが、現在世界で最も高い企業価値を誇るAppleです。Appleのデザインを理解する上で、その源流とも言えるデザイン・フィロソフィーを作り上げたのは、ドイツのBraunです。例えば、にある50年代末から70年代までのBraunとAppleのデザイン比較を見れば、その相似性に驚きます。

 

 

■ディーター・ラムスが作り上げたBraunのデザイン・フィロソフィー

 

Braunデザインの基盤を作り上げたのが、1955年にBraun社に入社し、1961年から1995年までBraunのCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)として500以上の製品に関わってきたディーター・ラムスです。彼は「より少なく、しかしより良く(Less But Better)」という信条をもとに、10ヶ条からなるGOOD DESIGNであるためのデザイン・フィロソフィーを提唱しました。

 

  • 革新的である(is innovative)
  • 製品を便利にする(makes a product useful)
  • 美しい(is aesthetic)
  • 製品を分かりやすくする(makes a product understandable)
  • 慎み深い(is unobtrusive)
  • 正直だ(is honest)
  • 恒久的だ(is long-lasting)
  • 首尾一貫している(is thorough down to the last detail)
  • 環境に配慮する(is environmentally friendly)
  • 可能な限りデザインをしない(is as little design as possible)

(Wikipediaより引用)

 

デザインに絶対的正解はないと考えますが、Braun、そしてAppleの風化しないデザインを生み出した源は、ラムスの原則にあると言えるでしょう。2009年に府中博物館で「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代 ー機能主義デザイン再考」 というタイトルで、ディーター・ラムス展が開催されました。この時のインタビューで、ラムスはAppleのCDO、ジョナサン・アイブを評価しており、こう答えています。

 

「アップルのデザインは私のデザインのコピーなどではなく、私の過去の仕事に敬意を表してくれていると思っている」

 

「ドイツの巨匠 ディーター・ラムスに学ぶ、真のデザイン」より

 

■Braunの歴史を紐解く博物館「BraunSammlung」

 

ここでBraun社の歴史を紐解いてみましょう。

 

Braunは、1921年にマックス・ブラウンによってフランクフルトの近くクロンベルクに設立されました。現在は電動シェーバーが代表的な製品となりますが、ラジオの部品から始まり、ラジオ本体、そして50年代にはオーディオ分野へと発展して行きました。ラジオが出発点という意味ではSonyに近いです。

 

また、50年代には現在のBraun事業の核となる電動シェーバーの生産販売が始まりました。1967年に、剃刀で知られるGillette社が出資を始め、1984年にはGillette社の完全子会社となりました。Gillette社としては、髭剃り市場がウェットシェービング(剃刀)、ドライシェービング(電動シェーバー)のどちらに行っても成長できる両面構えの戦略です。2005年にはP&G社がGillette社を買収したことで、Braun社はP&Gの子会社となり、現在に至っています。また、シェーバー関連以外の製品に関しては、De'Longhi社などが販売しています。

 

私はP&Gにいた時代に、仕事でクロンベルクのBraun社を訪れたことがあります。Braun社には「BraunSammlung(Braun Collection)」と呼ばれるBraunの歴代の商品展示がされたBraun博物館があります。90年以上の歴史を振り返る約300点の展示がされています。もともとBraunのデザインに憧れていた私としては、特にラムス時代のBraunデザインは見る価値がありました。フランクフルトまで来られた方には是非、この博物館まで足を延ばすことをお勧めします。

 

(火~日:11時~17時)

 

■電動シェーバーのシェア争い

 

電動シェーバーの金額シェアは、日本ではPanasonicがトップで、Braun、Philipsと続きますが、世界市場では、Philipsが1位、Braunは2位となります。BraunとPanasonicは往復式(Foil)、Philipsは回転式(Rotary)の電気シェーバーを主力とし、往復式ではBraunは世界トップとなります。2016年に京都芸術劇場で行われた日独デザインシンポジウム「デザイン、何処にか行き給う―ディーター・ラムス、日本のデザイナーや学生と語る」で、ラムス氏の講演を聴く機会がありました。彼の発言から、現在のBraunは彼が作り上げたデザイン・フィロソフィーが十分活かしきれていないとの思いが読み取れました。

 

電動シェーバーとしてBraunは性能的には評価が高いブランドですが、ディーター・ラムスのデザイン・フィロソフィーを重要な資産として活用していく事で、Braunのブランド価値はさらに上がる可能性があると私見ながら考えます。個人的には、ウェットシェーバー(剃刀)派なので、Braunデザインのパワー剃刀ホルダーなんてあれば、是非欲しいです。

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プロダクト・リサーチャー

四方宏明

1959年京都生まれ。神戸大学卒業後、1981年にP&Gに入社。以降、SK-II、パンパースなど、様々な消費財の商品開発に33年間携わる。2014年より、conconcomコンサルタント、WATER DESIGN顧問として、商品、サービス...

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